第209話 12枚目:成果お披露目
折角渾身のキャラメイク(そのままではなくロリ化してるけど)姿になったのに格好が初期装備。丸太を小枝感覚で振り回せるステータスがあるのに見た目は初心者。これはちょっと。いやしれっと一般
という訳で、快適快速エルル急行で渡鯨族の港にとんぼ返り。流石にまだ一緒には飛べないので、【風古代魔法】で自分を守りながらエルルの背中にしがみつく形だ。
『まぁ自分で大陸横断できるようになるのはまだ当分無理だろうけどねー』
『流石にそこまでほいほいとやられたら俺の面目が立たない。つーかお嬢は出来れば自力じゃなくて周りに運んでもらってほしい』
『召喚者だからそれは難しいかな!』
上空でそんな会話があったりしたが、次のイベントもこのまま此処で行われるのだろうって事で大賑わいが続く渡鯨族の港町へ到着。エルルはちょっと離れた所に降りてから、【人化】して竜姿の私を抱え上げた。
そしてそのまま、余計な時間は食っていられないとばかりに割と全力で街を駆け抜ける。行き先は、『本の虫』の人達がいる半プライベートエリアな建物だ。
街並みすら流れる線みたいになっちゃって碌に見えないスピードって、全力過ぎないかな。いやまぁ、防犯的にはこの対応で大正解なんだろうけどさ。
「あ、エルルさんおかえりなさいー。お急ぎですかー?」
「おかえりなさいっすー。って、あ、わぁ! 先輩進化したっすか!?」
『どうも。ようやくの進化ですよ。まだ子供時代ではあるんですけどねこれが』
「道中はな。1回でも絡まれるとそこから動けない気がした」
たぶん偶然フライリーさんが
と、そうだ。メインは確かに進化だけど、本題は進化で出来るようになったことでだな。
『ところで、アラーネアさんはいますか?』
「アラーネアさんですかー? たぶん、次に船が戻ってきたら会えると思いますよー」
「最初なんかめっちゃ採寸されてびっくりしたけど、良い人……良い蜘蛛? っすね。え、てか先輩、装備とかつけれるんすか?」
『今もボックス様から貰ったネックレスは着けてますし、以前にもリボンやケープを着けさせてもらったことがありますよ』
「あー……あれって装備品扱いだったんすね。見た目可愛いあれかと」
『実用品でした』
……まぁ否定は出来ないけどさ。どう考えても性能より見た目の可愛さ優先だっただろうし、そもそもそんなに性能を高くするのも出来なかっただろうし。どうあがいてもアクセサリ枠ではあっただろうから。
でも今は違うのだよ! という事でエルルを振り返る。頷きが返って来たので、何? という顔をしているフライリーさんの前で、ぽん、と【人化】した。
「!?」
「まぁ、この通りですね。完全にではありませんが、【人化】のロックがようやく外れましたので」
「!!??」
初期装備に「月燐石のネックレス」だけという格好は微妙と言わざるを得ないのだが、まぁだからこそアラーネアさんに会いたいわけでね? 何せ布装備の最高峰(『本の虫』評価)だ。大丈夫、ちゃんとお支払いも出来るようにしてきたから!
……あれ? フライリーさんの反応が無いぞ?
「……かっ」
「?」
「かっっっっっわ……!!」
私の正面ちょっと上で滞空していたフライリーさんだが、口を覆ってそんな事を言って――唐突に墜落した。何事!?
さっと手を出して落ちたフライリーさんを受け止めると……寝ている。何故だ。
「……これ、気絶したんじゃないか?」
「ですよねー?」
「え、気絶?」
……。
…………。
「なるほど。私が可愛いあまりに、感情が高ぶりすぎましたか……」
感情オーバーフローでセーフティー発動からの強制ログアウトを喰らったらしい。今までの感じからしてフライリーさんも未成年だろうし、その場合セーフティーは割と厳しめに反応する筈だ。
ちなみにセーフティーの場合でもログアウト制限は生きているので、戻って来るにはしばらくかかる。ログインしたばかりだっただろうに悪い事したかな。
「ま、ドレス姿で不意打ちするよりマシだったと思いましょう」
「……他の奴ら大丈夫か?」
え、どっちにしろ気絶するなら1回の方が良かったんじゃないかって?
……やってしまったものは仕方ないな! あと他の人については知らない。スピンさんとか多分アウトだろうけど、そこはまぁ自己責任ってことで!
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