第436話 18枚目:正規ルート
色々試行錯誤してみて、内臓と肉の一部を戦闘があった場所に残して少し離れた所から様子を見る、という方法で小型が釣れ、もとい現れる事を確認できた。
ポニーサイズの二足恐竜っぽいのの群れとか、黒いニシキヘビみたいなのとか、……小型? とちょっと首を傾げるようなやつから、現実に居るトカゲと変わらない手のひらサイズの奴や、私が首に巻くとちょうどいいサイズの羽の生えた蛇とかもいた。ちなみに羽は羽毛ではなく、フライリーさんと同じ感じの羽だ。
まぁもちろん、ウミウシに黒い溶岩の模様を写し取ったような、形容に困るやつもいたんだけどさ。【鑑定☆☆】したら、血液を始めとした地面に張り付く系のあれこれを食べる掃除屋だった。分類的には一応蛇らしいよ。どう見てもウミウシかスライムだったけど。
「意外と種類が居ましたね。まぁ当然と言えば当然かもしれませんが」
「そうですね。そして、その避難所となっている大型……いえ、超大型の存在も確認できましたし」
「流石にあれに喧嘩を売るのは回避したいっすね……」
「えー」
「えーじゃない流石に自重してくれルシル先輩! いくら命があっても足りない!」
なお、これらの会話は全て小声。色々グロいものを取り合っている小型達には聞こえていない(筈だ)から安心だ。
で、今カバーさんが言った超大型だが……うん。これは、超大型で納得だ。だって、山肌の一部かと思ってた小山みたいな岩の塊が、相応のごっつい手足を出して、のっそり動き始めたんだから。【鑑定☆☆】によると、亀タイプの竜だったっぽい。
というか、あの亀タイプの竜、確か戦闘終了直後に、ルージュがツルハシ持って採掘に行ってた岩だと思うんだけど。体表面に採掘ポイントがあるって時点でサイズ感を察してほしい。
「……ちなみにルージュ。生き物っぽい名前とか冠詞が付いた鉱石ってあります?」
「(・∀・*)」
「あるんすか」
「あったんですねー……」
あったらしい。……先にそれを聞いとくんだったな。そしたらあの超大型が居る事は分かっただろうに。え、名前? 「ラーヴァタートル・ドラゴンの溶鉱石」だったよ。そのまんまだね。
どうやら複数の金属が溶け合った状態で固まっているものらしく、物によって色々変わった特性があるのだそうだ。もちろん物によっては金属ごとに分けてしまった方がいい物もあるらしいが、そのまま使える物も結構多いとの事。
何というか、合金研究が一気に進みそうな鉱石だなって思った。まぁそれを採掘するその難易度がまず高いんだけどさ。
「とりあえず、隠れるべき場所は分かりました。それは間違いなく収穫です。……あのサイズ感からして、見える範囲でボコボコしている地形は全部あの竜である可能性も出てきましたが」
「流石に動きが無いので大丈夫、と思いたいところですが、否定はできませんね。ここまでの観察ではその生態までは分かりませんでしたし」
「動きが無いっていうのは、それこそ甲羅に岩が積もり過ぎて重みで動けなくなったとかっすか? だとしたら、そのめちゃ重の岩を剥がしたら隠してくれないっすかねー」
「ははは。可能性の話ですよ。…………今回は当たりだったようですけど」
「へ?」
身長の関係か、私ではなくルドルの頭の上に移動していたフライリーさん。の、「向こう」に私が視線を向けている事に気付いたのだろう。そんな声を上げて、くるっと自分の背後を振り向いた。乗られているルドルも一緒に。
そしたら、まぁ。ばっちり、合うよね。視線が。……ルドルの身長と同じぐらい直径がある、輪郭が赤で、中央に向かって黄色になるグラデーションな縦長瞳孔の目と。
「ひぶっ!?」
「!!??」
流石の判断で、悲鳴を上げかけたフライリーさんの口を塞ぎつつ盾を構えてその場から飛び退るルドル。うん。反応は悪くないんだけど、今いる此処ってさ。身を隠すって言う都合上、大きな岩同士の隙間なんだよね。
……お分かりだろうか。そう。私の背後でも音がしてるんだよ。岩同士がこすれ合うような、ゴリゴリガリガリって音が。
「……多分これが正規ルートなんでしょうね。加減のいる力仕事をすることで、好感度を稼いで避難所として動いて貰い、移動するたびにそれを繰り返すことでルートが出来るという感じの」
「あぁ、なるほど……」
まぁ確かに困ってる相手を助けるのもティフォン様的には高ポイントだろうけどさ。
その作業で大量の鉱石が入るなら、それはそれでありがたいのも確かだけどさ。
もうちょっとこう、ヒントの出し方なかったかな? って思うだけで!
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