第111話 10枚目:イベント準備
もういっそ参加しないのも手か、とは思ったが、神殿の建材は欲しい。それに神々が力を出し合ったって事は、当然ボックス様も絡んでいるって事だ。出来れば参加したいというのは本心。
だが魔物種族掲示板は未だに炎上しているし、イベント開始前日(4月末日)になってようやく返って来たメールの内容は「仕様だよ、ごめんね! 頑張って!」だった。大幅に意訳しただけで内容は改変していない。
という訳で、エルルはお留守番決定だ。ただイベント会場は例によって大神殿からしか行けないようなので、フライリーさんのインベントリ確保を兼ねて、快適快速エルル急行で『スターティア』へと向かう事になった。
『しかし本当に余計な事を……』
『だからといって、破壊活動はダメですよ』
フライリーさんも小さいので、カナリア姿に戻ったルチルと一緒に仲良くエルルの鎧の中に収まって移動だ。
その途中、まだ不機嫌が収まらないままエルルが零していたが、即宥めておく。ぐるる、と唸り声を零すエルルだが、仕方ないと思うしかない。
……順当に「第一候補」が封じられた魔物種族の神を開放していった場合、魔物種族の内一定数は累計種族レベルが1000を超える
「(流石に、今後はずっと魔物種族の強者だから問答無用でイベントから外される、何てことにはならない筈だし……)」
理屈で言えば、一部とはいえ累計種族レベルが1000を超えるようになる頃には、魔物種族の神も一定の発言権を得ていることになるだろう。その声で、参加自体が不可能という事にはならない筈だ。
だから、今回か向こう数回ぐらいはこの状況が続くかもしれない。が、決して永続的な状態ではない、筈だ。……たぶん、恐らく。
なので、この数回を乗り切れればそれで良しとしよう。……姿見られ対策は、未だしっかりしたものが出来たわけでは無いけど。
「空の旅楽しいっすー!」
なおフライリーさんは最初こそエルルのドラゴン姿にビビってたものの、すぐに慣れて全力で空の旅を楽しんでいる。「自力でこの高さまで飛んでやるっすー!」とか言っているので、モチベーションが大分上がったようだ。
さてそうこうしている間に『スターティア』が見えて来た。エルルは以前魔物種族
私は相変わらず隠れた状態で、ここからは徒歩だ。……まぁ、カナリアなルチルと手のひらサイズの妖精なフライリーさんはエルルの肩辺りに乗っているんだろうし、歩いているのは実質エルル1人だけど。
「む!? ……あぁ、以前の。その小鳥と……妖精は?」
「同行者だよ。妖精の方は新しく招かれた召喚者」
「なるほど。通って良し!」
あっさりと門を抜けた所で、「ほわー!!」というフライリーさんの声。うん。そうだね。こんなに人が居たんだって感動するよね。私はまだ自分の目では見た事ないけど。何せずっと気配消して隠れてるから。
「とりあえずー、大神殿だっけ?」
「ですかね! インベントリ! イベント参加!」
『僕は大図書館ってところも気になりますー』
うーん、私としては、フライリーさんは一回大図書館に行って「教本」を一通り読んでおくべきじゃないかなーと思うけど……妖精族が【人化】してない状態っていうのは、どういうカウントになるんだろう。
その辺もカバーさんに聞きたかった訳だが、クラン『本の虫』は現在進行形で大忙しだ。主に最初から飛ばしに飛ばしているプレイヤーからの情報を纏める、という意味で。
なので大神殿へGO。エルルは私達を送った後1人で『スターティア』を出て、またイベントの終わり頃に迎えに来る予定だ。
「流石にあの空間で何十日も待つのは無理だしなぁ……」
何にもないからね、大神殿の中って。いや、“中立にして中庸”の神の性質を考えたら、何かあったら逆にダメなんだろうけど。
現在は私をリーダーとして、4人でパーティを組んでいる形だ。帰りは、フライリーさんかルチルに先に出て貰って、エルルを招き入れてもらう形となる。
「ほあー、ここが大神殿……めっちゃ神秘的ですね!」
これが初めての大神殿となるフライリーさんの反応にほっこりしつつ、中央の光の柱に触れる様子を見守る。……くるくるくるー、とその場で嬉しそうに回ったから、無事インベントリは手に入ったようだ。
「あれ?」
「ん?」
「どうしましたー?」
『何か異常でも?』
「あ、いえ、おかしい訳じゃないんですけど……」
と思ったら、何故か首傾げる感じで疑問の声。どしたん?
「二つ名っていうのを確認してたら、なんか、「竜姫の直弟子」っていうのが……」
『……悪い物ではありませんし、スルーしましょう』
「あっ、ハイっす」
システムに対するツッコミ所が判明したが、どうせ効果なしの記念称号ならぬ記念二つ名だ。気にしないで行こう。
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