第448話 18枚目:検証結果

 どのくらい視界を埋める光がどれくらい続いたのかは分からないが、体感的にはとても長く感じたその光が緩むなり、即座に私は祭壇を確認した。もちろん無くなっている可能性も十分に有るが、その可能性は敢えて考えずに視線を向ける。

 どうやら緩んでも光が消えたわけではないらしく、どういう事なのかその白い光は球状に固まって浮いているようだ。大きさは祭壇を丸ごと包めるぐらい。それが浮いているから、手を伸ばせば届きそうだ。

 普段なら、うーんファンタジー。と感心の1つもするところだが、今はそんな余裕はない。「月燐石のネックレス」はどうなった!?



 と、緊張を高める私の前で。

 その光は、ぽん! と、見慣れた白い立方体へと変化した。



「……ん?」


 どう見てもいつものボックス様の分体であるその姿に思わず思考が止まる。んん? と思っている間に、パンパカパーン! という音と共にぱかっと蓋が開いて、ぽん、とこちらに何かが飛んできた。

 慌ててキャッチしている間に、ぱちん、とボックス様の分体は消えてしまう。うん???

 いや、演出自体はいつものボックス様がご褒美をくれるのと一緒だったからいいんだけど。と、やや細長く角が取れた形の、柔らかい布で出来た箱を開けてみる。


「…………っはー、良かったぁ……」


 そしてそこに、花の数が増えて豪華になったネックレスが入っているのを見て、大きく息を吐きだした。いや、【鑑定☆☆】してないからもしかしたら名前が変わってたりするかもしれないけど、とりあえず「月燐石のネックレス」と同系統なのは間違いない。

 全く! 心臓に! 悪い!! 検証という意味では必要な事だと分かっているけど!! 本気で泣くところだったぞ!!


「第一陣の宿命だと分かってはいますが、それはそれとして本当に心臓に悪い……」


 はー。と再び大きく息を吐きだして、とりあえずさっさとデザインが豪華になったネックレスを身に着ける。流石にここまでそっくりで呪いの品なんてことは有り得ないだろうし。あー落ち着く。

 空になった箱もインベントリにしまったところで、ようやく【鑑定☆☆】してみると。


[アイテム:月燐石のネックレス・祝

装備:アクセサリ(状態異常耐性+++++・神の祝福ギフト強化+++)

耐久度:Gi

説明:月燐石で“神秘にして福音”の神の神花が描かれたネックレス

   身に着けた者を災いから守る力がある

   また身に着けた者の余剰魔力を蓄え、不足した時に供給する力がある

   信心と敬愛の証として贈られたもの

   大神にその信心が認められ、より大きな祝福を受けられるようになった]


 ところで最近分かるようになったことなんだが、【鑑定】結果に対して【鑑定】する事も出来るらしいんだ。つまりよく分からない付与効果も、ヘルプを探すより早く詳しい事が分かるって事だな。


[付与効果:神の祝福ギフト強化+++

説明:スキルに付与された効果が強化される

効果強度:+1つに付き20%]


 ちなみに「効果強度」っていうのは効果によって違うらしく、状態異常耐性だと+1個につき5%だそうだ。それでもこれ1つで25%も耐性が上がるんだから破格なんだけど。

 とりあえずしばらく考えて、祭壇が光って光の球体になってボックス様の分体が出て来てプレゼントくれて、そのプレゼントが乗せた神器の強化版だったっていう事は書き込んでおこう。多分ここまでは他の神様の神器でも同じだろうし。

 そしてそれを書き込んでから、「第一候補」にウィスパーを飛ばす。


『うむ。書き込みを確認した。協力感謝するである「第三候補」』

『かなり心臓には悪かったですけどね。ところで「第一候補」。「異空の箱庭」はどうなりました?』

『くはは、お見通しか。順当に内部の空間が広がったであるぞ。その強化のされ方もここまでの信仰度合いによるようであるからな。「第三候補」であれば相当な強化になったかと思うが、それこそどうであった?』

『既に試して結果が出たのであれば先に書き込んでおいて下さい。と、釘は刺しておくとして』


 そうウィスパーで告げてから、「月燐石のネックレス・祝」と「付与効果:神の祝福ギフト強化+++」の【鑑定☆☆】結果のスクリーンショットを「第一候補」へのメールへと添付して送る。

 ……そう言えば、私がどれだけの神の祝福ギフトを貰ってるのか、「第一候補」は知らないのか、そうか。そう言えば確認したその場にいた、エルルとカバーさん以外には話してないな。


『ふむ。我の方で賜った強化とは方向性が違うが、桁が違うのは確かであるな』

『……そうですね。これだけならその程度で済みますね』

『うむ? まぁ確かに「第三候補」がどれだけの祝福を受けているかは知らぬが、竜族の始祖と“神秘にして福音”の3柱は確実であろう。そして“神秘にして福音”の方はともかく、始祖の方はステータス強化スキルではないのか?』

『大体合ってますが致命的な所が違ってるんですよね』

『?』


 違うんだよな。

 ティフォン様とエキドナ様の分は、単なるステータス強化のスキルじゃなくって、ステータス「成長」強化スキルについてるんだよな。

 ボックス様のに至っては制御強化と見せかけた全体強化だし、組み合わせてある意味絶対防御にも使えるし。あと、“中立にして中庸”の神を介して連名で祝福をくれた神々の分が更にヤバい事になるんだよな……。


「……今回のこの強化が、装備品ごとや信仰値によって決まった、事前に用意していた強化なのか……それとも私の状態を見て、大神運営が個別に設定した強化なのかによって、私に対するスタンスが大きく変わりますよね、これ……。……いや、もしかしたら強化ポイントみたいなのが自動計算されて、それを割り振ったのはボックス様、とかも……?」


 思わずそうウィスパーの外に呟いちゃったが、仕方ないな?

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