第306話 14枚目:イベントのお知らせ

 さて忙しく動いていれば時間が過ぎるのは早く感じるもので、リアル9月末がすぐに来た。学校は文化祭とか体育祭とかどうしたんだって? まぁそれはそれでそれなりに頑張ったよ。ゲームをする時間を減らすほどじゃ無かったってだけで。

 それぐらいには頑張ってようやく、小人族の集落で女神様4姉妹の像が運ばれてない場所が数えるほどになった頃には、もう次のイベントのお知らせ大神の啓示が来てたから、やっぱりこれ忙しかったな?

 現在はどうにか小人族の集落を回り終えて小休憩中だ。そして久々にフライリーさんとルチルに合流できたんだ。のんびり確認と行こうじゃないか。


「しかし2人共、すっかり何だか定位置になってません?」

「帽子がふかふかで居心地良いっす!」

『肩より安定するんですよねー』


 まぁその2人の姿は私からは見えないんだけどね。何せ頭の上なので。周囲のスクショを取ろうとする動きが激しいから、絵として可愛いのには異論ないけど。

 さて、とお知らせを開いて確認してみる。なーんとなくうっすらそれっぽい予感はあるけど、実際のイベントはなんだー?


「……バリッバリな戦闘イベっすね?」

『ですねー』

「……あー……」


 なお順に、フライリーさん、ルチル、エルルだ。うん。あれかな? 予感的中って言ったらいいのかな?

 ざっくりとした内容はフライリーさんの感想を参照。もうちょっと詳しい事を言うと、この大陸及び周辺においての大狩猟祭だ。討伐目標がモンスターであり、捕獲目標が野生の動物となる。

 期間中はモンスターから特殊なドロップが発生するようになり、【絆】無しでも弱らせた相手をテイムするアイテムが作成可能になるとの事。さて、それじゃバックストーリーを確認しよう。



 調査によって明らかになった新たな大陸の現状は、神々に深い困惑をもたらした。一体何がどうなればそうなるのか、その肝心の部分を誰も語る事が出来なかったという事も要因の1つだろう。

 この大陸に根差した神に聞こうにも、その神もまた弱体化が激しく調査を行う余力は残っていない。召喚者に調査を続けさせようにも、本来の生息域を無視して闊歩するモンスターや獣によって阻まれる。

 ならばどうするか、と神々は話し合い、その調査の障害になっているものを逆に利用し、神の力を回復させることに注力する、という結論で概ね合意。その方法と合わせて、召喚者に託宣を下したのだった――。



 ……ほら、ポリアフ様の神殿で「第五候補」に伝言どうしようかって悩んでた時に、ちょろっと話に出たじゃない。そう、元ネタとなってる神話には、先祖の霊が動物の姿を取って守護神として現れる話があるっていうやつ。んで、実際ポリアフ様がやってくれたじゃない。あれだよ。魔力持ちの動物は「器」だから、そこに先祖の霊を降ろせば守護神の復活になるってやつ。

 特殊ドロップっていうのは「祖霊のよすが」って言う結晶の見た目をしたアイテムだって。動物を【絆】無しでも一時的にテイム出来るアイテムは「雪衣の紐」っていう、雪みたいに白いロープだってさ。

 イベント期間は丸ごと1ヶ月。期間中はこの大陸におけるエンカウント率が上昇して、イベントが終わりに近づくほどその上昇率は上がるらしい。あと、今回もしれっと付いて来ていた勝負の内容は、その特殊ドロップと捕獲した動物の数で競うとか。


「まぁつまり、動物の姿をした守護神を増やして、文字通り過去の人に過去の事を聞こうって話ですよね。ついでに下位にあたる神を増やすことでその上に来る神々の力の足しにしようと」


 ははは、だから女神様の依頼で女神像のセットを頑張って運んだあの忙しさに繋がる訳だな? まぁうっすらそんな気はしてた。だって10月って言ったらハロウィンじゃん。

 あれって西洋式のお盆みたいなもんだし。お盆なら死者が帰って来ても何ら問題ないな? そして戻ってきたところで神様にお仕事振られたらそりゃ働くしかないでしょ。


「あれ? でもそれなら動物も討伐で良くないっすか?」

「フライリーさん。まだ【解体】の普及率は2割ぐらいなんですよ」

「そうなんすか!? 実際の作業はそこそこ大変すけど実入りは多いっすよね!?」

『内臓とか見えちゃうのが、結構ダメな方が多いみたいですねー』

「あんなもん慣れだけどな。後は綺麗に倒す自信が無い奴とかはあえて取らないとか聞いてるが……」

「あぁぁそうか普通はグロってダメなもんすね!? そしてドロップ品だとどんな戦い方しても最低限の収入が保障されるっすもんね!?」

「まぁそういう事ですね。私は慣れましたし、たぶん実際やってみたら割と慣れると思いますが、強要は出来ませんし」


 っていう事で、器となる身体は綺麗な方がいいから動物は捕獲推奨なのだ。住民ならまず【解体】を持ってるからね。それに魔力の有無は見た目じゃ分からないし。

 【鑑定】はそれなりに普及しているようだが、レベル上げが苦行って事で一応念の為に持っているがほとんど上がっていない、というプレイヤーは結構多いようだ。低レベルだと、咄嗟にはそこまで詳しい事は分からないからねぇ。

 だからあえて動物とモンスターで対応を分けたのだろう。動物かモンスターかぐらいは(あの区別が明確になったアプデ以来)【鑑定】が低レベルでも分かるようになったから。


「まぁ頭数と信仰による力が増える事は歓迎すべきですし、割と急務な可能性があります。動き方は全体の流れを見つつバランスを考えて、ですが、私は【絆】のレベルが高いので捕獲に回った方がいいかも知れませんね」

「あ、すんません先輩、流石に【絆】は持ってないんで今回はモンスターの討伐側に回るっす」

『今までの様子を見てる限りー、討伐に回る召喚者の方は多いんじゃないでしょうかー?』


 まぁ戦闘イベって言われたら戦闘するよね。

 これは、捕獲三昧なイベントになるかな?

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