第103話 8枚目:地力固め
さてまぁこれでイベントは終わった訳で、これで現実の3月も半ばな訳だ。ディックさんこと渡鯨族の話を聞くに、どうやら他の大陸に渡るのはまだ止めておいた方がいいとの事。
理由? なんでも他の大陸との航路に大嵐が居座るように発生してて、それを抜ける為の船が無いんだってさ。エルルは一度様子を見に行ってみたらしいが、
「あー、あれは無理。流石に俺でも無理。鎧が万全でも無理だな」
との事。まぁ、ゲーム的に考えれば、アップデートがまだなのだろう。進行不可能エリアって奴だ。……公式ルートでは、ってつくけどな。なぁ「第一候補」はじめ私以外の「魔王候補」達。
となれば今いる大陸を探索するしかない訳だが、これもプレイヤーの大多数である人間種族プレイヤーの展開待ちだろう。そうだね。せめて人魚族の皆さんに認められるぐらいの力はつけなきゃね。
まぁ私としては、とりあえず分かる範囲の他の種族の安否確認が出来たから良しだ。一先ずの目的達成、となるだろう。となれば何をするかというと。
『レベル上げしつつあの谷に封じられてる時代の開放かな』
「まぁそうなるなぁ」
それはまぁ当然、積まれているタスクの消化だろう。【○○精霊魔法】もまだまともに習得出来てないし。他の種族の独自な魔法にも興味はあるし知りたいんだが、その機会が無いんだよなぁ。
それに谷に戻れば、難易度の高いダンジョンに挑戦できるだろうし。イベントが終わってドロップ率は下がっているが、神殿の強化具合はまだまだ足りない。ちゃんとした戦闘訓練を兼ねる意味でもうってつけだ。
…………ルシルをはじめとした他の使徒生まれの仲間達の方もまだ引継ぎもとい用事が終わっていないらしいので、他にやる事が無いともいうが。
『僕は妖精族の皆さんにもお会いしてみたいですー!』
「あぁ成程。結構気は合うと思うぞ?」
『ルチルと妖精族の合唱とか何それ聞いてみたい』
そういう訳で、渡鯨族の街こと他大陸への玄関口から快適快速エルル急行で私のスタート地点、もといあの深い谷へと戻る事に。
次の啓示(イベントのお知らせ)までまだ1週間はあるだろうし、とのんびり地力を固めるつもりで向かった。
……んだけど。
『きゃーっ!?』
『うお、どうした!?』
『ルチルーっ!?』
……どうも、この谷。私とエルルしか入れないようで、うっかりルチルが弾き飛ばされてしまった。もちろんすぐに迎えに行ったけど。
『あーびっくりした……。けど、たぶん、竜族かそれに連なる種族しか入れない、みたいな条件の結界でも張ってる感じか、これ』
『するっと通れたから気づかなかったよね……』
『びっくりしましたー……』
という訳でルチルは『妖精郷』で別行動だ。【○○精霊魔法】のこと考えたら私もそちらに行った方がいいような気もしたんだが、エルルも私も妖精族にとってははっきり言って脅威である。
スタンピートが収まって、それでもまだばたばたしているだろう妖精族にさらに負担をかけるのはやめておこう、ということで、私はエルルに手伝ってもらって谷底でレベル上げだ。
『精霊かー……』
エルル曰く、世界の魔力の化身のようなもの、との事だが……異世界の人間からすればなんのこっちゃである。
魔力の化身というのだから、魔力と似たような感じで感知すればいいのだろう、とは思う(なお仕組みについては深く考えない)訳だが、その手ごたえは今のところさっぱりだ。
(エルルを見てる限り、普通に認識して話しかけてるんだよなー)
ちら、と視線を向ける先は広々とした砂地にちょこちょこと緑の芽が出ている、エルルが作った畑だ。あの畑を作る時の様子を見る限り、認識さえできれば大丈夫らしいというのは分かっている。
ただその分、その最初の、認識するところがどうにもならないとどうしようもないらしい。実際エルルが【土古代魔法】を使った後、詠唱と同じ感じで声を出していたが、それで何がどう変わったのかさっぱり分からなかったし。
うーん、と考えながら土を掘って出てきた装備品や骨をつまみ食い。掘った土は中身ごと集めて山にするのだ。エルルが。
『…………うーん』
その作業を一時中断して畑に近寄り、その緑の芽をじっと見てみるが……うん。ただの芽だ。エルルが呼びかけて、この畑には精霊が、少なくともその影響が出ている筈なのだが、さっぱり違いが分からない。
魔力の感覚は、最初が【霊体】だったからか比較的すぐ分かるようになったんだけどな。精霊の気配は分からない。何故だ。
「お嬢ー。流石にまだ食べちゃダメだからなー」
『いや食べないよ!? 精霊いるかなって見てたんだよ!?』
なお、その様子を見たエルルからそんな言葉が飛んできた。
エルルの中で私はどんなハラペコキャラになってるのさ!
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