第473話 18枚目:攻略準備

 カバーさんに相談した所、何故か壁系魔法のお札を量産する事になった。何でだろう。いや、私の威力基準のお札だから、そりゃまぁ、使い道は色々あるだろうけどさ。

 【符術】のレベルが上がったからか、それとも器用関係のステータスの影響なのか、ちょっとした山が出来るまでお札を作ってログアウト。土曜日は出来るだけログイン時間を後半に持ってきた方がいいって事で、いつもより遅い午前10時がログインのスタートだ。

 まぁもちろんその間もエルルとサーニャは動けるから、なんかあった時の対応は問題なくできるんだろうけど。まぁ仕方ない。のんびり朝寝して寝過ごさないように気を付けよう。


「うーん……見事に苦戦というか、捜索が進んでないな……」


 と、思ってどうにか平日より1時間遅い時間に起きていつものように動き、フリアドの外部掲示板を巡って情報を集めていく。もちろん誰でも見れる場所って事で、ある程度出てくる情報は制限されているだろうけど。

 あの中心壁の内部にあった建造物らしき影が、それぞれ独立した塔型のダンジョンになってるらしいっていうのは確定みたいだ。ただし出てくるモンスターがモンスターだし、仕掛けもそれに準じるしで探索は難航しているらしい。

 しかも1ヵ所外から崩壊させてみたら、モンスターの群れになった上で別の場所にすぐ新しい建造物が出現したらしい。真面目に攻略しろって事だろう。


「当然だけど、あの虫下しはクレナイイトサンゴにしか効果が無い。つまり寄生って言う状態異常全般に効く訳じゃない。……魔法にも対寄生の効果がある奴は無かった筈だし、本当に面倒だな……」


 ちなみに、寄生に対してはあの百頭魚の鱗も効果を発揮できないらしい。やっぱり寄生っていうのは、状態異常って言うより特殊な攻撃って言った方が正しいんだろう。

 ……攻撃者が体内にいるんだから、外から幾ら治したところですぐに状態異常が掛け直される、っていうのもあるかも知れないけど。

 さてそうこうしている内に時間だ。外部掲示板で見る状況はあんまり良くなかったけど、実際はどうなってるんだろうね? てな訳で、ログイン。


「…………うーん実に慌ただしい」


 イベントも佳境なんだから仕方ないのかもしれないが、小部屋から出て階を下りて見ると、お頭とジョニーとゆかいな仲間たちや球体関節のドールが忙しなく行きかっていた。中部屋は生産拠点になっているので、そこへ素材を持ち込んだり、完成品を持って出たりと忙しいのだろう。

 クランメンバー専用掲示板は小部屋で確認したが、そちらに新しい指示や情報が載っている事も無かった。なので、現状私はフリーという事になっている。

 ……まぁ、ログインしても誰からも連絡がこないって時点で何となく分かってたけどさ。「第一候補」に温存、って言われたのは確かだし。


「お札作りの続きでもしていましょうか……」


 カバーさんがログインしてくれば情報は入って来るだろう、と、ログアウト前にも居た中部屋へと移動する。『アウセラー・クローネ』の拠点として使わせてもらっているので、ルディル、ルフィル、ルフェルの生産組は此処にいる筈だ。


「あ、マスター。おはよぅ」

「「庭主さんおはようございますメェ~」」

「はい、おはようございます。……滅茶苦茶忙しいですか?」

「見ての通りだねぇ」

「箱にして積み上げたらこの領域と同じぐらい作ったと思うメェ」

「交代で休憩は取ってるけど正直全然追い付いてないメェ」


 思った通り3人はそこに居た、の、だが……うん。その、近くの壁に、注文票でいいんだろうか。こう、ファンタジーものでお約束の、冒険者ギルドの依頼表。あんな感じで、びっしり壁に紙が張り付けてある一角があった。

 ざっと見てみると、どれもこれも消耗品の名前が書かれている。数が書かれていないのは、恐らくこの紙1枚でいくつ分、というのが決まってるからだ。だって私のお札もそうだったからね。

 ……なので、当然ながら、その注文票(?)の中には、お札の名前も入っている訳でね。


「まぁ、とりあえず片っ端から片付けていきましょうか。3人とも、器用系と成功率系の支援バフ要ります?」

「そうだねぇ、出来れば今だけはお願いしたいかなぁ」

「「僕(私)達には速度もお願いするメェ」」

「ですよね。分かりました」


 なお、速度のステータスが上がると、戦闘なり生産なりで集中している間は周りが遅く感じるらしい。多分時間加速の倍率が、微妙に変わるんじゃない、かな? 知らないけど。

 そういう訳だから私も短時間で大量のお札を作れるようになったんだし。集中力と器用さの訓練になる上、割とスタミナも消費するみたいで各種スキルの伸びが良いんだよね。

 とりあえず、相変わらず山のように量が必要であるらしい、壁系魔法のお札を作成するのに取り掛かろうか。何か問題があったり出番が来たりしたら、エルルかサーニャが迎えに来るか、それこそカバーさんが知らせてくれるだろう。

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