第150話 10枚目:イベントドロップ
一応カバーさんに「呪護の瞳」というアイテムについて聞いてみると、どうやらアイテムの存在自体が未発見だったようだ。つまり、レイドボスによる召喚で現れたモンスターからのレアドロップで確定。
何でレアドロップかって? “神秘にして福音”の神様の神殿効果を参照。私がどれだけボックス様を信仰して捧げものしてると思うんだ。神殿のレベルだって真っ先に10に到達したんだぞ。
その私が短時間とは言えほぼ1人で砦の防衛をして、つまり山ほどのモンスターを雑とは言え薙ぎ払うと言えるほどの数を倒して「あんまり数は無い」んだぞ? レアドロップに決まってるだろう。
『やられました。建築資材の量が以前のイベント程ではないにしろ増えていたので、てっきりまたこれがイベントドロップなのかと』
『取らせる気が無かったか……あるいは、どんな低確率であっても手に入る程の数を相手にさせられる予定だったか、ですね』
『えぇ、全く。ただしどちらにせよ、そんなに数は手に入らない想定だった筈ですね。となれば、その用途も凡そ想像がつくという物です』
素早い情報伝達と共有により、少なくとも大半の第一陣
そして相変わらず最高なボックス様は、既に建材のドロップ量の差と言う部分でその有難みを知らしめていた。どうやら第二陣は最初から神殿の建築が可能だったようで、そちらのススメでもボックス様の神殿建設が推奨されていたようだ。
そういう「分かりやすい」恩恵があった分、レアドロップと言う可能性を見落とした。と、カバーさんは割と悔しそうだった。その分、動くのも早かったが。
「はぁい、「第三候補」さーん? 空の魔女さんが来たわよー」
……いや、ほんとに。何で話聞いて即座に人間種族プレイヤー内でトップに位置する航空戦力をこっちに回せるの。決断が早い。
砦の屋上から、ながら作業で雑魚モンスターの群れを片付けていた私の所に上から声が掛けられた。空色のマントに三角帽子、箒にまたがった金髪碧眼の美人エルフさんだ。彼女が現在の所、空での戦い最強と言われるプレイヤーである。
フライアという
『初めまして、空の魔女さん。早速ですが、こちらがその品ですね』
「あら綺麗な青。素敵。確かにお預かりしたわ」
そんな「空の魔女」さんに「呪護の瞳」をあるだけ手渡す。というか、屋上に転がして拾ってもらう。……うん。個人間のトレード機能が無いんだ、フリアド。トレード機能はお店限定。
直径3~5㎝の青いガラスでできた目玉、という外見のそれらが転がっているのはそこはかとなく不気味なのだが、「空の魔女」さんは気にした様子も見せずに拾い、インベントリにその全てを収めた。
そのまますぐに箒にまたがり、屋上を蹴って上昇していく「空の魔女」さん。会話の前にブレスで吹き飛ばしておいた群れがほとんど元に戻っているのを、もう一度薙ぎ払ってから、見送る為にその姿を見上げた。
『よろしくお願いします』
「もちろんよー。魔女にとっては切っても切れない大事な相手だものー」
そんな私にひらりと手を振って、「空の魔女」さんは素晴らしいスピードで街(廃墟)へと飛んでいった。……あの人、もしかしたらエルルと並走できるんじゃないか? もちろん普通に移動してる間の速度だけど。
さて、話を「呪護の瞳」に戻そう。
このイベントアイテムは間違いなく貴重品だ。ここまでの情報を整理すると、災厄の身代わりになり、他者から贈られる事で効果が増して、けれどなくても別にクリアに問題は出ない、という事になる。
ここから分かるのは、少なくともプレイヤーが使う為の、レイドボス攻略必須アイテムではない、という事だ。何せ手に入れるのは間違いなくプレイヤーで、それならプレイヤー自身が使うだろうし、必須アイテムであるなら圧倒的に数が足りない。
となるとプレイヤー以外に「災厄に対する身代わり」が必要な相手がいる、という事になる訳だが、大事な事なのでもう一度。このアイテムは貴重品だ。手に入らない可能性も十分にあった。つまり、その「必要な相手」は、「助からない可能性が高い」という事でもある。
ここまで来れば流石にこの「呪護の瞳」というアイテムが、誰にどう使うものなのかは察しが付くだろう。第一、このイベントエリアという名の特殊空間でプレイヤー以外の存在、という時点で限られるのだ。
墓地の死者たちではない。何故ならとっくに死んでいるから。同じく権能神も違う。こんなアイテムなんか無くてもどうとでも出来る筈だ。当然ながらモンスターな訳がない。
つまり、「呪護の瞳」というアイテムの使い道は。
『はぁい、こちら空の魔女よー。本体に「呪護の瞳」をぶつけたら黒猫ちゃんが出て来たわー。回収には成功したけど、弱ってるから一旦本陣に戻るわねー』
レイドボス「膿み殖える模造の生命」から、長毛な黒猫の魔物種族住民を、引き剥がすことだ。
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