第441話 18枚目:神よりの託宣

 ほうほうとカバーさんがメモを取っているのも確認しているので、許可が下りた事で実質目的は達成だ。まぁこれからすぐに乗り込むって訳にも行かないし、乗り込んだところであの空間に行けるかどうかは分からないし、探索は探索でするつもりだけど。

 よっしゃ、と心の中でガッツポーズを取るのはともかく、だ。にーんまり、と、完全に悪役の笑みでティフォン様が笑っているが目が真面目なままだから、たぶんこれまだあるな。他にも破壊推奨の物があったり?


〈今回の試練、その成り立ちについては分かっているな?〉

「はい。召喚者を招く召喚術式を稼働し続ける為、一気に量が増えるであろう空間の歪みを収めきり、消化する為の場ですよね?」

〈その通りだ。もちろん、これほど規模の大きい試練であるとは誰も想定していなかったようだが。大きければ大きい程余裕と言う物が発生するから、それは構わん。よくやった、と褒める事はあれどな〉


 まぁ主にあの邪神の信徒がやらかしたせいなんだけどな。その後そりゃもー頑張ったさ。そしてそれが想定外だっていうのは何となく分かってた。主にイベントの進捗表示が絶対値から%に変わった辺りで。


〈もはや試練と言うより小さな世界と言うべきなのだが……まぁそれはともかくだ。実はすでに問題が発生している〉

「と、言いますと?」

〈1つ。俺達のように「領域を司る」事に慣れていない幾柱かの神の領域が、その不慣れのせいで不安定になっている事。2つ。恐らくは大神が発端の企み事だが、それによる試練への影響が既に出ているという事。そして3つ。発生した空間の歪みが、こちらも想定を大幅に超えたようでな。そろそろ回収が間に合わなくなっている〉

「……それはまた何というか、どれもこれも……」

〈はっはっは! 正直に厄介事と言って良いぞ!〉


 うーわ。という顔でもしてしまったか、ティフォン様は悪人顔で笑っていた。笑い事じゃ無いんだよなー。笑うしかないけど!



 神の領域が不安定になってるっていうのは、多分これ危険地帯化してるって事だよな。想定外のヘルモードエリアが点在してるって事か? 普通にヤバいのでは?

 大神が発端の企み事ってのはあれだ。多分「異なる理」の影響と元凶だ。まぁ影響は出てるだろうと思ってたけど、私達が認識している以上にその影響範囲は広がっているらしい。神直々に問題と認識する程度には。

 で、空間の歪みの回収が間に合わなくなってるって、これが一番ヤバい。だって今通常時空からは召喚者とその関係者がごっそりいなくなっていて、溢れた空間の歪みは野良ダンジョンになり、野良ダンジョンを放置するとスタンピートが発生するんだぞ? ヤバいだろうが。



 ははは。どうすんだこれ。「えっ、それ全部ヤバくないっすか?」「全部どうしようもなくヤバいわね」とかいう小声の会話が聞こえたが、本当にな! 4日目夜っていうほぼ最速の追加情報だぞ。それでも既にヤバいってどうなってんだ!


「ちなみに、解決するにはどうすれば良いでしょうか?」

〈不安定な領域は一度でも内部に発生しているモンスターを一掃すればいい。試練への影響はこの試練として作られた場を安定させれば時が稼げるだろう。空間の歪みについては外縁に位置する場所を探索し、何処の神の物か定めれば消費と共に受け入れられる量が増える筈だ〉

「ありがとうございます。ちなみにこの話を召喚者達に共有しても?」

〈無論だ〉


 という訳なのでカバーさんを振り返る。にこ! という笑みと共にタラララララッとタイピングを始めてくれたので、掲示板に書き込んでくれているのだろう。

 しかしこれ、第三陣が超スピードで成長して戦力になっても厳しいんじゃないのか。戦えるようになるまでがそれなりに早い人間種族でも1ヶ月以内っていうのは……うん。

 それこそ経験値ポーションが山ほど使えるとかいう状況じゃ無いと、廃人でも無理があると思うぞ? 魔物種族に至っては1ヶ月では思った通りに動けるかどうかっていうのが怪しい所があるし。


「既に大分頭が痛いですが、微力を尽くします」

〈はっはっは! あぁそうだ。あの天空神達は知らんが、俺が管理する領域は本来の端に位置する筈だったからな。それより外は確実に神定まらぬ場だぞ〉

「通りで広いと思いました。いえ、ここまででも相当に広かったのですが」

〈だろうな。空間の歪みを吸収して、その分だけ広がっているのは確かだ。まぁその分与えられる恩恵もより多くなるんだが〉


 うーんこれはちょっと急がないとダメか。とりあえず情報を流すだけ流したら火山山脈の向こう側に行くべきだな。ボックス様の領域があればいいんだけど、無かったら適宜撤退しなきゃいけないし。

 うん。イベント開始間もなくやるべきことが分かったのは良い事だ。良い事なんだ。ただそれが例によっていつもの如く特大の厄介事だっただけで……!

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