第251話 13枚目:事態収束
『ともあれ、我のやるべきことに変わりはない。クレナイイトサンゴから“破滅の神々”の権能を引き剥がさねばどうにもならぬ』
「そうですね。エルルは引き続き氷山の拡大をお願いします。打ち上げにかき氷パーティと行きましょう」
「この寒い中でか。いやまぁ建前って言うのは分かってるんだが……お嬢は?」
「ここに居ますよ。護衛再びです。流石に大神の加護越しであれば、クレナイイトサンゴの特性は使えても、本体が寄生している可能性は低いでしょう。寄生していたとしても、私であれば相当に難易度が高い筈です」
「……まぁ、ここならいいか」
実際さっきのウィスパーでも影響が出ていない。そもそもの状態異常耐性が高い事に加えて「月燐石のネックレス」と【王権領域】で更に耐性が上がっているのだから、まぁ、当然と言えば当然なのだが。
それはエルルも分かってくれたのか、あるいは「第一候補」の儀式が終わるまで、どこまでが敵になっているのか分からない中でほぼ間違いなく「安全」な場所に居るという事実があったからか、息を1つ吐いて了承してくれた。
そのまま身を翻して扉から出て……
「……何か今鈍い音しませんでした?」
「「「ノーコメントで」」」
『大体想像できる通りであろう。あぁ、「第三候補」。出来ればその領域を半分ほどにしてくれぬか。少々干渉があるようだ』
「分かりました」
……タイミング的にはギリギリセーフだったのかも知れない。
儀式に要した時間は、内部時間で約1時間ちょっとと言ったところだろうか。もちろん準備時間は除く。その間(エルルが行きがけに片づけてくれたのか)この部屋へやってくる何者かは1人も居なかった。
まぁ楽でいいんだけどね。私だって知り合い(『本の虫』の人達)を殴りたくはないし。どうなるかはここの迷路の壁参照。
やっている事はほぼほぼ神の強制送還と同意義だった為か、「第一候補」も声の感じがお疲れだ。
「さて問題はここからどうするかですが……」
『で、あるな。もう“破滅の神々”の影響は気にしなくても良いであろうが、ことここに至るまでの間に、前線ではどれほどクレナイイトサンゴの浸食が進んでおることか』
「虫下しの生産、間に合いますかねぇ」
『まず間違いなくどこかで不足するであろう』
試しにウィスパーをカバーさんへ送ってみたが、反応が無い。フレンドリストの表示は変わらないので、ログアウト出来たわけでも無いようだ。ということは、何もできないのにログイン時間は消費されるという事で……クレナイイトサンゴ、何て恐ろしいモンスターだ。
同じ部屋にいた『本の虫』の人達は、もう島の中の状況を確認しに動いている。私達のフォローにかそれとも最低限の「確定正気」を維持する為か、数人はこの部屋に残ってるけど。
あれほど鳴り響いていたウィスパーの通知音もとっくに止んでいる。あれはやはり、“破滅の神々”の権能を付与されたクレナイイトサンゴが送って来ていたのだろう。
『ところで、様子を見に行かなくて良いのか、「第三候補」』
「この部屋に居るって言っちゃいましたからね。足止めが必要無くなれば戻ってくる筈ですよ、これ以上何もなければ」
『くはは。おてんば皇女も反省中か』
「変な呼び名増やさないで貰えます?」
まぁエルルなら大丈夫だろう。あの見た目巨人が最後のあがきで飛び掛かるとかしてきても、さらっと回避するぐらいは出来る筈だ。私が背中に居ないんだから、いくらでも避けようはあるだろう。
虫下しの供給とその順序の問題はあるが、とりあえずしばらくあのゲテモノピエロが引っ掻き回した分は収束した、筈だ。ネレイちゃんとオープさんは『本の虫』の人達に保護されたし……。
……その『本の虫』の人達が引っ掻き回されたわけだが、渡鯨族の人達も一緒に保護してるから大丈夫、の、筈だ。たぶん。恐らく。
「…………急にネレイちゃんのことが心配になってきました」
『彼女か。我は少ししか会っておらぬが……渡鯨族だけでなく、共同戦線を張っておった人魚族も付いておる。大丈夫であろう』
「あ、そうなんですか?」
『うむ』
なるほど、
という事は、この騒動も収束とみていいだろう。いやまぁまだ問題はあるんだけどね。まだあの超巨大クラーケン(異世界イカ)とデビルフィッシュ(異世界タコ)は殴り合いをしてるんだろうし。虫下しの生産と供給とか、状態の見極めとか。あのゲテモノピエロが本当にこれ以上何もしてこないって保証もない訳だし。
……というか、少なくとも、次の大陸へのレースでは何かしてくるだろう。だからこそあの海図を盗みだしたんだろうし? 邪神がレースに参加できているかどうかは別として、ゲテモノピエロ達……クラン『バッドエンド』が1位を取ったら厄介な事になりそうだ。
『ところで、「第三候補」』
「何ですか、「第一候補」」
『ちょっとした企みがあるんだが、手を貸しては貰えないか?』
「?」
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