第434話 18枚目:準備と探索

 最寄りのボックス様の領域まで撤退し、そこでようやく一息ついた。いやぁきつかったね。明らかに難易度が超上級者向けなんだもんなぁ。ティフォン様の領域だから仕方ないかも知れないんだけど。

 とりあえず各自装備の点検や手入れをして、とりあえず私とルフィルとルフェルで預かっていた素材の配分だ。結構あるんだよねこれが。皮とか牙とか肉とか分かりやすいのは良いんだけど、内臓まであるのはこれ、どうしようか。


「いらないならくれると嬉しいかなぁ。もしかしたら新しい薬になるかも知れないしぃ、そうでなくても肥料にしておくからさぁ」

「相当量がありますけど大丈夫ですか?」

「まぁ何とかするよぉ。他にも装備を作ったりするだろうしぃ、どっちにしろ、火山に再挑戦するのはもうしばらくかかるだろうからねぇ」


 なるほど、それもそうか。ちなみに生産道具は一通りエルルが持っていたのを地上4階の中部屋に設置したし、コトニワ組が分野別で生産スキルを持っているので問題なく生産は出来る。

 そうなると、私はどうしたものか。生産は邪魔になってしまうし、装備の消耗はほぼしていない。気力的にはまだまだ余裕があるし、魔力に至っては帰り道の途中で全快済みだ。

 たぶんエルルとしては大人しくしておいてほしいんだろうけど、早めにログアウトするとしても時間が微妙に余っている。流石にそこまでの間をただぼーっと過ごすのもなぁ。


「火山の手前にある平地や森なら探索しても良いでしょうか」

「……まぁ、そのぐらいなら……」


 という訳で探索だ。気分的には散歩だけど。【環境耐性】を覚えて調子も機嫌も良いルウが一緒なので、周辺警戒も楽だ。

 モンスターはともかく素材がざくざくあるんだよね。これは大きいな。辺境まで来たかいはあるって感じだろうか。通常の物に加えてレア度が高そうな薬草もたくさん採れたので、これはルディルに渡しておこう。


「……これ、よく見たら木も結構良いものなのでは? 冠付きなんですけど」

「は?」


 もののついでだしと適当な木に【鑑定☆☆】を使ってみたら、冠……「生命力溢れる」という冠詞が付いていた。種類としては楢系に属する。つまりどんぐりが採れるって事だよ。

 これは持って帰ってカバーさんに相談案件だな。周りの地面を探すと数は少ないがどんぐりもあったので、同じく【鑑定☆☆】して冠付きである事を確認して回収する。

 何なんだろうな、これ。もしかしてこの冠付きなのが「複数の神の力が混ざった結果発生した特殊なアイテム」か? その場合確実に1柱はティフォン様だろうけど。


「納品に適した物ではなさそうですが、色々使えそうですね。夢が広がります」


 それに火山の近くの森で冠付きの木が見つかったって事は、もしかしたらもうちょっと山寄りの場所なら冠付きの鉱石とかもありそうな感じじゃないか? どんぐり以外にも木の実があれば探したいところだ。

 ……正直まだまだ探したかったのだが、ここでタイムアップ。危ない。タイマーをかけておいて良かった。危うくいつもの調子で3時間目一杯ログインしているところだった。

 火山最寄りのボックス様の領域に戻り、どうやら一度カスタマイズした小部屋の状態は他の場所にも引き継げるという最高な仕様を確認して、それをカバーさんに伝えてからログアウト。初詣の時間だ。


「(今年も一年、事故と病気をしないで過ごせますように)」


 毎年の神社に参っておみくじを引く。中吉か。凶じゃないなら良し。その後家族で昼を外食して帰宅。うちの正月に関するイベントはこれでほぼ終わったと言っていい。

 一応火山への再チャレンジとして打ち合わせた時間は、午後の3時から4時だ。そして帰って来たのが1時半。うーん、予定の範囲には入るけど、その後に余裕が無いのはちょっとなぁ。

 ……しばらく考えて、冬休みの宿題にトドメを刺しておく、もとい最後に残っている分を片付けてしまう事にした。正月からゲームをしているのは確かだが、勉強もしてるぞって事で。


「思ったよりかかったな……」


 数学は難敵でしたね。という訳で終わってみた時計は2時半を過ぎた時間を指している。っち、2時には終わらせてログインするつもりだったのに。

 まぁでもこれで、あと1週間ほどの間私を阻むものは何もない訳だ。さー、張り切って探索するかー。

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