第437話 18枚目:ルート整備
どうやら物理が通りやすい部分と魔法が通りやすい部分が混在していて、上手く使い分けないと綺麗に甲羅を出すのは難しいという事が分かった。あと掃除する対象が、甲羅だけじゃなくて柱もしくは塔ぐらいありそうな手足も含むって事もだな。
もちろんその場にとどまっているとワイバーンを始めとした通常モンスターが襲ってくるので、その迎撃をしながらだから中々忙しい。過剰火力パーティで良かったよね。普通だと苦戦どころじゃないって話なんだろうけど。
……人間種族だと、クラン単位での攻略推奨になるだろうか。まぁそもそもこの辺境まで辿り着けるという前提なら、複数パーティで警戒と掃除を分担すれば行けるかも知れないけど。
「ところで。外側の岩だけをしっかり見定めて剥がしたはずなのに、鱗や甲殻はともかく何故肉や骨が混ざってるんです?」
「さぁ?」
すっきりしたー、という顔の亀ドラゴンから採れた素材を確認して首を傾げる。基本はがっつりとリアル系なのに、妙なところがゲーム的なんだよな。メールとか。いや、便利だからいいんだけどさ。
ちなみに甲羅の上に積もっていた岩からは岩石と鉱石が、腹の下に張り付いていた岩からは宝石が、手足及び頭と尻尾に纏いついていた岩からは生物素材が採れるみたいだ。……生物素材なんだよな。鱗とか甲殻とか爪とかはともかく、肉とか骨とか甲羅とか。甲羅?
「甲羅って一体なんなん……うわ」
「ひぇ。先輩以外だとインベントリに入れるのも一苦労なんじゃないっすか?」
「そもそも入るんでしょうか、これ。私のインベントリは現在、大分特殊な事になってますし……」
「そうなんすか?」
主に
そう思いながら、それだけでちょっとした建物が作れそうなでっかい甲羅を再びインベントリにしまう。本体から比べると小さいというか欠片っぽいとはいえ、甲羅だったなぁ。
しかし流石に超大型とカバーさんが形容しただけあって、3体ほど綺麗にしたところで私のインベントリの容量が危なくなってきた。うーんこれは。
「若干頻度が下がるとはいえ、血とか牙とかも入るのはツッコミどころですが……そこらへんに捨てていくというのもあれですし、一度撤退しましょうか」
「そうですね。素材の確認もしておきたいところですし、本来はある程度安全圏を確保してから登山を行う仕様なのでしょう」
という訳で一旦撤退だ。これはあれだな。しばらくは登山ルート周辺の亀ドラゴンをお手入れする、登山の前準備だ。
そこからリアル2日をかけて相当な量の亀ドラゴンの素材を手に入れ……どうやらレアドロップは眼らしい。何でだ……一応、頂上が全員目視できる距離まで登ることに成功した。
問題はここからで、どうやらその高さより上にはほとんど亀ドラゴンがいないっぽいのだ。その分見晴らしは良くなっているが、モンスターの襲撃が激しいし一度の戦闘が長くなるって事でもある。
というか、戦闘しながら移動しなければ延々耐久戦をすることになりそうだ、というのがエルルとカバーさんの結論だった。つまり、そこから向こうは難易度が一段上がるって事だな。
「まぁここまで来て退くという選択肢はありませんし、皆もいい加減各種スキルが上がって来たのでは?」
「そうだな。底上げって意味では大分成果が出てると思うぞ」
「そりゃあれだけ強敵と連戦すればそうもなるっすよ……」
私も連携確認込みでちょいちょい参加させてもらった。中身の運動音痴がちょうどよく未熟さと映ったみたいで、割としっかり動き方を練習させてもらえたのはありがたい。まぁ現実で同じ動きが出来るかって言ったらそれは別の問題なんだけど。
そんな訳で1月4日の夜、今度はリアル2時間の時間を合わせて頂上を目指すことになった。流石にリアル1時間=内部時間4時間ではちょっと足りそうにないからね。それぞれ都合があるから、3時間全部をばっちり合わせるっていうのは難しいんだけど。
「と言いつつログインがほとんど同じになったっすね」
「まぁ私達はちぃ姫に合わせればいいだけだし」
「そのちぃ姫は約束の時間ほぼぴったりに来てますしね」
「一緒に行動できる時間が長いのは良い事です。出来れば謁見もしくは例の問題に対する質問まで行きたいですからね」
「そうですね。ここで一度しっかり登頂を成功させておきたいところです」
もとより住民である皆は私達待ちだ。自己管理が出来ないような事は無いし、大体の内部時間を伝えているので準備と休息もしっかりしてくれている。つまり問題は無い。
っさー、頂上に辿り着いてからがある意味本番ではあるだろうけど、道中も楽勝って訳じゃ無いんだし頑張っていってみようかー。
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