第435話 18枚目:登山再開

 ログインしてからそれぞれの作業進捗的なものを確認してみると、最終的な詰めをしているところとの事だった。いやぁ皆仕事が早いね。


「やぁマスター。あの木の実は面白いねぇ」

「それは何よりです。で、どうなりました?」

「こうなったよぉ」


 と、ルディルが見せてくれたのは……瓶詰の白っぽいクリーム? 蓋を開けると、わぁ良い匂い。美味しそう。私が知ってるのはピーナッツクリームだけど、もしかするとどんぐりで同じようにクリームを作ったのかな? 脂肪分の量が段違いだろうけど、作れるらしい。

 これはきっと美味しい奴。と思いながら【鑑定☆☆】してみると……。


「……ルディル。これ、「一定時間体力+++」とか「一定時間体力自動回復+++」とか書いてあるんですが」

「食べたらステータスが上乗せされるみたいだねぇ。お肉に塗ってから焼いても美味しかったよぉ」


 冠付きアイテム怖。下手な装備ぐらいなら余裕で上回るステータス付加性能怖。いや今回の場合、加工した側のスキルが高かったっていうのもあるだろうけど。どう考えてもルディルとソフィーナさんの合作だし。

 この「一定時間」っていうのがどれくらいなのかっていうのは要検証だな。明らかに食事効果だから流石に30分ぐらいは持つと思うけど、確か完成した料理の出来にも影響されるんだっけ?

 うわー。こんなの全ステータス分揃えたくなるに決まってるじゃないか。いや、他にも特定スキルが上がったり生産行動に影響したりする冠付きアイテムもあるか? 探さなきゃ。


「掲示板に流せば、なりふり構わず探索に取り掛かる召喚者プレイヤーがどれだけいる事やら……。まぁとりあえずはティフォン様への謁見が叶うか、せめて「異なる理」とやらの相手についてはっきりしたことを聞いてからですが」

「そうだねぇ。とりあえず、ルフィルとルフェルに頼んで育てて貰いはするけどぉ」

「土地が足りなくなったら言ってください」

「頼もしいねぇ」


 神様頼りだけどな。ボックス様ありがとう!

 とりあえず今は生命力からの体力だけだが、火山を登るので詰まったらステータス補正をかける素材を探してみようか。私に頼らない強化手段でもあるし、隠し効果で生命力が伸びやすくなるとかもありそうだし。

 けど、それより先に再挑戦だ。特にフライリーさんがばてばてになったのは、あんなに連戦になると思ってなくて、ペース配分間違えたって言うのもあるだろうから。


「目標をはっきりさせてから動いた方がいいでしょうしね。今度は最初から隠された休憩場所を探しながら進むつもりですから、1ヵ所ぐらいは見つかる、と、いいんですけど」

「そうだねぇ。出来るだけの準備はしていくけどぉ、途中で休めるなら、そっちの方がいいのは確かだしぃ」


 そうこうしている間に予定の時間になったし、全員揃ったかな? それじゃあ1月イベント、火山挑戦テイクツーといってみようか。




 私は相変わらず戦闘に関わらないまま、後方支援係としてせっせと皆が倒すモンスターを解体していた。しかし【解体】もこれレベルどこまで上がるんだ? まさか上限500コースじゃないだろうな。

 今回は最初からルウが楽しそうに全力である事、ルドルとフライリーさんもペース配分を考えて動いている事から、やっぱり前回より余裕はある感じだ。少なくとも一時撤退した中腹辺りよりは進めるだろう。

 逆に、休憩できそうな場所はまだ一か所も見つかっていない。どういう事だ?


「ここまで見つからないとなると、何かギミックを疑った方がいいんでしょうが……」

「……まぁ、始祖だもんな。そこまで複雑な条件があるかって言うと考えにくいか」


 ちょっとシンキングタイムだぞ、これ。もちろんこのまま正面から挑み続けて、実力を上げながら頂上まで登るって言うのもありはありだろう。でもってティフォン様の好み的にそっちの方がいい可能性はある。

 とは言え休憩も仕事の内って事考えると、やっぱり試行回数が多いより休憩場所を見つけて少ない回数で登り切った方がいいよなぁ。いくら難易度が高いと言ったって、ここまで見つからないって事自体が頭を使わないと見つけられないってヒントになってるようなもんだし。

 休憩、休憩か。事此処に至るまで軒並み大型のモンスターしか見てない。って事は、小型の、大きくとも人間サイズなモンスターないし動物は普段息をひそめて隠れてるって事だ。


「で、その隠れ場所は何処かって話ですから……」


 動物はこの亜空間と言う環境で考えなくていいとしても、実力差を悟って襲うより逃げる事を選ぶ程度のモンスターはいるだろう。正面戦闘で勝てないのであれば、せめて先に相手の位置や動きを感知してその前に逃げ出す力は必要だ。

 小さくても危険な搦手系の奴はまた別枠で警戒するとして、逃げ出した先、隠れる先。大型が入ってこれないような隙間である事は当然、そんなに鈍くは無い感覚から逃れる為には、どういう場所が理想的だ?

 ……場所じゃない、って可能性も、あるか? 例えば? 例えば、危険を感知したら、擬態したり透明になったりする種族はいないか? そして、安全を求めてその種族の周りに集まるという可能性は?


「……で、あれば。その隠れる能力を見破るのは無理。逆説、危険でなくなれば姿を現す、とすれば……「第五候補」案件じゃないですか!」

「お嬢、なんか思いついた?」

「とりあえず方向性だけは。どう実現するかはまた別の話ですが」


 やっぱりこういう場合にも備えて【看破】スキルは覚えておくべきだな。どうやらこれは上位スキルらしく、「白紙のスキル書」を開いてみても載ってなかったけど。そしてどれが下位スキルかは分からないんだ。

 しかし全方向に無差別で刺さる魅了は強いよな。と思いながら移動の準備をしていた皆に推測を話す。どうやらそれぞれに納得してくれたようで、色々案が出た。

 とりあえず片っ端から殴ってみるって言うのは、確実だけどそういうのが暴れ出すと手に負えないって言うのがセオリーだから却下。肉を焼く匂いだと大型が寄ってきちゃうので残念賞。お茶とお菓子も以下同文。


「やはりこうなると、相手を認識していなくても入る魅了は強いですね。もちろんそこまで行く為には特化する必要があるんでしょうが」

「でも今女王様連れてこられても、その隠れてるモンスター諸共私達が魅了されちゃう気配がするんすよね」

「……普段はあれでも限界一杯まで制御してるらしいですからね、「第五候補」……」

「本気で魅了を掛けようとしたら抵抗できる相手とか……それこそちぃ姫やエルルさんぐらいじゃないかしら」

「サーニャさんはちょっと危ない気がしますね。何故かは黙秘させて頂きますけど」


 サーニャに関しては私もノーコメントで。実力は確かなんだけどな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る