第287話 14枚目:旧竜都除雪
まぁそこからもひたすら雪かきだ。門を中心に掘り進めて行った結果、その左右にもそこそこの大きさの扉がある事が判明した。どうやら竜都にも人間種族の街と同じく、普段使いの門があったらしい。
……まぁ、問題があるとすれば、その門が両方「内側に向けて」壊れてるって事なんだけど。だってどう見ても何かの侵入を許してるじゃん。繰り返すが、竜族はその種族特性がステータスの暴力なんだぞ?
そこに喧嘩を売ってるんだぞ? 普通は無理だ。だから世界三大最強種族とか言われてるんだし。手を出しちゃダメだって認識になってるんだし。まぁだからつまり。
「やはり、この都市も世界規模のスタンピートに巻き込まれていたようですね」
「まぁ、だろうなぁ……」
モンスター以外には無いよね、って話だ。
分かっていたことを再確認して、人間大の出入り口があるならそちらを使おうって事で、少しずつ外の除雪も進めている。とはいえ、あくまでメインは街の中だ。
ざかざか掘り進めていくと、谷底に残っていた建物と似た感じの街並みが雪の下から出て来た。やはりあの建物群は竜都の跡だったらしい。……時代ごと街が封じられたなら、その後にもう一度街を作り直したのだろうか?
「……やっぱりだな。此処もあの谷底と一緒で、引っ越した後だ」
「つまり、ほとんど物は残っていない、と?」
「神が気候と地形を変える程の力を振るったんなら妥当極まる。それで更に隣の大陸に移動したんだろ」
そういう事で、ほとんどの建物はもぬけの空なようだ。まぁそれでもその建築様式や構造が珍しいっていうので、カバーさん達はめっちゃ食いついてるけど。
けどまぁ物がないなら、街の全体像を先に把握しようって事で雪かき継続だ。実際面積としては5分の1も行ってないし、門の近くだからか重要施設っぽい建物が見当たらないんだよね。
しかしマンパワーが足りないな。私も結構手際が良くなってきたと思うんだけど、うん、手数が足りない。
「これ、水をぶっかけて氷の塊にしてから外に放り出したらダメですかね」
「建物が壊れる危険があるけどな。もちろん水の路もどうなってるか分からないから、気温を上げて溶かすのも無しだ」
手抜きはダメなようだ。まぁ妥当なんだけど。
放棄されていても街は街なのか、防壁の内側にモンスターや野生動物が出現することは無かった。外側から防壁を掘りだそうとしているチームの方には時々襲撃があったみたいだけど。
せっせと雪のブロックを切り出すようにして除雪を続ける事、現在でリアル5日ほどだろうか。途中の土日で大きくブーストをかけられたとはいえ、この街広い。ほんと広い。都の字が付くのは伊達でも何でもなかった。
それでもエルル曰く首都ではないそうなので、どれだけ広大なのか今からちょっと恐ろしいぞ? 主に迷子になりそうって意味で。だって野良皇女だからどうせいつか行くことになるだろうし。
「そうか、雪国なのに屋根が普通だなと思ったら、雪かきが手間ではないって事ですか」
「うん?」
「こう、屋根に傾斜をつけて雪が滑り落ちるようにするとかいう工夫が、元の世界の雪深い地方にはあったもので」
「あぁなるほど。まぁ確かに手間でも苦労でも無いからな。外が普通なら、押し固めてから放り出すとかも出来るだろうし」
との事なので、余計に雪国らしさというものがないようだ。いや、あんまりにも記憶にある通りすぎるからちょっと気になって。もちろん今は壁の外に『本の虫』の人達がいるからやらないよ。
建物の作りとしては、石組の基礎に木造の建物が立っているのを基本として、丈夫さが必要な部分は石で、遊んだり特徴を出したりしたい部分は木で作られているようだ。窓枠とその下だけ石で作られてるとか、煙突だけが石であとは木とか。
まぁその煙突もあったり無かったりするから、総合して建物の形としては大分様々なものが並んでいる。それでもちゃんと計画されていたようで、通りや家同士の間はしっかり空いているのだ。
「木材が豊富に使われているって時点で、元々はここまで真っ白な大陸では無かったっていう証拠になりそうですけど」
「そうですね。壁の内外に畑とそこへの行き来専用らしい扉も発見されましたので、少なくともこの周辺は耕作が可能だったようです」
という事だ。エルル曰くの「引越しした後」なら、文献や道具が残されてはいないだろうけど、空き家を宿として活用する事で、ここに
……竜族が異変に気付いて帰ってきたら、まぁその時は私が矢面に立つさ。そもそも、街自体が放棄されているなら問題ないと思うけど。
しかしほんと広いな。竜都の除雪だけでイベント期間が半分近く吹っ飛んでるんだけど? いや確かに、街並み自体がポイント的には結構おいしいけどさ。ポイントは入れど情報は入らないんだよねぇ……。
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