第470話 18枚目:休憩終了
「俺らが移動する時に乗る動物? ……あぁ、まぁ、確かに言ったな。【人化】した状態で別の竜に乗った方が早い奴も居るって」
「でもそれ、かなり一部の話だよ? 【飛行】を持たない突然変異とか、あえて捨てて別の力を伸ばしたりとか。だって飛んだ方が早いじゃないか」
「他の種族の前に出る時は、まぁ確かに乗り物に乗る時もあるが……それだってどっちかっていうと姿を隠すのがメインだからなぁ。後は渡鯨族とか、手続き的な関係」
「あとは、暇を持て余した御隠居の趣味ぐらいかな? 怯えないように気配を限界まで抑えながら乗って庭を散歩する感じの」
という事らしいので、私が乗馬なりなんなりで動物に乗る機会は、まぁまず無いようだ。いやまぁ確かに、動物に乗るより自分で走るか飛んだ方が大抵の場合速いのは確かなんだけど。
いやー、ふれあい動物コーナーみたいなところを遠目で見かけて、結構距離ある筈なのにそこにいたもふもふ達が残らず可哀想なぐらい怯え始めたのはちょっと心にきたよね。ルシルはじめうちの子の有難みがよく分かったよ。ブラッシングの練習をした野生動物やモンスターは強引に捕まえてたし。
もちろん氷の大地にいたアザラシの群れのように、「第五候補」の魅了にがっつりかかってて危機感って奴が欠落してる状態だったり、精霊さんの力が全力で働いていて気配的に背景と同化してたら別なんだろうけど、私がやりたいのはそういうんじゃないんだよ……。
「……実益とモフみを兼ねて飼育チャレンジしてみましょうか……。確かチーズやヨーグルトの種類が少ないってソフィーナさんが言ってましたし……」
「また妙な事を言い始めたな。しかも割と本気で」
「確かどっちも、元の動物が違うと味が変わるんだっけ? 微妙に」
「相当ショックだったのね~。私達の世界では~、どっちもたくさん種類があるのよ~。元の動物以外にも、色々違いがあってね~」
なお、実際に出来るかどうかは別の問題だ。畜産関係のスキルは誰も持ってなかった筈だしな……。その辺に都合よく幻獣系の幼体が転がってる訳も無いし……。というか実際居たらまず親を探しに回るし……。
違う。そうじゃない。楽しいもふもふ追加計画じゃなくて。
「そう言えばネコだっけ? ボクらにも小さい時から慣らせば普通になつく小さい生き物」
「サーニャ、ちょっとその話詳しく」
「うん?」
猫なら大丈夫とか初耳なんだけど!? いや確かにあいつら子猫の時から一緒ならどんなでかい動物にも慣れる(個体差有)けどさ!!
話が見事に明後日の方向へ脱線していったが……猫についてはサーニャもエルルも「そんな話を聞いた事がある」という認識どまりだった……今は丸2ヶ月をかけたイベントの佳境であり、私も「第五候補」も隙間時間的に暇が出来ただけであって、忙しいには違いないのだ。
このイベントの後は北国の大陸で動く事になるだろうし、のんびり生き物を育ててる暇は無いよねってそういう話をしていてだな。いつになったら暇が出来るのか? さぁ。
「というか、このクランだったんですね。カバーさんに聞いた、馬に【浮遊】を覚えさせたっていうの……」
視界の端に「空中を走っていく馬」が見えた気がして振り返った先で、人を乗せた大人の馬が、数頭の仔馬を後ろに連れて、地上2mぐらいの高さを緩やかに走っていくのが見えたりもして。スキルって血筋に継承されるんだ……。なんて感想を抱いたりもしたが。
まぁゲームであり遊びが忙しいって言うのはつまり楽しいって事なんだけどね。特級戦力になった以上は特級戦力のお仕事を頑張るさ。
つまり。現在リアル時刻、金曜日夜。残りログイン時間が4時間を切ったぐらいのタイミングで、
[件名:イベントメール
本文:イベント条件が満たされたため、レイドボスが出現しました!
このレイドボスは非常に多くの配下を召喚します。
また非常に強大な魔力と多様な復帰手段を持っています。
プレイヤー全員で力を合わせて退治しましょう!
※レイドボスがイベント期間内に倒されなかった場合、
特殊イベントが発生します
※特殊イベントはプレイヤー全体で進行度が共有されます
※特殊イベントは時間経過によってステージが変化します
※特殊イベントのステージに対して進行度が著しく低い場合、
通常空間に甚大な影響が出る可能性があります]
辛うじて最後の土日に突入する前に、トリガーを引く事が出来たのだろう。「第五候補」も、周囲に居た人達も、皆が皆揃って画面を開いて目を通していたから、タイトル通りこれは、システムからの案内だ。
ただ、うん。一言だけ叫ばせてもらってもいいだろうか。大丈夫だ、いつものことだから。
「だから!! 最後!!!」
もういっそ「地形が大きく変わります」とか「最初の大陸がモンスターで溢れます」とか「現存する種族が何種類かは滅んでしまいます」ってはっきり書け!! どうせ倒しきれなきゃそれぐらいの被害は出るだろうが!!
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