第285話 14枚目:捜索相談

 で、何で私の方に話が飛んできたかというと。


〈そう。違う大陸に縁を持つの。……なら、あの女がお姉さまに正面からの喧嘩を売る事を阻止していたあの街も、お姉さまの衣の下かしら〉


 どうやらこの大陸には、いや、この大陸にもというべきか。竜の都市があったらしい。私の初期地点だったあの谷底も封じられた竜都だったし、大陸に1つずつあるのかな? しかし女神達の正面喧嘩を阻止か……抑止力だなぁ。

 そのまま「第一候補」が聞きだしたところによると、カクカクした雪だるまの形をしたこの大陸の、上下の丸がくっついているところに竜都はあったらしい。完全に門番か何かだな。


〈まぁ、探すなら探してみなさいな。私は休むわ〉


 そしてひとしきりの会話を終えて、ぱしゃん、という音と共にワイアウ様は水へと戻った。……だけでなく、祭壇の窪みに溜まっていた水が、勝手に横のひょうたんへと収まっていく。

 最後に、きゅっ、と蓋も閉めていったので、これは言葉通り、しばらく起きないだろう。ゲーム的に言えば、フラグに必要な情報は出尽くしたと言ったところか。

 まぁそれでもしばらく「第一候補」は小人さんと話していたから、今後の事でも話しているのだろう。私としても、捜索目標が女神様の話に出て来ただけで3つ、出てこなかった分も含めると6つも増えてどれから手を付けたものか判断できないし。


『ふむ。大体分かった。では、情報の共有と行こう』


 カバーさんとパストダウンさんも何かメニューを操作して作業しているし、エルルもエルルで微妙に眉間にしわが寄ってるし、って事で大人しく待っていると、話し終わったらしい「第一候補」がこちらに声をかけて来た。

 小人さんはその場に残り、ネレイちゃんは普段着に着替えてから、副神殿に行く前に集まった部屋へ再集合。さて、相談しようか。


『まずは先程の小人だが、本人曰くは小人族だそうだ。もっとも、最初の大陸の小人族と比べれば違う点は多々あるがな。その辺りはこの大陸に適応して変化した、という事だろう』


 あの小人さんは小人族で良かったらしい。つまり、一応は人間種族だ。……その割には言葉がアレだったのだが、どうやらあまりにも閉鎖的な環境に置かれた為、【共通言語】の必要が無くなり、同族にしか通じない言葉になったのだろう、と「第一候補」は推測していた。なるほど。

 で。彼らは一応この大陸全域に点々と村を築き、村同士であれば交流があるらしい。相変わらず上空からはさっぱり見えないが、こちらは雪に埋もれる前から、地面に穴を掘って石を組み壁と柱を作る地下生活をしていたようだ。

 ……なお、北の人魚族との交流は無い。ほぼ一切無かった。だって初遭遇の時、オープさんもネレイちゃんも、相手が交流可能種族だって分かってなかったからな……!


「うぅむ、我らも、もう少し外へ関心を持つべきでしょうな……」

『まぁ、村の位置に関しては彼の村の場所を聞いた故、そこから話を聞き、信頼を得て、順番に村巡りをしていけば、いずれ何処に村があるのかは分かるであろう』


 種族単位の引き籠りはこれだから……。というのはさておき、小人族の村についてはカバーさんとパストダウンさん、というか『本の虫』の有志及び一般召喚者プレイヤーにお任せで良いだろう。

 で、ワイアウ様の話に出て来た、ワイアウ様の姉妹神の捜索。これもまた小人族の村巡りと並行してやればいいだろう、という事になった。というのも、姉妹神の方も神器に宿って眠っているなら、それを守っているのはこの大陸の小人族である可能性が高いからだ。

 そして残り3つの内、「お姉さま」と「あの女」についてはもうちょっと情報が出揃うまでそっとしておくことにした。せめてワイアウ様の姉妹神が揃ってからの方が(フラグ的にも)いいだろう、という事だ。まぁ確かに。


『そして竜都だが、「第三候補」』

「当然、エルルと向かうつもりですが……流石に私達だけだと手が回りそうにないんですよね」


 あと、私が野良皇女って事で、なんかフラグ踏みそうなんだよね。そうなったとき、私とエルルだけでは色々不足な感がある。せめてカバーさん及び『本の虫』の人達についてきてほしいのだが、こちらの大陸の小人族に手を取られるのは分かり切っているしなぁ。

 それに、フリアド独自の解釈という意味では重要かもしれないが、元ネタには存在しない。だから神話的、あるいはイベント的な重要度が今一掴みにくいというのもある。

 まぁその辺りは皆分かってくれたようで、そこから相談する事しばし。


「え、先輩、ほんとにルチル先生お借りしていいんすか?」

「ルチルがそっちに行きたいというのだから大丈夫ですよ。……なんかフラグ踏んだ場合、何処に何がどう影響するか分かりませんし」

『その辺りは、我も神殿に行く以上強く言えぬであるしな……』

「ではパストダウン、村巡りの案内と調査、広報はよろしくお願いします」

「カバーこそ、竜都という重要史跡の調査及び解析をよろしくお願いします」

「人数が集まり次第運べばいいんだな?」

「そうですねー。エルルさんもごしゅじんもお気をつけてー」

「るみちゃ、きをつけてねー」


 フライリーさんとルチルは、『本の虫』及び一般召喚者プレイヤーと一緒にこちらの大陸の小人族の村巡りへ。パストダウンさんは村巡りに関する情報の統合と解析を。

 竜都に向かうのは私とエルルとカバーさん及び『本の虫』から調査隊1チーム、「第一候補」は『本の虫』の別動隊と山の神様の祭壇の調査へ、ネレイちゃんとオープさんはあの小人族の神官さんと話をして、【共通言語】の特訓をする。という事になった。北の人魚族の神官さん達? 「第一候補」曰く、『今は自己反省……まぁ、自習だ』との事。

 ん? 竜族に関する事ならエルルが何か知ってるんじゃないかって? あぁうん、もちろん相談の途中で聞いてみたよ。


「あー……大体の位置は分かるんだが、中身はほとんど何も知らないに近い。悪い」


 との事だ。うーんこの、微妙に奥歯に物が挟まったような言い方。何かあるのかな、ここの竜都には。エルル個人に関する事かも知れないけど。

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