第469話 18枚目:見学休憩
ところで今更だが、外縁部及び内側からのスタンピートが収まったまま起こっていない、という事は、管理する神が曖昧な領域が無くなった、という事だ。
っていう事はつまり、その境界線付近に存在していた冠付きアイテムの出現率も大幅に下がっているという事でもある。もちろん、特殊な捧げものも、ステータスに補正が入る食材アイテムも、だ。
で、それがどういう事かって言うと……まぁ、普通に、不満が噴出する訳だ。主に出遅れたというか、内側をメインにしていて、外縁部の探索にそこまで力を入れていなかった
「で、その矛先がさっさと外縁部に向かった『
「そうよね~。それに~、私達が外側に向かったのは~、大体あのえらいひとのせいだし~。そもそも~、こういうのは大体の場合、早い者勝ちって相場が決まってるわ~」
「むしろ発見した場所を、カバーさん経由で『アナンシの壺』に提供していましたよ。よほどグレーだったり素行が悪かったりしない限り、元『本の虫』メンバーのクラン員は居る筈ですし。居るなら情報は届いている筈です」
「まあ、今回の場合は~。そういうのをぜ~んぶ棚上げして~、第三陣の人達向けのアピール的に~、こっちを叩きに来てるみたいだけどね~」
一言で言ってバカなんだよな。『アナンシの壺』は情報の管理だけを行うクランだけど、その情報の信頼性は確かな物だ。まぁ検証班の成果発表場所なんだからそりゃそうなんだけど。『本の虫』という大看板を下ろしただけで、検証班自体は動き続けてるんだぞ。
そして検証班が動いてるって事は、当然ながらブラックリストも生きている。載せられればどうなるかっていうのは、まぁ、大体考え付く限りその通りだ。
……既にブラックリスト入りしていて、そのブラックリストの効果が薄い第三陣を取り込む狙いなのかも知れないけどな。自分で自分の首を絞めるのが趣味なんだろうか。それとも潜在的な自殺願望持ちなのか。
「ただ単に何も考えてないだけだと思うわよ~」
「ちょっとぐらい穿って見ないと、付き合わされるこっちまでバカみたいじゃないですか。ここまでの話全てが阿保らしいから分かってますけど」
「まぁね~。例のクランの回し者なら~、それはそれでもうちょっと上手い事するでしょうし~」
「唆されただけの煽り囃子って可能性はありますけどね。私達は『本の虫』と違って、完無視するって手段が使える分だけ効果は薄いですが」
ん? そんな会話をしている私達が一体何処に居て何をしてるのかって?
あぁまぁ確かに、イベントは佳境で本来なら忙しいんだけどさ。そういう騒ぎがあったり、中央部には既に十分な人手が入ってたり、特殊な「大神の悪夢」は第三陣の人達向けだったりで、何処へ向かっても微妙に邪魔になっちゃうんだよね。
かと言って、ボックス様の領域を経由すればすぐ戻って来れるとはいえ、ティフォン様を始め現在の外縁部に位置する神々の領域に挑戦するってなると、それはそれで何かあった時の対応に多少遅れが出る。
「……「大神の悪夢」は特殊空間ですから、もう一度ぐらい改めてヒラニヤークシャ(魚)を殴り飛ばしておきたかったんですけど」
「まぁまぁ~、これもお仕事よ~」
ってな訳で……「第五候補」と2人、スキルや神の加護をフル活用で高速育成されている、初心者向けの移動手段である乗用兼輓獣の、育成見学兼お手伝いに来ている。
そのスキル構成やステータスから「第五候補」は何となく分かると思うんだけど、何故私が居るかっていうとな。どうも、エルル及びサーニャとセットで、捕食者の気配に怯えないようにする為らしい。
……まぁ、ガチの竜族が近くに居ても普通に過ごせるぐらいの胆力があれば、少々のモンスター程度じゃパニックになって暴れるなんてことはないだろうけどさ。
「全部元は牛って聞きましたけど、大半が牧場の反対側まで逃げる中、距離こそ取ってるものの普通に草を食べてるあれ、なんなんでしょうね。突然変異か何かの血を混ぜたのか」
「見る限り、体格や骨格も十分だし~。どちらにせよ、有望には違いないわね~。……あら、あらあら~。これ見て「第三候補」~」
「? ……与えた餌の元素材に交配種族の系譜とか見せて大丈夫なん、って、思いっきり“細き目の神々”の領域産素材と種族を突っ込んでるじゃないですか。血の数割が竜ですよね、これ見る限り」
「そういう事よね~。その分、種として安定させるのが凄まじく難しいみたいだけど~」
「ほいほい増えたらバランスが大変な事になるでしょう……」
通りで他と比べても一際ゴツいと思ったよ。それでもって怯えない筈だ。竜馬ならぬ竜牛でも生み出したかったのか? 積載重量と踏破力とスタミナって意味だと最適解だろうけども。
ちなみに、別の場所ではその時捕獲してきたワイバーンの調教を頑張っているらしい。まぁ貴重な航空戦力だもんな。乗りこなすのに必要なステータスがあれだから、完全に上級者向けだろうけど。
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