第415話 17枚目:最後の詰め

 で、そこから。


「超大型が出たぞーっ!!」

「うるせぇ! 見りゃ分かる!」

「あの口のバケモンよりマシだ!」


 町の防壁を、柵か何かのように内側から壊して超大型の多腕多足の異形が出てきたり。


「ぼべらぁ!?」

「何!? 今どこから攻撃が……」

「げぇ! あいつらとうとう弓持ってきたぞ!」


 途中で更に被害者(生贄)が追加されたらしく、小型の個体が飛び道具を装備してくるようになったり。


「はっはー、合同大魔法を喰らえーっ!!」

「町の中への直接攻撃はアウトだって指示が回って来てただろうが!?」

「掲示板で注意喚起されてんのにこれだから情弱は!」


 若干名の暴走というか不注意により、出現する数が大小問わず一気に増えたり。

 微妙にそこそこ危ない場面もあったりしたが、それでもどうにか連携と召喚者プレイヤーとしての強み(死に戻り)を生かして、邪神の神域の「空気」を抑え込む祭具(白い柱っぽい)を各方面の門まで運ぶことに成功したようだ。私の門を塞ぐ魔法も、他の場所の準備が整った時点で解除した。

 ちなみにこれらの会話は【風古代魔法】で風を操作した上で耳を澄ませて拾い上げられた会話だ。楽しそうで何よりだね。


『まぁ最後の大魔法とやらをぶち込んだ奴らは戦犯ですけど。何のために私がほぼ何もせず見学に徹してると思ってんですか察しろおバカ』

「ははははは。しかしまぁこれで対策のしてある儀式場に魔法を放つと何らかの方法で利用されるという仮説が証明されましたね」


 掲示板を見て耳を澄ませる限り、掲示板でも現地でも色んな意味でボコボコにされているようなのでまぁそっちは良しとして。

 どうやら四方にある門に祭具を設置すると、町の中に満ちていた邪神の神域の「空気」が完全に押さえ込まれるようだ。つまり、儀式場で準聖地であっても普通に行動できるって事だね。

 もちろんその分だけ戦闘は激しくなるだろうが、ここで引くような召喚者プレイヤーたちではないだろう。何せここからが盛り上がるところなのだから。


『まぁ実際の勝率がどの程度かと言うと、それはまた別の話なんですけど』

「そうですね。ですので1方向はメアリーさんが担当し、1方向に召喚者プレイヤーの戦力を集中、あと2方向にルシルさんとルージュさんがそれぞれ加わっている訳ですし」


 ちなみにカバーさんは掲示板経由で戦略補佐的な事をしている。ここを動かないのは、私だけならともかく、ぐっすりと眠っているカトリナちゃんを守るためだ。

 私の背中の上にしっかり乗って上から割と分厚い毛布を被っているので、寝心地はともかく安定感と暖かさはちゃんとしている。それでなくても誘拐されてきてるんだ。精神的にも体力的にも、こんな深夜をすっかり回った時間まで起きているのは厳しいだろう。

 今の所寝相もとても良いので、転げ落ちそうなことにはなっていない。時々もぞもぞと寝返りは打つのだが、翼が落下防止の柵代わりになるし、毛布の位置を調節するぐらいなら尻尾で出来るからね。


『しかし、カトリナちゃんはどうしましょうか。誘拐されてきたのは確かとして、本来なら元の居場所に戻すのが一番でしょうが……』

「どうするにせよ、昨日の今日では神殿側も大混乱でしょうからね。大神官さんに表に立ってもらい陰で調節を進めるとして、一度私達の拠点に連れて帰る必要があると思います」

『まぁそうなりますよね。間違いなく巫女という超重要人物の近くまで邪神の信者が食い込んでたって事でしょうし。他に居ないとも限りませんし』


 対“破滅の神々”の信者及びクラン『バッドエンド』って意味だと間違いなく盤石なのがうちだからなぁ、色んな意味で。ストーサーを含む3つの町の住民と一緒で、しばらく匿う形で面倒を見る事になるか。

 こうしてみると、食料的な意味で美味しいモンスターをメインにスタンピートの再現っぽくした試練をカスタムしたのは大正解だったんじゃないか? だって全員併せて5000人に届かないって言ったって、それでも相当な人数だし。

 うん。イベントの前半こと12月も終わりが見えてるけど、ボックス様への感謝と共に頑張って周回しなきゃだな。


『……流石に人脈的な意味での手札は、一旦尽きたと思いたいところです』

「それは確かに。流石に此処まで大きな事を起こした以上、手札を一旦使い切るつもりでの動きだったと思いたいですね」


 ほんとそれな。

 いや、別にレッドカードからの強制排除になってしまうのは一向に構わないんだけど。

 ……ある意味、そんな大事な部分を読み違うような「凡ミス」をするとは、思えないんだよな。あのゲテモノピエロ……。

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