第411話 17枚目:対処開始
以前巨大化したクレナイイトサンゴで出来た見た目巨人が出て来たのと、非常によく似た演出だ。だからあれが儀式が実行されて、何らかの成果が出たというものだと知っている。
ビリビリと【王権領域】の表面に振動が伝わるような感覚を覚えつつ視線を向けた先で、その黒い闇の柱は細くなって消えていった。……とりあえず見える範囲には何もいないが……。
とりあえずまだ【王権領域】は展開しておいた方がいいかな。カトリナちゃんを守るのもあるし、安全地帯があるっていうのは大事だ。まぁ私も動けないんだけど。
「な、なに? 何が起こったの?」
『今状況を確認してる所なので、ちょっと待って下さいね』
「え、な、なに? なにこのつるつるしたの、えっ?」
……カトリナちゃん、「輝ける瞳」で信仰が見えるって言うけど、もしかして闇夜の現在、信仰「しか」見えてなかったりするのか?
で、「第一候補」から散々言われたように【王権領域】は他の神の儀式や力を阻害してしまう。そしてそれが「輝ける瞳」にも適用されているとするなら、今のカトリナちゃん、何も見えてない状態か?
まぁ背中ぐらいならいくら触られようとかまわないんだけど、流石に角や翼を引っ張られると痛いから勘弁してね。子供の力で痛いと感じる程引っ張れるかは別の問題として。
「……あ」
「(;゚д゚)」
そして、【王権領域】は装備のお陰で「私が味方と認識した相手」まで適用範囲が拡大されている。だから、現在に限ればルシルやルージュの方が先に何かに気付いてもおかしい事は何もない。
ただその反応がなー。特にルージュ。何があったの。絶対碌でもない事だろうけど。
「Σ(゚Д゚;o)」
『焦ってる事しか分からないんですよね残念ながら。カバーさん?』
「……えー、そうですね……」
相変わらず音としてはどう言っているのか分からない声では、感情は十分に伝わってもその細かい内容は伝わってこない。なので素直にカバーさんに解説を求めると、どうやら近くの木に登っていたらしいカバーさんは、相変わらずメニューを操作しながら木を下りてきた。器用だな。
「端的に言うと……地獄の蓋が開いた、という状況になるでしょうか」
『…………眷属の無限召喚ですか?』
「恐らくは。そして、捕まって向こう側に連れていかれると、そのまま生贄としてカウントされるかと」
……。
…………。
『やらかすとは思っていましたがやはりとびきりに質の悪い……!』
「ちぃ姫さんや大神官さん達が難を逃れていて、住民の避難も完了済みであり、これで「ほぼ最低水準」だというのが更に頭が痛いですね。現在対処の相談中です」
『まぁ普通に遠隔攻撃を叩き込んでも利用されるだけでしょうしね……ここまでの儀式場と同じく……』
マジかぁ……! と頭を抑えたくなったところで、私にも見えた。壊れた門からわらわらと出てくる、大体は人間ぐらいの大きさで形も近い、だが目や手足の数が決定的に違う異形達の姿が。
そいつらは尽きる様子を見せずに壊れた門を通って出て来て周囲へと広がっていく。はははマジか、確かに私やエルルやサーニャへの対策としては、大きいのが1体いるより小さいのが無数にいる方が正解だけどさ!
けどまぁ対処するしかない。煽りに乗らずに後方に残っていた
『これはここから移動して、あちらの
「確かにそうですね。その方向で調節します」
『お願いします。さて、カトリナちゃん?』
「ふぇ!? な、なに!?」
『たぶん暗い中で何も見えてないと思いますが、ちょっと大人しくしててくださいね。移動するのに運びますから』
「は、運ぶ? え? 何で? どこに? きゃぁっ!」
クッションに抱き着くようにして私に引っ付いていたカトリナちゃんを、尻尾で背中の上へと乗せる。カトリナちゃんを置いていくという選択肢は無いし、【王権領域】という安全地帯ごと移動するのは必須だろう。
大丈夫だ。小さい子が乗った程度なら動きに支障がないのはネレイちゃんの時で分かってる。もちろん加減はするけどね。さてそれじゃ【王権領域】の範囲を最大まで展開してと。
『っと……何か抵抗があるあたり、やっぱり無策で外に出るとまずそうですねこれ。ルシル、ルージュ、カバーさん、メアリーさん、大丈夫ですか?』
「ん」
「(^◇^)/」
「はい。移動の連絡は完了しました」
「……うふふ、えぇ」
「えっ、なに、えっ?」
カトリナちゃんには悪いがさくさく話を進め、全員一緒に移動だ。推定だが町ごと吹っ飛ばすという手段が使えない以上、何らかの根本解決が出来るようになるまで、ひたすら数を相手に耐久戦しなきゃいけないからね。
あー、みのみのさんに臨時の砦作って貰えればなー。今からだと流石にちょっと無理があるだろうけど!
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