第421話 18枚目:イベント目標

「これは急ぎ共有しなければならない情報で確定ですが、連絡手段の途絶が本当に厄介ですね」

「この場の全体図にもよりますが、一旦拠点の確保を諦める必要もあるかも知れません」


 どうやら周囲の壁や床を【鑑定】する事でもこの石材の情報は手に入ったらしい。カバーさんもパストダウンさんも限界突破してる筈だから、レベルが低いと見破れるかどうか分からないけど。

 そして「第四候補」の活躍で「第五候補」が合流。ここまで分かったマップを統合して考えると、この場所は今いる感じの部屋を外周に、内側が通路で埋まった迷路のような場所だという事が分かった。

 流石に「第四候補」でも場所が場所なので捜索範囲に限界が出てきたので、皆揃って迷子にならないように移動である。


「とりあえず想定した半径から中央に向かってみるのは異論ありませんが……「本来は」と付くものの、“叡智の神々”の試練だというのが厄ネタっぽいですね」

『特に「第三候補」達は少々話がややこしくなるであろうな……。まぁその辺りは我が出来るだけ仲裁する故、緊急事態と言う事で少々の態度は流してくれると助かるのだが』

「私達は良いんですよ。私達は」

『うむ。否定は出来んが、頼んだ』


 入り組み折れ曲がる通路を、マップを頼りに一定方向に進んでいく。通路の幅が狭いのでどうしても縦長の列になってしまうが、分断された時の事を考えて戦力バランス及び連絡要員としての召喚者プレイヤーの位置をちゃんと考えた結果の列だ。

 実際に分断されるかどうかは別として、一度直接会っていれば、しばらくの間なら離れてもウィスパーやメール、掲示板と言った機能が使えるようなので、それでまずは合流を目指すという訳だ。

 マップは細かに全員で共有しているし、部屋の配置から半分以上は分かっているので、大体何処に居るかは分かるだろう、という予想の上で、だけど。


「しかし、あの名称からすると……」

『……うむ。何がどうしてそうなったのかは分からぬが……確率は、かなり高いであろうな。その後の文面も含めて考えると、ほぼ確定と言って差し支えない』

「ですよねぇ。全く、どこから紛れ込んだのやら」


 で。移動中に何をやってるかって言うと、当然推測をしている訳だ。その材料はあの初回入手時点では「???」だった、あの石材である。

 異なる理。この時点でヤバいんだよな。だってあの“破滅の神々”でさえ、理と言う名のルール自体は共通なのだ。邪神だ混沌だと言ったところで、最低限「この世界」の神ではある訳だから。

 そしてその下の、干渉、という文言。そして【鑑定☆☆】ですら暴き切れなかった「何か」――恐らくは、名称。それも神かそれに比肩する程の、強大な存在の。と、なれ、ば。


「……まぁ、出来れば仕留めておきたいところですが」

『むしろ……だからこそこの広大な亜空間だったのかも知れぬがな』

「は。嫌な事に理が通ってしまいますね」

『全く同感である』


 居るだろう? 「この世界」におけるルールの通用しない存在が。その、ある意味大本と呼べる、本来の意味での諸悪の根源が。



 ……そう。推定、「モンスターの『王』」だ。



 渡鯨族の港町で色々小細工していたのは確定。って事は、間違いなく1人もしくは1体は最初の大陸に居るって事だ。今の今まで、どれだけ召喚者プレイヤーが駆けずり回って探そうとしても見つからなかったそいつが、この広大な亜空間に存在する。これは、ほぼ確定で良い。

 だって他に該当する存在なんてないだろう? そしてそれなら「邪神が除外されなかった」事にも納得がいく。アライメントと属性は全部埋めておかなきゃ上手く「閉じ込められない」可能性があるからな。

 丸ごと2ヶ月使うにふさわしい超大型イベントなだけはある。ここで持って来るって事は、「モンスターの『王』」が複数居るっているのも確定情報。どこぞの四天王みたいに「奴は我々の中でも最弱……」みたいな事になるって事だな。


「チュートリアル上等です。万里の道も一歩から。まず1体、此処でトドメを刺すのがこの亜空間の最終目的なんでしょう」

「そうねぇ~。新人ちゃんにとっては普通に育成の補助となる環境だけど~、その上で熟練者にも十分な目標が与えられるとは無駄がないわね~」

「うっわぁ「第三候補」が殺る気に満ち溢れてるなー。それこそ戦いの余波でこの空間ぶっ壊れるんじゃね?」

『くはは、その辺りは我がどうにかしよう。そもこの空間自体が神の力を結集したものであるしな』


 まぁつまり、そういう事だ。ははは、年明けの、人によっては死ぬほど忙しい時期にこんなストーリー大本命のイベントを持ってくるとは、運営やりやがったな。


『後我ら自身の目標としては、出来ればここで「第二候補」とも一旦合流しておきたい』

「……あぁ、成程。召喚者プレイヤーは確実にこの空間の中に居る筈ですからね。通常空間の現在位置に関わらず」

「探す難易度がそれはそれで高い……いや「第二候補」か。むしろ誰より簡単なんじゃね? 少なくともこの中だと」

「確かに~。大物が出たって話を~、片っ端から当たっていけば~、割とすぐに会えそうな気がするわ~」

『うむ。それに、この亜空間の中であればクランへの勧誘も出来るようであるからな。あちらにも大神殿はあるようであるし、色々上手くすればこちらに来れるようになるやも知れん』


 ……そう言えばいたな。とか思ってないから。CMに鎧百足を叩き斬る映像が使われていたことから、「第二候補」もあのメールに承諾を返したんだろうし、5月イベントの時に亜空間内なら会えるのは分かってたから。

 忘れたりして無いから。断じて。うん。

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