第357話 16枚目:祭り開催

 さて「魔王候補」こと通り名持ちの4人をメインとしてクランを結成し、「第一候補」に任せてクランの仕組みで合議制と言うものを採用。要はトップの権限が複数のメンバーに分散しているもので、そこに4人+1枠を設定して登録を完了した。

 第三陣の「引き」によっては枠を増やすかもしれないが、それは権限を持つ全員が同意すれば変更可能なのだそうだ。そしてそれぞれの護衛は各々の直下扱いで登録して、これで少なくとも私達をクランへ勧誘する動きはストップ出来る筈である。


『通常はクラン所属である事を示す、共通の装備を作ったりする物であるが……』

「せめて全員が【成体】以上になってちゃんと【人化】出来るようになってからにしません? というか、して下さいお願いします」

「まぁ~、「第三候補」と「第一候補」はねぇ~」

「あっははは! いいぞ!」


 作るとしたらクラン名に合わせて王冠になりそうだし、その辺私は竜族と合流してからの方が良さそうな気配もするしな……。

 という訳で、それぞれに分かれて片っ端から掛けられる声に「クラン作ったんで」と返答して騒ぎを収めていく。反応がまた激しいが、それはもう仕方ないな。

 物損を出した召喚者プレイヤーがお縄となって連れていかれるのを見送り、ようやく一息ついた。当初の目的も達成できたし、これは谷底に戻ってレベリングか?


「……なんてのんびり過ごせる訳がありませんでしたね」


 うん。

 ちょっと考えれば分かる事なんだけどさ。自分の所に入って貰えないなら相手の所属になってしまえばいいじゃない、って皆発想を変えるよね。文字通り、クランへの参加希望申請が山のように届いたよ。いやぁ私達は人気者だなぁ(棒読み)。

 ……とはいえ、放置する訳にもいかない。片っ端から却下しても良かったのだが、それはそれで角が立つ、という事でどうしたかというと。


「なんかいい感じに出汁として使われた気配すらあるんですが」

「まぁ、ここまで盛大になるとな……」


 『スターティア』の南には草原と森が広がっている。のだが、どうやら木材を採ったり交通の便をどうこうっていうので、森が切り開かれて草原が拡大していたらしい。

 そちらへ移動して、いつの間にか合流した大手クランも参加しての、一大合同面接会みたいなものを開催する事になったのだ。もちろん主催は『本の虫』の人達である。

 ……私は知らなかったのだが、どうやら第三陣が来るに際して、クランのランク上げ条件が緩和されていたようだ。それが年末年始イベントでクランとしての行動が必要なのではないかという憶測を呼び、元々勧誘合戦は激化していたらしい。


「そこにうかうか突入してしまった、というのも原因ではあるんでしょうけど」

「けど、こうなった以上もうどうこう言ってもしょうがないな」

「それはそうですが」


 という事で、『アウセラー・クローネ』の人事権は分散したまま、各々の判断で新規加入者は選んでいい事になった。ただしその責任は加入を許可したものが全面的に負い、原則としてその直下に編入されるという事になる。

 え、私の加入許可条件? エルルかサーニャとの手合わせで、最低限善戦する事。今はサーニャのターンなので、エルルが私の側に居て、護衛兼審判をしている。現在までの通過者? ……ははは。

 いつもの任せっぱなしなのだが、今回のこれは下手すれば12月に入るまで続くことが分かっている。だから交代で休めて、かつずっと対応できるエルルとサーニャに任せるのがベストだと判断した。


「……。(前に出るなって盛大に怒られたばかりだしなー)」


 まぁそういう訳なので、向こうしばらくのログインは、エルルもしくはサーニャと加入希望者との模擬戦(というにはかなりガチだが)を眺めながらお茶をする事になりそうだ。

 私が手合わせの結果無視で加入させてもいいかなって思うのは、うちの子と魔物種族プレイヤーぐらいだしな。そして彼らなら実際手合わせしてもちゃんと結果を残すだろう。だから、特に心配はしていない。

 ……そもそも魔物種族プレイヤーは大人気だから、こっちに合流する可能性は薄そうなんだけどね。

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