第313話 15枚目:新たな出会い
うん? 結局あの鮫の姿をした海の神は何の神だったんだって? ……「一本釣り漁」の神だったらしいよ。北の人魚族の神官さん達が文字通り泣いて喜んでたよね。また脱水でぶっ倒れなきゃいいけど。
そんな訳で
これがどういう事になるかというと、その存在が噛んでいると広く知れた途端に一般
「ははは。特級戦力に頼らず解決できるならそれに越したことはありませんからね? 団結の為の敵役としては100点満点でしょう」
「通常だと、そのように団結した集団は脆いのが通説なのですが……これは、崩れる様子が見えませんね。嬉しい誤算です」
いやぁ、お陰で元渡鯨族の街の復興というか、防壁の作成と武装の準備が早い早い。私もエルルとサーニャ込みで多少は手伝ったけど、何というか、マンパワーの本領を見たよね。
もちろん私は平日なので土日を除けば夜しかログインできないし、実際私が
けどまぁ、私が居なくても普通にエルルとサーニャは動ける訳でさ。あの熱湯の濁流にしたって『本の虫』の人達の指揮で人数が集まれば、まぁ出来なくは無いんだよね。
「……儀式の場所が、悉く海岸線というのも気になると言えば気になりますが」
という訳で、イベント開始から10日経過現在だ。
まだ今の所スタンピートもどきの襲撃はポリアフ様の雪山と竜都跡、そして元渡鯨族の街に集中しているが、北の人魚族の街の防御も固めているし、小人族の人達の移動は進めている。
一応は3分の1が経過した訳だが、途中でスタンピートもどきがあったから正直出現率が上がっているかどうかの実感は無い。だってあの街が落ちるんじゃないかって規模と比べたら、ねぇ?
なんて思っていると、ウィスパーの着信。うん? 「第四候補」?
『はい、何でしょうか「第四候補」』
『あっ「第三候補」! 悪い今のとこ一番【絆】スキルのレベル高いのって「第三候補」で合ってたっけ!?』
『今の所私を越えるレベルに到達したという話は聞いていませんから、たぶん私が一番高いんじゃないでしょうか。何か出てきましたか?』
『うーん!! 出て来たって言うかやって来たって言うか、えーと、うん! 『本の虫』の人達には話し通しとくから、女神様の山に出来るだけ早く来てくれると色々助かるっていうかスムーズにいくかなって!』
『……さっぱり話は見えませんが、緊急度が高そうというのは理解しました。動けるようにしておきます』
『よっろしくー!!』
珍しいな、と思いながら応答すると、そんな内容がありそうで無い話だった。しかし何の話だ? 高レベル【絆】が必要でやって来たって事は、また何か言葉の通じない現地住民でも発見したのだろうか。
結局この大陸に残っている種族の数も分かってないからなぁ……。と、思いつつ、書いていたお札を仕上げて生産道具をしまう。いや、うん。やる事が無くて。ちなみにお札の合成はエルルかサーニャが見てる間しかやっちゃダメって事になった。
いずれにせよ長距離移動なので、お城の屋上でドラゴンポートになっている場所の1つへ移動する。いつものパターンならエルルが迎えに来てくれる筈だけど。
『何か移動してくれって言われたけど、またなんか問題か?』
「情報はほぼ無いので当てずっぽうですが、多分また言葉が通じない系の種族との遭遇ですね」
『へぇ、まだ他に種族が居たのか、この大陸』
「みたいですね」
安心と安定のエルルだったので……どうやら背中の簡易籠の争奪戦がエルルとサーニャの間で時々起きているらしい……そんな会話をしてさくさく移動する。やっぱり空を移動すると速いよね。
「第四候補」が大分除雪を進めたので、一番高い山の稜線は見えるようになってきた。その山のふもと付近に降りて、そこから移動用に「第四候補」が作った氷のブロックと雪で出来た通路を移動する。
時々「第四候補」の手駒である雪だるまとすれ違いつつ万里の長城的な通路を移動して、ポリアフ様の神殿へと顔を出す。さて、何が来たのかなー?
「……うん?」
「ん?」
「あっ!? 「第三候補」来た! 仕事が早くて助かる!」
「るみちゃ、いらっしゃいー」
そこに居たのが、まぁ「第四候補」とネレイちゃんはいいんだ。その周りで神官服っぽい格好をした小人族の人達がうろうろしているのも普通だ。『本の虫』の人達がいつものゆったりしたローブ姿で動き回っているのも通常運転。
女神様達の姿は今は見えないな。休んでいるのか他に何かやっているのか。「第一候補」は“破滅の神々”関係に対処する都合で北の人魚族の街へ戻っているのでここには居ない。それはいいんだ。
エルルと揃って首を傾げた、その理由は何かって言うとな。
「……「第四候補」。出来るだけ早く来てほしい用事と言うのはまさか」
「はっはっはー、その通り! ぶっちゃけもうお手上げなんでコミュニケーションよろ!」
ネレイちゃんと「第四候補」と、三角形を作るような位置にあった……いや、居た、でいいのか。その「なにか」に一度視線を向けて「第四候補」に確認を取る。そうすると、いつもの笑い方にちょっとやけっぱちが入ったような声で肯定が返って来た。
あーなるほど、とあの要領を得ないウィスパーに納得しつつ、もう一度その「なにか」に視線を戻す。うん。反応があるのも分かるし、たぶん何か言いたいことか聞きたい事があるんだろうなっていうのは分かるんだが、これは、まぁ、うん。
きらりきらり、神殿に入ってくる光を跳ね返しながら一生懸命何かを伝えようとしている……んだと思うその「なにか」は、そうだなー、一言で一番近い物に例えるなら……。
直径50cmぐらいの、赤い球体を中心にしてその形をくるくる変える、雪の結晶、だった。
……雪国につきものな感じの、ザ・ファンタジーな種族なのは良いんだけど、これ、そもそも音声が無いのに話とか、できるのか……?
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