第104話 8枚目:イベントのお知らせ
で、リアル1週間が経過した。収穫? 【幼体】のレベルがようやく半分……【未熟体】のレベルにまで下がった事かな……。
うん。野良ダンジョンの攻略を普通にしたり全力でしたりしても神殿のレベルアップに必要なアイテムはなかなか溜まらないし、精霊については今も気配すらさっぱりだ。
いや、まじで頭抱えてたんだよ。精霊に関するリアル素質が無いのか!? とかも思った。
「あー……お嬢」
『なーにエルル』
「ほら。あの、妙な変化した【吸収領域】があるだろ」
『あるね。思いっきりレベル上げに使ってるね』
「それにさ。吸われそうで怖いから、近寄れないって」
『…………マジかぁ…………』
まさかの犯人は【吸収領域】だったよ。進化して【吸引領域】になってるけど。なんだそれ。
とはいえエルルが直接精霊に聞いた話なのでまず間違いないだろう。【空間精霊魔法】が大丈夫なのは、空間の精霊は文字通り空間を越えて一瞬で避難できるから大丈夫なんだってさ。
という事で【○○精霊魔法】の習得が絶望的だと判明した。うーんこれはどうしたものか。いやまぁ【吸引領域】を捨てるという選択肢がない以上、【○○精霊魔法】(空間以外)を諦めるしかないのだが。
『まぁ怖いなら仕方ないか。(今の所)自分ではどうにもならないし』
さて1週間が経過したという事は、次の啓示(イベントのお知らせ)が来ているという事だ。春休み期間中に行われるイベントって何だろな、と思いつつ、大神(運営)から届いたメールを確認する。
……あー、そう来るかー。いや予想は出来た事だけど、そっちかー。
「お嬢、どうした?」
『次の啓示(お知らせ)が来たから確認してた』
「マジ? どんなのだった?」
『……私達への関係は、うん、その、ちょっと微妙、かな……』
「?」
その内容は、一言で言えば「第二陣歓迎キャンペーン」だ。
そう。現在は3月。来月は4月。私は高校1年生が2年生になるだけで大した違いは無いが、人によっては生活環境ががらりと変わり、VRMMO解禁となる人もそれなりの数いる事だろう。
なのでフリアドもそれに合わせてソフトを増産、サーバーを増強、初期ロットの倍である10万本を新たに発売すると発表した。これが新たなプレイヤー、第二陣となる。それでは恒例のバックストーリーの確認と行こう。
召喚者達の行動、状況、そして活躍を見た神々は、そこに当初の物を越える期待をかけた。と同時にその行動に枷をかける存在……謎の大嵐や移動距離と言ったものも確認した。
これらの事を話し合った結果、神々はより多くの召喚者をこの世界に招くことにした。もちろん召喚者が増えれば空間の歪みも増えるが、召喚者達が建てた神殿や試練もどきの出現・解消状況から、リターンの方が大きいと判断したのだ。
もちろん現在こそ活躍を見せている召喚者達も、最初は弱かった。なので、現在この世界に来ている召喚者達に、新たに来る召喚者達のサポートへ回ってくれるよう、神々は託宣を下すことにした。
という訳で、イベント期間は丸1ヶ月。種族レベル30以下のプレイヤーとパーティを組んでいる間はお互いに獲得経験値が1.5倍、レアアイテムドロップ率2倍に加え、レベル差による獲得経験値の減少ペナルティが削除される。
他にもクランの強化に必要なお金が数割引になり、同じくクランの強化に必要な「名声値」というものの獲得量が1.2倍に。そして初級に属する生産アイテムの生産経験値がこちらも1.5倍になり、ギルドのアイテム買取上限が撤廃される、との事だ。
新しくフリアドを始める人へのスタートダッシュは当然ながら、その新人をクランに誘ったり鍛えるのを手伝ったりする現行プレイヤーもちゃんとお得になるようになっている。まぁ、良イベントだろう。
「……、なるほど。俺らの場合、そもそもその新人が来るかどうかわからない、と」
『というかむしろ、まぁまずいないだろうなって』
そこまでお知らせメールを読み上げて解説したら、エルルは「私達には微妙」と言った意味を分かってくれたようだ。そう。このイベントはあくまで第二陣に向けてのものであり、第一陣……私達は、あくまで手伝いだ。
そしてその為には第二陣へ関わる必要があり、記憶をたどる限り、選択できる魔物種族の中に竜に関わる種族は、いなかった。まぁそりゃそうだ。仮にも世界三大最強種族の一角が、種族スキル3つで収まる訳がない。
だから今の所この谷から出るつもりのない私達が第二陣に遭遇するとすれば、
「なるほど。まぁ、そんなに増えるもんでもないしな」
『そういう事だね』
個人的には、同族は増えて欲しい。欲しいが……もし選ばれた種族が私より低位で、最初から【幼体】とかだったら、八つ当たりしそうだ。
誰だ今見事なフラグですねとか言ったの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます