第420話 18枚目:周辺調査
『む、「第三候補」のところは全員で移動していたのであるか』
「えぇ。召喚者組が全員一致で、分断されるとヤバそうと判断したので」
『賢明な判断であるな』
人形に案内された先にあったのは、私達が最初居たのと同じような部屋だった。というか、一緒だ。大きさとか壁とか床とか天井とか、全部一緒だ。違いが無い。そしてどうやら私達は、右の通路から来た事になるようだ。
で、そこに待機する形でカーリャさんに抱えられている「第一候補」と、周りに居るのがパストダウンさんと元作成使徒である使徒生まれ組……あれ、人数がちょっと足りなくないか。で、さっきの言葉って事はまさか。
『敵が居らぬ時点で妙なものを感じてはおったのだが……この場なのかこの空間全体なのか、しばらく離れていると、段々と連絡が取れなくなっていくようでな』
「……ということは、人数が少ないように見えるのは気のせいでも何でもなく」
『そういう事である。今、「第四候補」の手を借りて探しておるのだがな』
「ヤベー地雷もあったもんっすね!?」
フライリーさんの感想が大正解なんだよなぁ。これ、掲示板を見れてないから分からないが、いつものように使えていたら悲鳴が大変な事になってたんじゃないか?
「悲鳴も聞こえないって逆に怖くないかしら」
「外部掲示板での情報収集もこれ、今のタイミングだと難しそうですね……」
「今はいつもの制限から外れた時間ですから、難しいでしょう」
という事だ。
しかしどの神が担当している場所なのやら。……と思いつつ、ぺたぺたと壁を触ってみる。ふむ。触った感じは普通の石だな。
「……お嬢? 壊すとか言うなよ?」
「そのつもりですが?」
『……「第三候補」、流石にそれは』
「あの島に誘拐された時も、結局壁を殴り壊して一旦脱出しましたからねぇ」
『何故か一直線に空いていた穴は「第三候補」のせいであったのか』
ダンジョンの壁だって壊したしな。こんこん、とノックするように軽くたたいてみたが、多分ダンジョンの壁と似たような感じじゃないだろうか。……つまり、普通には無理って事なんだけど。
「建物であれば儲けもの、地上であったら空に合図が出せる、地下であるならそれはそれ。ダンジョンではペナルティっぽい敵も出てきましたがむしろ殴りがいのある良い相手でしたので責任を持って倒します。と、いう事でー」
地図を見る限りこちらの先に通路は無い。まぁ別の通路に出たらその時はその時だ。モンスターが出ないって時点でかなり特殊な空間に居るのは間違いないし、何よりログアウトまでに確実な安全地帯を確保するのは必須である。
と、理論武装と言う名の言い訳を十分に用意した所でぐっと腰を落として拳を引く。身体をひねり、力加減と言う名のリミッターを外し、拳を中心に私の身長の倍ぐらいの穴が、どこまでも遠くまで開くイメージで。
「総員万が一に備えての警戒態勢をお願いします。えいっ!」
アビリティは使わずに、普通に壁を、全力でぶん殴った。
ッッゴ!!! とすごい音がして拳が壁より向こうに進む。バガァァッッ!! と音が続いて、ひび割れからの崩落という感じで文字通りの大穴が開いた。
どうやら魔力の制御を頑張ってきた成果は出ていたらしく、穴の大きさはイメージ通りだ。ルドルはちょっと狭いかな? という穴がどこまでも、本当にどこまでも向こうに真っすぐ続いている。
「…………。異空間系、ですかね? これ」
「その可能性は高いですね。流石にここまで何処までも石材の壁が続いているというのは不自然です」
『……とすると、通常の理であれば、通らぬな。いや、連絡手段が断たれるという意味では理が通るのであるが』
本っっっ当に、どこまでも、穴が真っすぐ続いている。……おかしいな? と振り返って同意を求めると、カバーさんと「第一候補」が応じて来た。だよな?
またなんかバックストーリーぶっこんで来たのか、運営。一応インベントリをチェック。ダンジョンの壁を壊すとあのレア度高すぎじゃね問題の「空間石」が手に入ったが、今回は何が手に入っただろうか。手に入らない可能性も十分あるんだけど。
えーと。「空間石」は通常ドロップ()だな。「空間石の巨大な塊」は一気に広範囲を壊したからだとして。ん? 何だこれ。名前が「???」になってるぞ?
「何か名前が未鑑定品みたいなことになってる物がインベントリに入りました。アイコンも不明です」
『しばし待て「第三候補」。簡易だが儀式場を作って空間を一時的に隔絶する』
「あ、予想が当たってたらやばい品ですか」
新人歓迎イベントとは何だったのか。とちょっと思いつつ、「第一候補」の準備が整うまで待ってから、その「???」をインベントリから取り出してみた。
見た目はこの周りにある明るい灰色の石材だな。自動では鑑定されてない事に加えて「第一候補」の反応がこれって事からヤバい物の気配がするけど。さて、【鑑定☆☆】。
[アイテム:異なる理に汚染された石材
説明:本来は“叡智の神々”が試練を作成する際、場を構成する為に作り出す石材
現在は干渉により『******』の影響をより強く受ける受容体と化している
そのままでも加工及び利用は可能。
ただし利用した場合『******』からの干渉を許容する事になる]
とりあえずその結果をスクショに撮り、それを全員で回し見て貰う。うわ、とか、ひぇ、とかいう呟きが一巡りした所で、全員が思ったことを総括。
「…………控えめに言ってヤバいのでは?」
『で、あるな』
なぁ運営。
新人歓迎イベントなんだよな、これ。
いきなり初手からなんっつー爆弾を投下してくれてんだ!!
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