第296話 14枚目:理由推測
私とエルルは当然として、サーニャもインベントリの容量は大きい筈だ。だから、荷物が増える事は問題にならない。輸送容量で言えば、まぁ間違いなく今このパーティがフリアド最大だろう。
なので、別にモンスターや肉食動物を倒して解体して凍らせて、荷物が増えるのは良いんだ。問題はその雪の深さと、それによる移動のし辛さだろう。
「……これ、俺とアレクサーニャで交代しながら【人化】を解除して走った方が早いか?」
「嫌だぞ!? この辺ちょいちょい水場があったりするんだから【人化】を解いた状態で万一踏み抜いたら大惨事じゃすまないからな!? 【人化】してたらセーフでも解除してたらアウトとか普通にあるからな!?」
「それに、その姿が脅威だとみなされれば、あの雪だるまが降ってくるでしょうし」
『水場でなくとも、雪の深さも未知数であるしな。この襲撃頻度も問題であるし、結局全員で警戒しながら進む方が早いという可能性もある』
そりというか、小さな船でも作れれば魔法で滑らせるなり風を起こすなりして快適に進めるんだけどなぁ。流石に氷で作るのは怖い気がするし、毛皮と骨で船を作る気にはならないんだよね。そして植物は無い。
とりあえず対処療法的に、ネレイちゃんと交代で水を撒いて広がる雪を氷に変えて、その上を歩くようにしている。でないと流石にモンスターの猛攻がしのぎ切れない。足場って大事だよね。
まぁ氷だから滑るんだけど、そこはまぁ、私とネレイちゃんはしっかり防寒具を着込んでいるし、エルルとサーニャは軍服の形をした鎧だ。今のところ動きに問題はない。「第一候補」? 寒さを感じない上に独力で動けないのに何の問題があるんだ。
「しかし……雪だるまでしたよね、あれ」
『うむ。絵に描いたような雪だるまであったな』
ネレイちゃんに抱えられた「第一候補」に確認を取るが、あのミサイルかロケットのように飛んできたものは雪だるまである、というところで同意した。問題は、何故雪だるまだったのか、だ。
ネレイちゃんやサーニャが言っていたように、私達
もちろん1体2体なら、どこかの
「偶然、というには違和感が強いんですよねぇ……」
『そうであるな。そもそも、どんな偶然が起こればそうなるのか皆目見当もつかん』
エルルとサーニャが戦闘と解体をしている間に、「第一候補」と相談する。ネレイちゃんは首を傾げているが、うん、ちょっと待ってね。
「そもそもの“雪衣の冷山にして白雪”の神にしても、その状態が分からないからこうして確認に向かっている訳でしょう?」
『その状態の予想が、ほぼほぼ封印かそれに類する状態だという推測の下であるのは確かだ。とはいえ、そうでなくては現状の説明がつかぬのだが』
「そもそもこの地に来るのは私達が初めての筈ですよね。『本の虫』の人達がまとめた情報によれば、この大陸の小人族も、その大半が南側に移動しているようですし……」
『うむ。このモンスターの襲撃頻度も、他に命が無いのであれば理が通る。少なくとも、状況から言ってここに足を踏み入れたのは、我らが最初である筈だ』
「で。私達が最初で、“雪衣の冷山にして白雪”の神がその状態である可能性が高いなら……あの雪だるまは何だって話になる訳ですよね」
『そうであるな』
違和感しか無いんだよなぁ。元々いる動物なりモンスターなりなら、ネレイちゃんやサーニャがあそこまで形容に困ったり違和感を覚えたりしないだろう。つまり、高確率で
では新種のモンスターか? というのも、何かちょっと違う気がするんだよなぁ。だってあんまりにも雪だるま過ぎるから。いや、確かに雪だるま型のモンスターっていうのは鉄板だよ? 鉄板だけど、流石に脈絡が無さすぎる。
「モンスターなら、確かに「そういう性質」で納得しないとどうしようもない部分もありますが……それなら、さっきから襲ってくるモンスター達に、多少は似ている部分があってもおかしくない筈ですよね?」
『で、あるな。そう言えば細かくメモを取っているようだが、何をしているのだ?』
「生息域の調査、でしょうか。モンスターと野生動物と魔物一歩手前の動物が混在してますから、遭遇した座標と【鑑定☆】結果をオートマップにピン止めしています。ある程度まとめて『本の虫』に送れば良い資料になるかと思いまして」
『なるほど。何かそこに法則があれば北側の探索も多少は捗るであろうしな』
話がちょっと逸れたが、そうやって調べているモンスターは大体【鑑定☆】しないと区別がつかない程度に、元々この大陸にいる動物と区別がつかない姿をしている。まかり間違ってもトンチキ、もとい、雪だるまのような、完全にどこからどう見ても異世界由来、という姿はしていないのだ。
となると、その出所がいよいよ不明という事になる。私が散々言われているように、
『ふむ。現象に説明だけをつけるのであれば、“雪衣の冷山にして白雪”の神が健在であり、通信遮断或いは身動きだけが取れない状態であり、そこに何の偶然か召喚者が現れ、雪だるまの姿を教えた、とかであるか?』
「いくつ偶然が噛んでるんですか、それ。隕石が直撃する可能性といい勝負なのでは?」
『そうであるな。……それぐらいでなければまともな説明がつかんのだが』
「まぁそれはそうなんですけど」
とりあえず、ちょっとずつでも進んで距離を詰めてからの話だな。雪だるまが襲ってくるかもしれないが、その時はこの大陸から雪を一掃するつもりでかかるしかないか。
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