第372話 16枚目:イベントのお知らせ
途中で思いがけない参加者がいたり、爆弾が仕掛けられていたりしてそこそこに波乱らしい波乱もあったプレイヤーイベント。その最も盛り上がる日曜日の夜に、次のイベントのお知らせは届いた。
ざっくりした内容は既に届けられているので、今回は詳細版となる。確か12月が準備期間で、1月が新人メインだったな? だから、基本は新人歓迎イベントとなる筈だ。
その情報から、メイン会場となるのは最初の大陸である可能性が高い。
「……。なるほど。こちらへ戻ってきたのは、間違いではありませんが必要不可欠と言う訳でも無かったようですね」
「っすねー」
なお、フライリーさんは相変わらず私の頭の上に乗って一緒にイベントのお知らせを読んでいる。流石に座るんじゃなくて寝そべってるけど。そしてその頭の上に【人化】を解いたルチルが乗り、そして更にその上に同じく【人化】を解いたルディルが乗っている。
どこの音楽隊だ? と思う訳だが、まぁ私が【人化】を解くとルシルも参加してきそうだからここで止めておくことにする。そしてその積み上がった姿を見てるソフィーさん達とカバーさんがまー良い笑顔なんだ。
「……お嬢。流石にそれだけ乗ったら重くないか?」
「いえさっぱり。バランスを取る方が難しいです」
「多少傾くぐらいなら大丈夫っすよ?」
『僕らの方でもバランスとりますしねー』
『というかぁ、アタシはルチルに乗せて貰ってるから、落ちかけたら飛んでもらうよぉ?』
「まぁならいいんだが……」
どうやら問題は無いようだ。
さてイベントの詳細だが、これは事前に触れられていた通りだな。1月いっぱいが第三陣歓迎イベントで、その準備を12月いっぱいかけてするらしい。もちろん年末年始の特別ログイン時間もある。
どうやら運営的にも大分気合を入れたイベントのようで、中々イベントで手に入るアイテムが豪華だ。いや、豪華に出来る、と言った方が正しいか。まぁとりあえず、バックストーリーを確認してみよう。
新たな大陸における様々な問題が次々と発覚しただけではなく、始まりの大陸にもまだまだ多くの問題があり、その上まだ繋がりが断たれている大陸にも恐らく同程度には問題があるという事実に、神々は程度の違いはあれど、頭を抱える事になった。
何度も話し合いを重ねた神々は、その相談の末に、召喚者を恒常的に招き続ける事にした。問題を解決する為に必要な物は様々だが、とにもかくにもまず絶対的に頭数が足りないという結論になった為だ。
だがそんな事をすれば、空間の歪みが大変な事になるのは明白。故に神々はその対策の為に再び何度も話し合いを重ね、そしていくつかの前例を鑑みて出した結論を、託宣として伝えるのだった。
さてヒントは「いくつかの前例」って点だ。つまり過去のイベントに似たようなものがあるって事だな。召喚者を招き、あるいはその数を増やした事で発生した空間の歪みをどうにかする為に、神々は一体過去にどんな手を打っただろうか?
……答えは、「眷属による試練の作成」と、「特殊な亜空間の作成」だ。ちなみに「神殿の建設」は予想外の要素が噛んでからの対処なので若干ずれる、という事らしい。
まぁつまり去年9月のイベントと、今年5月のイベントの組み合わせだな。で、具体的にはどうするかと言うと。
「現在信仰を受けている全神々の合作による試練を、特殊な亜空間と言う形で作成。
「で、その納品したアイテムによって攻略した時のご褒美が変動するって事っすか。期間中は試練ダンジョンを攻略したり、神様へ捧げものしたりして、その納品用のアイテムを集めるんすね」
「そして当然ながら、納品用のアイテムも神毎に異なり、どの神から貰ったアイテムが多いかでその後の発言権に加えて、合作試練を管理できる規模が変わる、と」
ちなみに今回、野良ダンジョンは対象外だ。もちろん攻略すればその攻略結果を好きな神に捧げる権利と実際に得るアイテムはそのままだが、イベントの納品用アイテムは手に入らない。
……うん。かも知れないって推測と、ちょっと嫌な予想と、大分嫌な予感が頭に浮かんだぞ?
『ごしゅじん、どうしましたー?』
「いえ。……今回の
『はいー?』
「へ? ……あ、ほんとっすね!? 前の亜空間の時はきっびしい制限付いてたのに!」
『……そう言えばそうですねー? 前の時はー、僕もごしゅじんやフライリーさんと一緒でないと入れませんでしたしー』
かも知れないって推測は、フリーの住民が一緒に参加できるって事だ。試練ダンジョンの方は召喚者専用だが、神へ祈ったり捧げものをして納品用のアイテムが貰えるという点と、亜空間を作る為に納品するという点は、住民でも出来る手順だ。
フリアドにおいて「理が通る」というのは自由を行使する為に必要な物だ。逆に言えば、それさえあれば何をするのも自由である。だから、「出来ない」と明確に書かれていないのなら、基本的に「出来る」と思っておいた方がいい。
と、なれば……ちょっと嫌な予想がつく。
「…………ここぞとばかり、一部聖職者たちが、それこそ周囲の迷惑を考えないレベルで頑張ってしまいそうな気がするんですよね……」
ほら。
……渡鯨族の街に対する襲撃、って言ったら、大体想像つくよね?
「……そーいや、いたっすね、はた迷惑な人間至上主義な神の狂信者が……」
『その言い方を聞くだけで迷惑極まりないのが良く分かるよぉ』
ここぞとばかりに、その神々の間における権力を、拡大しようとするんじゃないかな、って……。
で。もう1つ。大分嫌な予感が、そこから続く訳だけど。
渡鯨族の街に対する襲撃で思い出してほしいのは、その被害を出したメインが誰だったかって言うのと……その、黒幕の事だ。
「あと」
「まだあるんすか!?」
「こっちの方が悪い予感なんですが」
『ごしゅじんがそう言う時は大抵当たりますからねー』
「……出来れば外れて欲しい時に限って、ど真ん中な事が多いのは確かなんですよね」
もう一度イベントのお知らせを読み直す。うん。そうだな。ちゃんと書いてあるな。
「絶対、あいつらも動くでしょう。それこそ、こっそり祈りの祭壇を別の神の物にすり替えるぐらいはやらかしても驚けません」
「え、い、いやいや流石にそんな、そこまでは……しないとは確かに言いきれねぇっすけど……!」
イベントのお知らせにはこう書いてある。「現在信仰を受けている全神々の合作による試練」と。
必要な部分を抜き出すと、「現在信仰を受けている全神々」となる。ここで特に注目してほしいのは、「全神々」って部分だ。もっというなら「全」の部分。
うん。分かったかな。そうだよ。
「やるでしょう。むしろやらない訳がありません。忙しかったのか理由があるのかは知りませんが……何で、「邪神が対象外になっていない」んですか。頭が痛い」
そんなもん。
あのゲテモノピエロが、食いついて来ない訳が無いだろうが!!!
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