第129話 10枚目:建物発見
そこからせっせと10m幅ぐらいで大きな建物(?)へと向かう、何だろう、元建物は残ってるから道でも無いし、開けた場所? いや道でいいのか。とにかく、スクリーンショットを撮った場所から真っすぐに木を伐採し、根っこを引き抜いていった。
あの大きな建物(?)を見つける時点で内部時間3時間がかかっていて、そこから1時間ぐらい開拓を続けて距離的には約半分だろうか。うーん、やはり私、有能。ステータスの暴力だけど。
というか、たぶん、そもそも竜族っていうのが、基本ステータスが平均的に高いんだと思うんだよね。不死族は「第二候補」を見ている限り何処かに特化した形、御使族は……御使って種族名に入ってるぐらいだし、神が実在する世界だし。神の力に対する適正に極振ってるんじゃないかな。
「キュッキュー(その上で古代の装備のステータス強化スキルもごっそり入ってるしなぁ)」
そもそも竜の皇女って時点で基礎値が更に底上げされてると見るべきだろう。種族値、もといエルルから聞いた成長限界の話からすると。
で、その上に古代の装備由来のステータス強化スキルがごっそり入ってて、しかも【成長強化】でその成長幅にはブーストがかかってる訳だ。ティフォン様に貰ったスキル、【竜眼】と【竜鱗】もこれ、ヘルプ見たらステータス強化系だし。……【虚弱~質】から変化した【竜体】と【竜魂】が状態異常耐性だから、妥当、なのか、な?
…………うん。そりゃぁ、ステータスの暴力にもなるよ。
「キュゥ、キュッ(種族レベルのキャップがついて無かったら、冗談でも何でもなくうっかりで地形変えるまで行きそう)」
もうちょっと真面目に力加減の練習はしようと思いました。まる。
まぁそれはそれとして、単純作業には慣れてる私だ。考えをよそにやりつつも開拓の動きも魔法の行使も止めてなかった訳でさ。あっという間に更に1時間が経過して、大きな建物(?)の目の前に辿り着いた。
あれだけ分かりやすくしておけば『本の虫』の人達も合流しやすいだろう。さて、と改めて大きな建物(?)を見上げる。んー、やっぱり何か、よくある感じの四角い建物じゃ、ないな?
「キュ、キューゥ(てことは、やっぱり重要な特殊施設か)」
街(廃墟)にしろ、北方向に広がる人工物跡にしろ、石造りが基本だったためか全体的に四角いのだ。まぁ、石を組み合わせて作るんなら四角を積み上げていくのが一番簡単で丈夫になるだろう。
なんだけど、蔦と木と花で覆われ、所々崩壊しているこの建物は、輪郭が完全に自然に溶けて消えてしまっているのを含めても四角くない。何か、違うのだ。
かと言って三角屋根という感じでも無いし、どちらかというと、形自体が普通は使わないような特殊な形になってる気がする。
「キュッ(とりあえず表面の植物全部引っぺがそう)」
ま、正しい輪郭が見えるようになれば分かるか。
で。
「これは……えぇ。確かに、重要な施設、ですね」
私からの連絡を受けて、大急ぎで途中だった仕事を終わらせたり段取りを着けたり調査班を編成したりしていたらしいカバーさんが来たのが、私が大きな建物(?)の除草(木を含む)作業を開始してから、2時間ぐらい経ってからの事だ。
その頃には顔見知りとなっていた『本の虫』の人達がある程度周囲を調べていて、私はどうやら多角柱の形をしているらしい大きな建物(?)の、1つの面に当たる壁を露出させたところだった。
ここまでの道中と同じだけの時間をかけて面1つっていう時点で、この大きな建物(?)がどれだけ大きいかは何となく伝わっただろうか。そんなに近くにあった訳じゃないんだぞ、これ。
「はい、そうですね……とりあえず、道中の開拓を優先してください。調査班は3手に分かれて、周辺調査に1班、周囲警戒に1班を当てます。「第三候補」さん!」
『なんでしょう』
「周辺の調査と見つかった資料から、入り口の方向が分かりました! そちらの除草を優先してお願いします!」
『分かりました』
よっこいせー、っと、白灰色っぽい周囲の建物の残骸や石畳だったらしい瓦礫に比べ、随分と黒く重く湿ったような色合いの大きな建物(?)から木の根を一本分引き抜いたところで、カバーさんから声を掛けられる。おっけー、入り口優先ね。
見た目は猫サイズの銀色仔竜が、現実の建機も真っ青の働きをしているのは実にファンタジーだ。物理法則を大分無視している自覚がある。まぁでも今はそれが便利なんだからスルーしよう。
とりあえずカバーさんの案内に従って、大きな建物(?)を3分の1ほど北側に回り込むように移動する。うっわ、他の面に比べて一際侵食というか、覆われ方が酷いな。
『え、此処ですか?』
「資料によると、此処ですね。街の反対側にあるそうなので」
『なるほど』
一応高度を上げて森の上に出てみたのだが……あぁ、うん。確かに、大きな建物(?)の丁度向こうに街(廃墟)が見えるね。つまり、街(廃墟)から見れば反対側だ。
てことは、この一際植物の侵食が激しい場所が入り口なのだろう。しっかし、重要な施設というのは確かなんだろうけど一体何の建物なのやら。
とりあえず、一番表面に出ている木の内、取れそうな部分から引っこ抜……くと建物も崩れそうなので、まず枝を折って落とすことにした。【風古代魔法】で風の刃を操って、ざっくざくと枝を落としていく。
『うん?』
「おや?」
そしたら……何か、いい匂いが漂い始めたぞ?
何だろう、と思って一度作業を止めて、落とした枝を拾ってみる。殆どは周りと同じ「白灰樹」で、それから匂いはしなかった。なので、いい匂いがする枝を探し、拾い上げて【鑑定】してみる。
[アイテム:チメラエオディエートの枝
説明:チメラエオディエートと呼ばれる樹木の枝
非常に良い香りの樹脂を分泌する
古代では、その香りが死者を慰め、穏やかな眠りに導くと言われている
この品種はチメラエオディエート・アクイラリア
現代では滅びて久しい希少種]
………………死者?
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