第215話 13枚目:イベント説明

 さてログインしてみると、どうやらいつもより喧騒が大人しいようだ。どうやらまだ召喚者プレイヤーの大半は眠ったままらしい。……これ、多分ナヴィティリアさんが時間倍率を操作してくれたな? 相変わらず最高なんだからもう。

 エルルもルチルも部屋の中には居ないようなので、メニューを開いて公式のお知らせを確認しておく。絶対聞かなきゃいけない内容はあれだけでも、他にもないとは言ってなかったからね。そもそもイベントには掠めもしてなかったじゃないか。

 えーと、なになに?


「種族関係は聞いた通り、信仰できる対象の増加は想像余裕、特定種族限定スキルは知ってた、特定種族の種族レベルキャップ解放……よし! 来た!」


 その勢いでスキル一覧を見てみると、累計レベルの表示の横にあった☆マークが消えていた。よっしゃあ! これで心臓に悪いアイテム(=「進化結晶」)が増えなくなる!!

 それにますますステータスの暴力が捗るってもんだ。……真面目に力加減の練習をしよう。今でも結構シャレになってないのは何となく知ってる。

 それに今回の事は別に魔物種族だけに良いという訳ではないようだ。特定種族限定スキルは、人間種族にも存在したらしい。


「……あぁ、人間種族の特性というか利点はそういう……」


 スキルの名称は【結力】。ゆいりょく、と読むらしいそのスキルは人間こと徒人族限定のスキルであり、親交を深めた相手の力を一時的に借りる事が出来るようになる、というものだった。

 他にも人間種族限定のスキルは、低いステータスを補ったり汎用性を増したりするものが多い傾向だ。恐らく人間種族の特性は、人間関係を含んだ育て方によって千差万別な違いの能力を得る多様性と汎用性だろう。

 対して魔物種族は、ステータスを更に尖らせたりリスクと引き換えにリターンを得るものが多い傾向だ。え、竜族限定のスキル? 【竜○】シリーズが全部そうだよ。状態異常耐性とステータス補正。


「環境によっては問答無用で死ぬ可能性がある特化型が魔物種族、どんな場所に行っても大体対応できるのが人間種族って感じかな」


 そしてそんな魔物種族でありながら、十分な汎用性を持っているのが世界三大最強種族、という事らしい。あ、うん、そりゃ最強呼びされるわ。

 ちなみに当然ながらというべきか、任意で選べる種族の中に世界三大最強種族は入ってなかった。そりゃそうだ。選べたら誰だってそれを選ぶ。そして途中で投げるまでがワンセットになるに違いない。

 さてまぁ確認を続けよう。えーと他には、お、とうとう課金要素が解禁されるのか。


「…………って言っても、ほとんどこれ強さには関係ないな」


 学生にはありがたい事に、というべきか、以前のイベントで貰って結局死蔵している経験値上昇ポーションや、ログイン制限を緩和するアイテムなどはラインナップに無いようだ。

 購入できるのは所謂アバターの外見を変えるファッションアイテムがほとんどで、一部、相手の名前が頭上に表示されるようになったりする便利機能があるらしい。

 ……注意書きに、見た目が変わって見えるのはプレイヤー相手だけとなります、と書いてあった。変装には使えないらしい。


「まぁ金で力を買えるようになったらまず勝てなくなるしなぁ……」


 強くなるのは努力で頑張ってください、という事だろうか。……一応社会人への救済策か、修行場チケット、というのが購入回数限定であった。めっちゃ高いが、恐らく時間倍率が高い空間に行けるんじゃないだろうか? 精神と時の部屋みたいな。

 もっともそのチケットを買っても、内部で過ごせる時間は普通の上限と変わらないようだ。やっぱり強くなるには時間をかけてくださいって事なんだろう。だってめっちゃ高いから。

 さて、他には。バグ修正、スキル係数調整、その他諸々。マスクデータをいじられてもプレイヤーには分からないんだよなぁ。まぁ分かったらマスクデータじゃないか。


「メンテはこんなもんか。さて、イベントは、と」


 メンテナンス情報からイベントのお知らせへと移動する。あの怪獣大決戦をどうにかするんだろうなー……、という予想は違わず、またその結果新しい大陸に行けるようになるというのも予想通りだ。

 まぁここはもう大多数のプレイヤーが想像していた通りだし、これを外すのは色々な意味で頂けないだろう。だからそれは予想通り、だったのだが……。

 ……どこからツッコむべきか。とりあえず、バックストーリーをちゃんと確認しておこう。



 大嵐の原因が凡そ分かった、というタイミングでの魔物種族を守護する神々の復活。これに神々は大いに慌て、一部は恐れ、一部は怒り、そして一部はその場で戦いを始め、神々の世界は大混乱に陥った。

 紆余曲折あったものの、どうにか神々は神代の諍いを現代の下界に影響させてはならない、というところで合意。各々の関係に基づき誓約書を交わし合い、平等に会議の席へと付くことで決着とすることになった。

 ところがそれで収まらない神々が居た事で、会議は白熱。大嵐の解決、及びその後の大陸への一番乗りをどの神の信徒が達成するのか、勝負する事になってしまった。



 まず。どうしてそうなった。勝負する事になってしまった、じゃねーよ。諍いを影響させてはならないっていいつつ思いっきり勝負を煽りに来てるじゃないか。あれか? 神々が直接ぶつかると地形が変わるから代理戦争宜しくってか?

 というか、新しい大陸とか召喚者への新しい力とか、ここまでのバックストーリーがほとんど吹っ飛んでるんだけど。召喚者って確か世界が滅びかけているのを救うために召喚されたんだよな? 争わせてる場合じゃないだろうに何やってんの?

 で、その神々を煽って狂信者による襲撃をさせた黒幕について、一言も言及が無いのはどういう事? いや、イベントには関係ないっちゃ関係ないけど、完全放置?


「と、言うか。この分だと、今後のイベントは大なり小なり、全部信仰する神別でチーム分けされたチーム戦になるってことでは」


 あーもー武闘派で喧嘩っ早い神々が大ゲンカしてる横で弱小な神々を守りながらおろおろしてるボックス様が想像余裕だよ!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る