第315話 15枚目:精霊の話
以前にもちらっと説明したが、精霊と言うのは「世界の魔力の化身のようなもの」であり、平たく言えばそこら中に居て、魔力を対価に細々したことをやってくれる便利存在(竜族の認識)だ。
で。私は【吸引領域】の影響で精霊から避けられている。避けられまくっている。それこそ、気配を感知する事も出来ない程に。……意思がある相手は吸収しないように設定をいじったんだけどな。
まぁその、精霊だ。ガッツリ非実体存在の筈の精霊だ。何で目に見えて何なら触れそうなぐらいしっかり実体があるんだろうね?
「……もしかして、多数の精霊の塊って事ですか、この雪の結晶」
「だと思うぞ。流石に何百って数が一度に喋ると俺も聞き取れないし」
「そんな単位なんですか?」
そしてまぁ、私の背中あたりから現れて頭の上に移動し、雪の結晶こと氷の精霊の団体さんと話をしていたのは、まぁ大体分かるが空間の精霊だった。今までずっと近くには居たらしいよ? 姿を見せる気は微塵もないみたいだけど。
え、氷の精霊が何で私との契約に応じた……つまり近くに居る事を了承したかって? あぁうん、空間の精霊が氷の精霊を守る事で話を着けたんだってさ。ははは。私は相変わらず危険物かそうか。……ちょっと心にダメージが入るが、まぁ仕方ない。
さて【精霊言語】が入った以上、耳を澄ませていればだんだん何を言っているのかが聞こえるようになってくる。私と契約してくれた光の粒、もとい氷の精霊の言い分を纏めると、だ。
「……北にある氷がしばらく前に突然現れた何かに食われているって、かなりヤバいのでは? “破滅の神々”の気配こそ無いとはいえ、他に原因なんてありませんよね?」
「……だろうなぁ……」
やっっっぱり何か仕掛けてきてやがったよあのゲテモノピエロ。おかしいと思ったんだ。だってスタンピートもどきを起こす為の儀式場が、悉く大陸の南3分の2にある海岸線だったんだから!
目立つ騒ぎを起こしてそちらに注目を集めている間にこそこそもっと大きなことをするって言うのがあいつらの常套手段なんだから、絶対なんかやってるとは思ったけど案の定だよ!!
「ほんっとに、油断も隙もあったもんじゃないですよ。さてはこの大陸に来れるようになって最初の1ヶ月が大人しかったのはこの準備をしてましたね?」
「うわー、「第三候補」がそこまで明確に敵意を見せるのって他に居ないんじゃね? 見敵必殺な空気なんだけどそこまでえぐい相手なんだ?」
「大嵐関係のスレッドやまとめを参照で」
なおエルルも頭が痛いって顔をしているし、ネレイちゃんもちょっと震えているのでその厄介さはこの場の空気を見れば分かるだろう。ネレイちゃんおいで、よしよししてあげる。ここは大丈夫だよー、女神様のお膝元だし。
厄介事が判明したところで問題になるのは、環境だ。だってまだ【環境耐性】が育ち切ってない、というか、【環境耐性】だけではどうにもならない場所だからね。
カンストした【環境耐性】の上に装備を揃えてもまだ寒くて動きが制限される、それが恐らくこの世界で最も北に位置する氷の大地だ。だから他の耐寒能力を上げるアイテムかスキルか、そもそも氷の大地に適応した種族でないとそもそも向かう事すらできない。
「……あ、だから契約に応じてくれたんですか?」
「お嬢?」
「あぁいえ、氷の精霊さんから、魔力を貰えば寒さを軽減する膜を張れると話がありまして」
「あぁなるほど。スキルになるとそこまで出来るのか」
と、言う事らしい。これは“破滅の神々”関係って事もあって【吸引領域】はしばらく全面封印だな。ちなみにエルルは精霊関係についてのスキルは持っていないとの事。だからそこまで細かかったり出力のいる事は出来ないんだってさ。
もちろんこれらの会話を聞いている『本の虫』の人達もバタバタと動いている。相手が相手だからね。急いで何とかしないと、いつ何が手遅れになってもおかしくないし。
……しっかし、本当に碌な事をしないなあのゲテモノピエロ。いやその目的と思想は分かってるしそこからすれば妥当極まるんだけど。しかしいくら寒さを軽減する膜を精霊さんが張れると言っても、流石に私だけでは無理があるだろう。
「……「第五候補」からの書き込みも無い、ということは、対処で忙しいんでしょうかね、これ」
「あー、確かに書き込み減ってるってか無くなってるな? え、何、そんな大事になりそうな感じ?」
「下手しなくてもこのまま世界終了の可能性があります」
「わぁ本気で滅亡を目指してるのな!? 緊急事態了解した!」
そしてどうやらそのタイミングで、過去のまとめを見ていた「第四候補」が戻って来た。とは言え私達で勝手に動く訳にはいかない。そろそろカバーさん辺りから指示が来ないかな?
しかし氷を食べる「何か」ねぇ……。運営が用意したこの大陸の問題については、雪を降らせて積もらせる原因が2つ。この大陸の渡鯨族の行方。同じくこの大陸の神々の行方。この4つだ。
神々の行方については現在進行形で解消中。雪を降らせて積もらせる原因は、恐らくその片方は東側に存在する流氷の山脈で、もう片方はアザラシ達の話にあった「何か恐ろしいもの」である可能性が高い。で、あれば、だ。
「……アザラシ達の言う「何か恐ろしいもの」が動いたか、それとは別か、影響があるのかないのか、それによって難易度が激変するんですよねぇ……」
ほんっとに。
運営が用意した問題だけでも大概手いっぱいだって言うのに、これ以上問題を増やしてんじゃねーぞ、あのゲテモノピエロ。
……割と本気で、あの直接対峙した時に、後の影響とか考えずぶん殴っておくんだったかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます