第242話 13枚目:迷路脱出
と、いーうーわーけーでー。
「死にたくなければ避けなさい!」
「「「ぎゃあああああ!!」」」
いやーまさかこんなテンプレ台詞を自分が言う事になろうとは。そしてどうやら住民だったらしいチンピラ達が必死になって避けてくれるもんだから爽快爽快。岩壁が発泡スチロールで出来ているようだ!
後ろからネレイちゃんのきゃっきゃと楽しそうな声が聞こえるもんだから更に緊張感はフェードアウト、アトラクション感がアップしている。オープさんの顔は振り返ってないから見えないな。
そしてこれも魔力の操作にあたるのか、衝撃が周りに伝わっていくイメージをしながら壁を殴ると、大きく穴が開く様だ。逆に一点に集中するイメージだと綺麗に拳の形に穴が開いた。
「お頭ぁ! なんすかあのバケモンは!?」
「俺が知るか!? 誰だあんなの持って帰ってきた奴は!!」
「少なくとも俺っちじゃなあべし!!」
「ジョニー!?」
何かそんな色々な意味で楽しそうな会話が聞こえたりもしたが、とりあえず今は脱出(兼破壊活動)が優先だ。ぜひ捕まってほしい。あとでじっくりお話ししようじゃないか!
ドゴォ! バゴォ! と音だけはしっかり重量級の、私の手ごたえとしては文化祭で手作りした大道具ぐらいの強度な岩壁を直線で砕いていく。時々通路に出た時に罠が発動したりもするのだが、矢が飛んできたり槍が飛び出したりした程度なら回避か叩き落とし、毒ガス系は即座に【風古代魔法】で散らしている。
地雷の類があるらしく、発動すると結構派手なのだが……「たからばこ」騒動の後で、人魚族の所に行ったとき、私がどうやって罠を解除していたか思い出してほしい。つまり、洞窟を崩すことのないよう威力を落とされた対人地雷ぐらいなら、音と爆風にびっくりするぐらいで、ほぼノーダメージとなる。
「えいっ! ……あ、外に出ましたね」
主に太く低い声による悲鳴の合唱と壁を壊す重低音をBGMに迷路をまっすぐ進んでいくと、思っていたよりは早く空が見えた。うーん、晴れとは言えないけど曇りでもない、ここからの天気の判断に困る薄明るい空だ。
「うーん流石カバーさん。包囲の仕方が本気ですね」
半分以上、威圧が目的では? と思うほどに整然と、小舟1つ逃がしてなるものかという程ずらりと、それこそあの捕獲戦で使われていた分がほぼ全部来ているのではないかという規模で、海の向こうに大小さまざまな船が並んでいたのだ。
……大丈夫かな。留守の間にまたなんかされない? 今の私はちょっと疑り深くなってるぞ。
「……これは」
「おふね!」
「あぁ、オープさん。大丈夫ですよ、彼らは私が連絡を入れた「応援」ですので」
「なんと」
その光景に、オープさんの語彙が何処かへ行ってしまっている。迷路の中? まだ混乱が続いてるみたいだよ。直線で壊して駆け足で通り抜けたお陰だ。
さて問題は、どうやってあの船団に合流するかって事なんだけど……どうするかな。【人化】を解いて【飛行】だとオープさんとネレイちゃんがついて来れないだろうし。かといって、泳いでいくのは私が足手まといになる。
と、カバーさんからメールだ。何々。
「げっ」
「ど、どうされました?」
「あぁ、いえ、大丈夫です。最強の味方が、迎えに来るというだけですので……」
つまり、エルルが直接迎えに来るってことだ。逃げられないか、そっかー。……島を問答無用で吹っ飛ばさなかっただけ冷静なんだよな、たぶん。きっと。恐らく。
まぁオープさんが見て分かる程ほっとしてるから、安全の事考えたらそれが最適解なんだけどさ。お説教は私が半分わざと誘拐されたのが悪いんだし。というか、エルルからしたらそれこそ寿命が縮むレベルの心労だろうし。
……うーん、しばらくは大人しくしておこうかな。【人化】出来るようになってからこっち、やんちゃに拍車がかかったって言われても一切反論できないぞ?
「とりあえず、落ち着いたらまずは全力で謝ろう……」
とか、背後の、自分で開けた大穴を警戒しつつ、考えていると。
ザシュッ
という音と共に、背中に、今までにない痛みが、走った。
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