第164話 10枚目:イベント終了

 夜中に「第一候補」に呼び出されて割と重要な忠告を受け取るというイベントはあったが、何故かきっちりログインしていたカバーさんに伝えて丸投げすれば私の役割は終わりだ。今度こそ素直に寝た。

 寝る前に高密度な情報を叩き込まれたからか、あんまり寝付きは良くなかった。……ゲーム三昧で運動不足だからじゃないかって? アーアーキコエナーイ。

 ともあれ(推定)目玉であるレイドボスも討伐できて、ボックス様のイベントも発見した。後は正直、消化試合と言っていい。イベント期間自体もそんなに残ってないし。


『だからって連れまわします?』

「なんじゃい。どうせ暇じゃろう?」

『まぁ否定は出来ませんが……』


 だから期間終了までは、主に「第二候補」に連れまわされる形で世界の端のイベントボスをマラソンしていた。うん。私が全力でバフを掛けたら、なんか、切れ方が気持ちよくなるんだって。攻撃力の上昇がどういう風に反映されているんだろうか。

 あとは時々『本の虫』から解析依頼が来て、書類とにらめっこもしてたけど。あの街(廃墟)の歴史とか興味ないからなぁ。レイドボスが討伐された以上、この内部の状態がそのまま現実に反映される可能性は低いんだし。


「キュッ(しまった)」


 昨日「第一候補」に会った時に権利書と魔石を渡しておくんだった。インベントリに余裕はあるとはいえ、この魔石がかなり重い上にでっかいんだ。無くせるものなら無くしておくんだった。

 それでなくても【解体】で巨大イベントボスの素材が大量で、大変な事になっている。これ使い道どうするかな。とりあえずエルルに聞いてみよう。ダメならカバーさんに連絡入れて売却だ。

 あ、そうそう。「第二候補」に連れまわされてる間にフィルツェーニクさんについて聞いてみたんだよ。


「ぬ? あやつなら召喚者と今の人間種族の様子について説明があった後、報告しに行くと言って退散したぞい? ……そういえばそのまま戻っておらんのう」


 との事だった。途中から姿を見ないなと思ってたら、そもそもイベント空間から撤退済みだったよ。

 と言う事は、まぁまず間違いなく私(野良皇女)の事も報告されてるだろうなぁ。竜都が大騒ぎになってる予感がする。今はどうしようもないんだけどね。

 流石にそろそろ隣の大陸に渡るめどがついてもいい筈なんだけどなぁと、バフとデバフをばら撒きながら「第二候補」の戦闘を眺めつつ考えていた。まぁまず大規模なイベントになるだろうから、早くて来月だろうか。


「イベントはずっとこういう特殊空間でやってくれんかのー」

『それは流石に無理があるでしょう』


 人の街見学ツアーに参加していない「第二候補」としては、これが初めてのまともな他召喚者プレイヤーとの交流だ。私としてもこういう(後の被害を考えなくていい)形式は歓迎だが、通常空間の探索も進めて欲しいだろう運営からすれば、そう回数は出来ないんじゃないだろうか。

 それに今回の事で、各自が建てている神殿もだいぶ強化された事だろう。開催の理由である空間の歪みも、キャパシティが大きく上がった事で無事平常値内に収まった……筈だ。


『次は船の素材集めでもやるんじゃないですかね』

「早く儂の所にも他の奴らが来んものかのー」


 そんな予想を立てているが、実際どうなるかは分からない。それに色々慌ただしかったせいで半分忘れているが、まだ今月は半分以上残っているのだ。つまり、次のイベントまで半月以上ある、という事になる。

 まぁしばらくはのんびり谷底の探索でもするかー。と、「第二候補」と行動を共にされつつ思っている間に、イベントは終了した。




『2週間に満たないというのに、既に何と言うか懐かしいですね……』

「まぁやる事が山ほどありましたからねー」

「レベリングとしてはめっちゃ美味しかったからあんまり大変とだけも言えないっすし……」

「おかえり。しかし何があったんだよ」


 という訳で、大神殿から通常空間に戻って来た。久々のエルルだ。ポータルから出てくるなりの私、ルチル、フライリーさんの感想に首を傾げている。

 ちなみにだが、流石に蔵猫族はいない。彼らは一旦まとめて『本の虫』が預かって面倒を見て、成長後本人達の希望があれば召喚者プレイヤーの補佐などにつくという事だ。

 ……うん。ある意味の争奪戦が大変な事になるだろう。そういう意味でも、一旦熱と言うか波が収まるまでは『本の虫』預かりなのだ。流石に検証班を敵に回すと大変な事になるからね。


『まぁ、色々です』

「そうか色々か。……当然、聞かせてもらえるんだよな?」

『それはもちろん』


 話すさ。エルルにも話さなきゃいけない事があるからね。主に竜都の事とか実家の事とか。

 だからさ。まず「あ、またこの降って湧いた系お嬢爆弾拾って来たな」って顔を止めようか!

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