第314話 15枚目:認識外の種族
たぶん……でしかないけど、カテゴライズするとしたら物質系の種族、という事になるんだろう。だから大別で言えば魔物種族の筈で、使うとしたら【魔物言語】の筈だ。
が。それならネレイちゃんが話を出来ている筈だし、『本の虫』の人達がその辺を試していないとは思えない。あの人たち【共通言語】と【魔物言語】どころか【古代言語】や【神話言語】まで
その上で「第四候補」がこちらにヘルプを出し、それが『本の虫』の人達に通ったって事は、言語スキルじゃ通じなかったって事だ。
「うーん、一応確認ですが、ある限りの言語スキルは試したんですよね?」
「したした、超した。『本の虫』の人達が言葉も文字もある限りの記号も全部試してた。なんか読み取りと聞き取りは上手くいってるっぽいんだけど、向こうからの反応がそれでも全く理解できないのが問題」
「なるほど」
やっぱりな。検証班の名は伊達ではない。その辺は全部試した後だったか。まぁ、だから一般通常魔物種族に対しての好感度とかその辺が種族的にガン高な私に声がかかったのだろう。
……とはいえ、一生懸命に何か伝えようとしているのは分かるんだが、うん。何を伝えたいかはさっぱりだな。エルルを振り返ってみるが、こちらも首を傾げている。未確認種族か。
耳を澄ませてみると、なんかパキパキシャリシャリ、氷がぶつかったりこすれたりするような音は聞こえるんだけど、これも言語じゃないだろうし……いやまさかこれが声の代わりか?
「何か言いたいのは分かりますし、それっぽいかも知れない音は聞こえるんですが意味は取れないんですよねぇ……」
「え、音? なになに「第三候補」何が聞こえてんの?」
「こう、パキパキというか、シャリシャリというか。氷がぶつかったりこすれたりする感じの高い音ですが……うん?」
「うん。それ俺ら聞こえてないから。完全無音だから」
「……エルル?」
「その音は聞こえてるが意味は分からないな」
おっとー。種族特性(ステータスの暴力)か何かの適正か分かんなくなってきたぞ? だがしかし、とりあえずこの音が声の代わりというか、声で良さそうだ。問題は小さい上に結晶のあちこちから鳴ってるって事だけど。
……というか、こういう関係だと私より「第一候補」の方が適任だったんじゃないかな。え、“破滅の神々”関係で忙しいから呼び出すのは無理だって? そうかそれはしょうがない。
しかしなんか緊急度が高い感じがしなくも無いしなぁ。一生懸命な空気だけは伝わってくるから。内容はさっぱり分からないんだけど。……これはやっぱりテイムしかないか? 現地住民ではあるだろうから、【契約】じゃなくて【絆】で合ってるだろうし。
「あ」
「わっ!?」
「?」
とりあえず手を差し出してみるか、と決めた所で、エルルと「第四候補」が声を上げた。そちらを振り向くと、何やら私の背中あたりを見ている。え、何。
しかしその視線が移動した先は、私の頭の上だ。見えないんだけど。ねぇ。見えないんだけど? ……まぁ重さとかは感じないから、小さいか軽いかのどっちかだろう。視界の端に『本の虫』撮影班の人がポップ、じゃない、待機したのが見えたので、そちらを認識してカメラ映りをONにしておく。
……うん。何か、この浮かぶ雪の結晶と、私の頭の上に居る何かが会話しているようだ。おかしいな。間違いなく当事者の筈なのに何が起こってるかさっぱり分からないぞ?
「あー……そうか。そういう事か」
「何が分かったんだいお世話係君?」
「護衛って言ってほしい。違う。あの浮いてるのの正体。通りで聞き取れない筈だ」
「だって護衛って言うかお世話係じゃん。子守りドラゴン君?」
「待ってその呼び方こんな場所まで広がってるのか!?」
その状態が続いている間に、エルルはなんか色々察したらしい。そして「第四候補」に遊ばれていた。……
さてそんな会話を聞いていると、どうやら私の正面と頭の上での会話には何かの決着がついたらしい。雪の結晶が良く知られた六角形のアレになり、そこから、白い光の粒のような物がいくつか、ふわふわと漂い出てきたのだ。
私の近くまで来てくるくる回っているその光の粒に、これは触れという事か? と若干首を傾げつつ、受け取るように両手を揃えて出してみる。どうやらそれは正解だったようで、その光の粒たちは私の手のひらへと着地した。
[氷の精霊との契約が成立しました
スキル【氷精霊魔法】を習得しました
スキル【精霊言語】を習得しました]
精霊。
なるほど、この雪の結晶は氷の精霊だったようだ。今の習得アナウンスからして、精霊と会話するのに必要な言語スキルはまた別であったらしい。なるほど通りで話が通じないというか聞き取れない筈だ。
…………待って精霊!?
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