第307話 15枚目:イベント開始
さてそんな訳でイベント開始だ。現実でもそろそろ防寒具が欲しくなってくる中で日常を過ごしてゲームへログイン。今のところの討伐数と捕獲数はどんなもんかな?
私の現在位置は竜都跡だ。そこそこしっかり拠点として機能し始めている上に立地が良いので、最前線に行きたい
なお、私の拠点をお城にしようと言ったのはエルルとサーニャ。お城があるならそっちに居て欲しいらしいよ。何せ皇女だから。アラーネアさんや『本の虫』生産部門の人達もノリノリになるんだもんなぁ。
「って、うわ。何このメール」
起きるなり第一声が素に戻ってしまったが、視界の端で強い自己主張を繰り返すアイコンに視線をやるなり展開されたウィンドウの、[未読:63件]という数字に対するものなので仕方ないと言ってほしい。しかし一体何が起こった?
早速イベントで何か爆弾でも見つかったか、と、とりあえず最新の、フライリーさんからのメールを開いてみる。っていうか、タイトルが「雪崩っすー!!」で既にカオスなんだけど。
…………。
「そういう事ならリアル宛にメールを出してくださいって言うんですよ!? フライリーさんあなたゲーム内からメール送れるでしょう私のメアド知ってるんだから!!」
メタ全開の叫びを上げながら防寒具一式を身に着け、そのまま、バン! と窓を開いた。お城の正面に当たる防壁と大きな門を確認して、そのまま【飛行】と【風古代魔法】の合わせ技で飛び出す。
結局何が起こったんだって? あぁうん、ほら、大狩猟祭的なイベントが10月1日から丸1ヶ月始まったじゃない? モンスターは討伐して野生動物は捕獲するってやつ。あの動物の姿した守護神を増やす目的の。
で、イベント期間中は、モンスターと動物のエンカウント・出現率が上がるって書いてあったよね。まぁ大狩猟祭だから妥当かなとは思ったんだけどさ。そう、イベント期間の残りに反比例して上がっていく確率が。
それがさ。
初日である今日現在で、既にスタンピート規模になってるんだってさ。
そうだよ。
フライリーさんを始めとして山のように来てたメール、あれ全部特級戦力である事に加えて広範囲バフである【王権領域】を持ってる私へのヘルプコールだったんだよ!!
明らかに出現ペースの調節ミスってない!? いや確かに外を歩いてたら結構な勢いで襲撃されてたけど! この竜都跡が広域避難所になってるってどういうことなの!
「――サーニャ!」
並ぶ建物の屋根を飛び石にして半ば跳ねるように防壁の大門上に到着、即座に最大半径で【王権領域】を展開し、種類も大きさも様々な雪像の群れのようなものと戦っている最前線を確認。
その先端に当たる部分で、群れを切り開くように槍を振るっている姿を見つけて、声を張った。一応届いたらしく、即座に振り向くなり、【王権領域】でステータスが上がり、盛り返しにかかった
私が来たのは防壁の中及び前後に居る
「姫さん!? ほんとに最前線に飛び出してきた!?」
「第一声がそれですか。魔法を叩き込んでないだけまだ自重してるんですが?」
「エルルリージェに怒られるから出来れば城に戻っててほしいなって!」
「それより現状の説明をお願いします。避難所になっているのは良いですが、避難状況は分かりますか?」
「冷静!」
まぁそれでも説明してくれたサーニャによれば、元々大陸の中心に位置するという事で、結構な人数の
そして大陸の北へと戻る準備をする小人族の先遣隊と、どうやら賑やかな場所が好きらしいことに気付いた人魚族の一部もその動きに合わせてこの竜都跡に移動。建物のほとんどが綺麗に空っぽなので、臨時の宿としてなかなか賑わっていたそうだ。
ところが3日程前、
「――『モンスターの群れだ!』って。で、実際この通り。他の場所の確認までしてらんない忙しさだよ! 誰だか分からないけど、防壁を綺麗に直してくれて助かった!」
「クラン『本の虫』の皆さんですね。現在も情報収集や状況把握に奔走している筈ですよ。さて、そろそろですかね」
「何が?」
約3日前、というと、リアル日付変更線あたりだろう。つまり、イベント開始のスタートダッシュを決めようと、日付変更線数秒後から即座にログインしていた組だ。
しかしそんな最初からそんな勢いでモンスターが出現していたとは、やっぱりなんか調節ミスってない? ……ミスであってほしいというか、ミスじゃなかった方が怖いっていうか。
で、何がそろそろかって、そりゃ私がログインして大規模戦闘中ってなったら、ねぇ?
「――お待たせしました、「第三候補」さん」
「お待ちしていました、カバーさん」
そりゃ当然、軍師ことカバーさんのログインが、だよ。
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