第442話 18枚目:謁見終了

 しかしとりあえず聞いておかないとヤバい事は聞けたかな? とカバーさんを振り返る、が、流石に忙しそうだ。じゃあこの機会に何かあるかな、とエルルを振り返れば、こちらはこちらで完全に固まってしまっている。

 これは何か聞くどころじゃないなぁ……。とちょっと考えてみる。まだ神様にでも聞かないとどうするべきか見当もつかない、厄介な問題はあっただろうか。

 流石にメインで謁見してもらいながらメニューを確認するのもなぁ……と思って、そう言えば産廃じみた危険物があった事を思い出した。下手に捨てたりいじったら絶対厄介な事になる奴。


「もう1つ、教えて頂きたい事があるのですが宜しいでしょうか?」

〈なんなりと聞くが良い〉

「ありがとうございます。先ほど「異なる理」の影響を、本来の名が失われるまで受けた物なら破壊して良いと仰られましたが、その破壊した残骸はどうすれば良いでしょうか?」


 情報だけなら【鑑定】すれば済む話だけど、破壊すると残骸が出るよね。そう言えば今もインベントリにしまいっぱなしだったよ、「異なる理に汚染された石材」が。

 あぁ、という感じで軽く頷いて見せたティフォン様は、思ったよりあっさりとこう告げた。


〈敵の首と扱いは同じだ。俺達に捧げれば良い〉

「なるほど」

〈祭壇でも良いが、俺の場合はここから戻った後で火口に放り込んでも構わんぞ〉

「ありがとうございます」


 火口に放り込むのでいいんだ。確かに量があったから祭壇だと時間がかかりそうだな。とりあえず今持ってる分は全部放り込んでおくか。

 さてこれで私が気になった分は全部聞いたな。たぶん。恐らく。ここからの探索方針と今回のイベントの大目標、産廃の処理の仕方。とりあえず他には思いつかない。

 流石に素材の処理をどうこうって聞くのもな。それこそ産廃と一緒にティフォン様に捧げるって言うのもありだろうから。亀ドラゴンの岩石を剥がしたら生物素材が入るのも謎ではあるけど、試練としての問題には関係ないし。


〈ふむ。……白と黒の子について聞かんで良いのか?〉

「!」


 と、考えていたらティフォン様の方から話を振ってくれた。それに、ただでさえ固まっていたエルルが更に固まる。あー、確かに? 聞くべきことを聞くならこの神様だろうしね。

 まぁでも。


「――いいえ。聞きません」

〈ほう〉

「こういう話は本人が話そうと思った時に、本人の意思で話されるものを聞くべきです。待つだけならいくらでも出来ますから。そもそも、居ない相手の話をするのはどうかと思いますし」


 ま、エルルのキーポイントが北って言うのは分かってるしな。色々対になってる事考えたら、サーニャは南の可能性の方が高いだろう。どうせ聞くなら2人揃っている時に聞きたいし、その場合は3人で神域に来た方がいい気がする。

 なら待つさ。流石に世界を救い終わるまでには話してくれるだろう。そしてそこまでいってもまだ話してくれず抱えたままとなったら、それは私が好感度を稼ぎきれなかったのが悪い。


「それに話してくれようがくれまいが、私の方から繋いだ手を離す事はありませんし。実家とか血筋とか、本人の意思以外の全ては知ったこっちゃないです。彼ら自身が自分の意思で望み選んだ事以外に優先するものなんて、ありません」


 にっこり、と笑って、言い切る。

 私の「うちの子」に対するスタンスはそういう感じだ。翻って、手を出したというなら相応の報復は受けて貰う。特にその心を傷つけた場合は覚悟しとけ。そしてそれは、何や誰が相手であっても変わらない。

 まぁ過去にまでは流石に言及しないけどね。警戒レベルは高くなるけど、出会うまでにあった事を掘り返しはしない。だってその場に私は居なかったんだから。文句を言っていいのは、その場に居た場合だけだ。


〈ふ――はっはっはっは! そうか、ならば俺から語るのは止めておこう。だが1つだけ云うのであれば、どのような違いがあれど細き目をしたものは俺の子だ。そして、子を愛さぬなどという事は有り得ん。俺も、妻もな〉


 うーんイケオジ。まぁ野良皇女で文字通り降って湧いた存在である私も「自分の子」と云い切ってるからな、この神様。でっかい。身体もだけど何よりその器ってやつがでっかい。

 流石地母神系列の神様だわー、と思いながらエルルの様子をうかがう。……んー、これといって動きが無い。気がする。たぶん。響くには至らなかったか、それともキャパオーバーして動けなくなってるか、どっちだ?

 とは言えそれをここで突っ込んでる場合じゃないだろうしな。いくらティフォン様が加減してくれているとは言え、神域は神域だ。耐性関係が低いルウやルシルがちょっとしんどそうにしている。そろそろ潮時だろう。


「今後の指針となり支えとなる数々のお言葉、改めてありがとうございました」

〈あぁ。またいつでも気軽に来ると良い〉


 ぺこ、と改めて頭を下げる。それに言葉を返してもらったところで、感覚的にはずっと発動しっ放しだった【王権領域】を解除した。

 一瞬、強い眩暈の様な感覚が来る。転移酔いにも似たそれは一瞬で収まり、


「よし、戻ってきましたね」


 は、と気が付くと、そこは神域に向かう前と同じ、火山の頂上だった。

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