第297話 14枚目:思わぬ再会
順当にその日のログイン時間を使い切り、道のりはまだまだ遠い所でログアウトとなった。サーニャも戦闘している間はちゃんと強かったし、「第一候補」はネレイちゃんが抱えられるしで、特にかまくらを作ったりする訳ではなくログアウト。エルルに背負って貰ってる状態で。
残りのイベント時間も減っていく中、うっかりすると授業中にもフリアドの事を考えそうになっていたので、集中する。そして大体雪だるまのせいでもやもやと消化不良な気持ちを抱えたままで1日が経過した。
いつものルーチンワークという名の日常を過ごして夜になれば、ようやくのログインだ。内部では約3日半が経過してる筈だが、状況はどうなってる?
「……おや、流石にかまくらを作りましたか」
どうやら仰向けに寝ているらしい、と気づいて、むくりと体を起こす。体の下にも上に毛布が掛けられていて、
一応フレンドリストを確認するが、どうやら「第一候補」はまだログインしていないようだ。となると、今
「まぁとりあえず、エルルかネレイちゃんに話を聞かなければ」
サーニャが除外された理由? 話が進まなさそうだから。
そんな事を考えながら氷のブロックに毛布をかぶせたベッドから降りて、かまくらの出入り口へと向かった。……あれ? その向こうにも氷のブロックが続いてるって事は、ちょっとした建物ぐらいにしっかりしたかまくらなのか?
一時的な臨時拠点にそんなすごい物を作らなくても……と思いつつ部屋から出る。どうやら角部屋に当たる場所だったようで、廊下を進める方向は1択だ。そのまま進んでいくと、何か楽しそうな声が聞こえて来た。うん? 片方はサーニャだけど、もう片方は誰だ?
「サー……」
途中で開いていた部屋の出入り口は軽く確認するにとどめ(空っぽだったから)、声が聞こえる場所へ顔を出す。何かえらく楽しそうに話をしているみたいだけど、一体誰だ?
と、思ったら。
「あっはっはっはっはっは!! 忘れ物されたとかマジウケるんだけど!!」
「そこまで景気よく笑い飛ばされると一周回って気分がいいな!! 結局臨時とはいえ皇女様付になれたから、流星が手の中に降って来たようなもんだし!!」
「あ、棚から牡丹餅的な? ひょうたんから駒的な? へー! そういう言い回しがあるんだ! もっと話聞かせてくれよあれっくん! ほらほら飲んで飲んで!!」
「あっははははアレクサーニャな! なんだあれっくって! いやしかしこの酒は美味いなー!!」
……めっちゃ飲み会してた。
そして、給仕はちょっと小さめな雪だるまがしてた。
エルルやネレイちゃんの姿は見えない。
「…………」
いや、と、言うか。
見覚えも聞き覚えもあるぞ、サーニャとサシで飲み会してる相手。
同時に、凄まじく色々な違和感に納得がいったけど。
「…………はぁ。アレクサーニャ?」
どうしようかなー、と思いながら、部屋の入り口から声をかける。が、聞こえた様子無いなあれ。さてどうするか。放置してエルルを探したいところだけど、それ以上にその飲み相手に物申したい気持ちもあるし。
ちょっと考える。…………雪だるまはいるが、まぁ、この程度の大きさと数なら、纏めて敵に回っても問題ないか。
という事ですたすた近づいていき、サーニャと飲み相手の背後から、その首すじを、きゅっと掴んだ。
「ぐえっ!?」
「ぎゃっ!?」
「随分楽しそうにしていましたが、名前を呼んだら気付いてほしいんですよね、サーニャ?」
「ひひひひひ姫さんいつの間に!?」
とりあえず左手で首すじを掴んだサーニャにそう声をかける。ははは、そんなに顔面蒼白にならなくてもいいじゃないか。別にこのまま首を握りつぶしてやろうかなんて思ってないんだし。
さて、と、今度は右手で首すじを掴んだ相手を振り向き。
「お久しぶりです。いえ、初めましてと言うべきでしょうか?」
「あ、あははははははは、そそそそうだな、うん! 初めまして! いや久しぶりでも間違ってないけど!」
肩までのストレートな黒髪に、血のように赤い目。周囲の雪と良い勝負の白い肌。ロリな私ですらこのまま手折れてしまいそうな細さの首は、恐らく全体に線が細いという事なのだろう。
毛皮をふんだんに用いた上質なコートに全身を包み、よくなめされた皮の手袋とブーツを着けている。しかしそれらに一切負けない程度の、つまりは人外染みたその美貌は、じっとして穏やかに微笑んでいれば、どこかの城主か領主といった佇まいだろうか。
線の細さによる儚さと、突き抜けた美しさが醸し出す妖しさ。……そして、そういう見た目の雰囲気をこれでもかと台無しにする、その言動。
「あなたが何故ここに居るのか、というか、雪だるまはお前の仕業か、とか、女神に手を出してないだろうな、とか、色々聞きたいことが、それはもう山ほどあるんですよね。これから、お時間大丈夫でしょうか? ――――「第四候補」」
「お、おおおおおおう、ばばばばば、ばっちこい!」
「ひっ、ひひひ姫さん、もしかしてめっちゃ怒ってる……!?」
「サーニャはエルルが帰って来次第怒られてください」
「ひいっ!?」
お ま え か。だよ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます