第110話 9枚目:イベント対策

 案の定その制限を知ったエルルを宥めるのに丸1日。それでも物騒な計画を立てているのを止めるのに更に1日かけて、ルチルと話してまた同じように宥めて物騒な計画を止めるのにまた1日かかった。


「うっわ……これ、エルルさん狙い撃ちじゃないっすか。流石にあんまりだと思います!!」


 まぁ、フライリーさんですらこんな反応だったからなー。ちなみに質問という名の抗議メールは既に送ってあるが、返答はまだ来ていない。どうせ平等性を保つためとか仕様とかいう理由で却下されるのは目に見えているけど。

 魔物種族掲示板にも流した、というか、流す前に既に運営への文句の嵐になってて半分炎上してたし。一番困る私を差し置いて滅茶苦茶に盛り上がってたよね。ははは。

 …………「第一候補」が割とガチめにキレてた気がするが、わたしはなにもみていない。


『とは言え、現状この世界での魔物種族の扱いに関するあれこれは、少々騒いだところでどうなる物でもありません。速やかに諦めて次善の策を考えましょう』

「ひぇ……超前向き……先輩ぱねぇっす……」

「それでこそごしゅじん、とは思いますけどー」


 エルルは今はいない。谷底のダンジョンを攻略(と書いて八つ当たりと読む)しに行ってるから。

 なので『妖精郷』旧都(=一面の花畑)の片隅で、猫サイズの銀色仔ドラゴンと手のひらサイズのピンク色妖精さんと美少年が話している格好になる。かわいいね。

 一応確認した所、現在のルチルの累計種族レベルは500弱との事。つまり、ルチルは来れるようだ。私もキャップが外れていないので(一応)大丈夫。新人のフライリーさんは当然問題なし。という事で、本当にエルルが仲間外れにされるという事だ。


「でも、僕だとごしゅじんをうまく隠しながら連れて行くのは無理ですよー? もし本気で戦う事が有ったら、【人化】は解きますしー」

「私も【人化】の修行は間に合いそうにないですね……」

『そうなんですよね。私が自分で【人化】出来れば問題は無かったのですが、流石にここから最低もう2段階進化が必要というのは無理がありますし』

「ひぇ……あと2階進化しなきゃいけないっていうかあと2回は進化確定してるんすか先輩」

『子供時代があと1回は確定してるんですよ、ははは』

「ひぇぇ……」


 まぁ普通一般ルートでも【卵体】から4回は進化が確定しているのが竜族だ。私は【霊体】スタートで生まれるまでに2回、【卵体】となる分を含めて生まれてから5回が確定しているし、その後の未来も普通より進化回数が多い予測となっている(エルル談)。

 最終的にどこまで強くなるかはまぁ今は置いておくとして、問題はこのイベントへの参加、正しくは、その間どうやって姿を隠すか、だ。

 今のところ姿を見せたのは魔物種族プレイヤー達とごく一部の関係者、カバーさんや歌鳥族の所で遭遇した人間種族パーティぐらい。もうちょっと隠したいんだよなぁ。


「ってか、先輩なら大人気だと思うっすよ? その見た目でめっちゃ強いとか最高です」

『好意的に受け入れられるのはいいんですが、自由に動けなくなるのは避けたいんですよ』

「あー」

「まぁごしゅじんならもみくちゃにされても大丈夫だとは思いますけどー、僕も、あんまり人混みには近づきたくないですねー」


 まぁ、私は可愛いので(自画自賛)。主に可愛いもの好きのプレイヤーには大人気になれるだろう。ルチルとセットなら百人単位で悶絶させる自信があるぞ? 私自身も可愛いは好きだから、可愛く見せる方法は知っている。

 が、それはそれこれはこれ。人が集まり過ぎて動けなくなるのは避けたい。本当に避けたい。可愛いに眼がくらんで変な行動を起こす迷惑な誰かがいないとも限らないんだし。

 何より、私自身の性格として、所謂姫プレイはあんまり好きじゃない。目指すのはか弱く守られることが大前提のお姫様ではなく、可愛く優雅でありながら最強な姫騎士系だ。可愛い中に凛々しさがあればなお良し。


『姿を消す魔法もあるにはありますが、私自身が使うとうまく発動しないんですよね』

「まぁ、ごしゅじんには難しいと思いますよー。エルルさんから、竜族の得意な魔法の傾向聞きましたけどー」

『大規模ぶっ放し系でしょう?』

「ですねー。だから、あれだけ補助を使い分けられるごしゅじんはすごいと思いますよー」

「ひぇ、竜族強い」


 まぁ世界三大最強種族の一角だし。それに人魚族の所でダンジョンアタックしてた時に、ドラゴンがちまちましてんじゃねぇってシステムから言われているしね。

 あぁ、一応念を押しておくと、姫騎士でもくっころにはならない方だ。

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