第433話 18枚目:撤退指標
支払う物は大きかったが【環境耐性】を覚えたかいはあったようで、ルウはご機嫌に鉄球を振り回すようになった。最初はだるさが残っていたようだが、環境が環境だけにレベルがどんどん上がっていく。進むペースを少し落とすと、十分レベルアップが間に合うようになったらしい。
数時間をかけて中腹に差し掛かった頃には、【環境耐性】のレベルアップ速度は皆大体同じぐらいになっていたようだしね。エルルと
「さらに私は火の精霊さんと契約していますので」
「先輩の近くは涼しいと思ったら気のせいじゃ無かったっす!?」
いやールールにスキル詳細を確認しておいて貰ってて良かったよね。【火精霊魔法】にも暑さの軽減があるらしい。休憩中は【風精霊魔法】との合わせ技で、ある程度の範囲の暑さを軽減したら全員に喜ばれたよ。
そんな感じで登山を続けていたが、うん、思った以上に道のりが長い。あと、山を登れば登るほど出てくるモンスターのレベルが上がってる感じがする。私がそこそこ魔タッカーをやるようになった上、すり抜けてきた相手限定とはいえ直接戦闘するようにもなってるからな。
しかも相手が横やりや割り込みをするようになってきたから、最前線はほぼ乱戦状態だ。敵味方が入り乱れれば入り乱れる程光るルシルは別として、特に消耗の激しいルドルとフライリーさんは目に見えて疲れている。
「これは一時撤退も視野に入れるべきですね」
「そうですね。そろそろ高さ的には中間点なので、休憩できるポイントがあれば良いんですが」
と、思って、ここ1時間ほど山を登るより周辺を探索することに重点を置いている訳だが、それっぽい場所は無い。……まぁ私とエルルが平気な以上、“細き目の神々”としてはまだまだなのかもしれないけど。
最悪は荷台を組み立てて空経由でエルルに山の麓まで運んでもらう、という撤退案を頭の隅に置きながら探索する。流石にそろそろ水場の1つも無いと生き物的に厳しいと思うんだけどな。火山に水場は無いか。
開けた足場の悪い場所で連戦を続けるより、これならいっそ相手が限定されている簡易試練の方がマシかもしれない。時間経過で相手が湧くとしても、相手の数が限られているなら交代で休めるだろうし。
「下手に地面と言うか山肌を掘りにかかると、そこから溶岩が出てきそうなんですよねこの山」
「お嬢の基準で掘ったらなりかねないな……。っていうか、何で掘るって言う話になるんだ」
「出入口を一か所に限定して、かつ隠蔽しやすくする為です。休める所が無いなら作ってしまえば良いんですよ」
「やめとけ」
割と現実的だと思ったのだが、ストップがかかってしまった。残念。
まぁしかし真面目にどうしたものか。100mおきとは言わないが、それなりの間隔で休める場所が無いと流石にこれは厳しいぞ? 山に登らせる気が無いなら別にいいけど。
もしくは休める場所はあっても見つけられてないだけか? ……そんな小細工するかなぁティフォン様が。それこそ謎の圧があって喧嘩する気が強制的に無くなるとか、そんな場所がありそうな気がするんだけど……。
「真面目に考えた場合、それこそ何かの巣とか、【幼体】持ちしか入れないような隙間とか、そういう場所だと思うんですが……」
「巣はちょっとどうかと思うぞ? その巣の持ち主とかそれこそ親とかが居るって事だろ。それに【人化】基準ならどっか隙間はありそうな感じだが、それこそ簡単に見つかったら安全じゃないからな」
「体格からの重量含めて、力で壊せてしまいそうですからね」
で、そういう場所を探してるけど見つからないって話なんだよ。どうしようかな。見える疲れ方からして、次に戦闘が起こったらフライリーさんかルドルが致命打食らいそうな感じする。治せるとは言え流石にそれは嫌だし……本気で一時撤退するか?
スタミナポーションをエルル以外の前衛が毎戦闘ごとにがっつり消費してる状態だし、ルチルとソフィーナさんもMPポーションをかなり消費している。ルディルの投げポーションも結構厳しい筈だ。
うん。やっぱりちょっと本気で補給出来ないと厳しいなこれ。ここまでの連戦で相当にスキルレベルも上がっただろうし、この調子ならたぶん撤退を繰り返しても山頂までは辿り着けるだろう。
「ぎりぎりミスが出ていないは赤信号です。次に戦闘に入ったら高確率で致命的なミスが起こるでしょう。一時撤退します」
「「了解メェ~」」
死んでも生き返るの集団だけど、命大事にだ。山は逃げないんだから、態勢を整えて再チャレンジしよう。
……いやまぁ、実の所を言えば、進むだけならまだまだ進めるんだよ。だって私は通常の
何でそれをやらないかって言うと、感覚が実力と大幅に食い違うから、絶対に負けられない戦いとかでない限り使わないでくれって頼まれてるからなんだよ。自分がどれだけの力を持つのか、その実感が狂うんだってさ。
「いやもはやあれは別人レベルっすよ。あれは何というかこう、未来で何かを極めた状態の自分の実力を先取りした感じのあれっす」
「そうね。あと、その場で主に攻撃力が跳ね上がるから、ちぃ姫じゃないけどうっかりで地形を変えちゃいそうだわ」
「【王権領域】だけで既に十分極まるステータス補正が掛かった上に、更に倍率の高い支援を貰ったら、種族レベル相当でいくつ上がった事になるか分かりませんよ。流石にそこまで甘やかして貰うのは……」
「実際の所、純粋なステータスだけで5倍以上にはなっていると思うべきでしょう。それぐらいに普段の感覚と差異があります」
なおうちの子も大体同じ意見だ。連携はともかく鍛錬にならないってさ。
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