第88話 8枚目:問題解決

 喜びのあまり連続宙返りとかしてしまい、その狂喜っぷりに流石のエルルもちょっと引いていたが、私は落ち着いたぞ。大丈夫だ。

 ……どやぁっとほぼ条件反射で固有名詞持ち掲示板に自慢してしまったが、後悔はしていない。そこに後悔は一切ない。なんかやたらと「第一候補」が食いついていたが後悔は無い。


「……で、お嬢。なんでまだ奉納用の箱庭作ってんの?」

『この箱で32個分の領域を作ってたから、まずそれを再現したいのとー。宝石鉱山とか作れそうだしね』

「さんじゅ……ってそれいくつあっても足りないやつ」


 今度はせっせと過去のイベントステージを再現しつつエルルに答える。そう、いくつあっても足りないんだよ。流石ボックス様だわ。最高か。最高だよ。

 あ、ちなみにあの箱庭奉納がかなりの貢献値になったようで、エルルのインベントリが一杯になりかけるという事態が発生した。マジか。いや、海産物とか例の砂とか結構一杯入れてるけど。


「建材だけあって嵩もでかけりゃ重さもあるからな……」

『なるほど』

「それにしたって量がおかしい。なんで雑魚一匹倒しただけで数千個も一気に入るんだよ」

『そこまでいったかー……』


 そんな訳で、神殿建設の方も大変捗っている。そろそろ転移機能が使えそうだ。必要な建材の量は加速度的に増えていく筈なんだけどな。むしろ建築スピードは加速している。流石ボックス様。

 どうせやるならめいいっぱい空間を連結し、元々の「庭」と同じぐらいにしてから現実にしたい。宝石鉱山とか釣り場とか色々欲しい物(というか地形)も増えたし、改めて「庭」全体の繋がりを見直すのもいいかもしれない。

 あぁ、久しぶりだな、この感覚。何を配置して、どういうデザインにして、どことどう繋ぐのか。使える区画が増えた時は、それはもうわくわくして画面と睨めっこしていたものだ。


「おー嬢」

『あ、エルルおかえり』

「ご機嫌そうなとこ悪いんだが、試練もどきが出なくなったぞ」

『……えっ』


 えっ。




『そりゃあれだけ乱獲すれば、発生が落ち着いてきたら無くなりもするだろ』

『いい稼ぎ場だったんだけどなぁ……』


 野良ダンジョンが出なくなってしまったのであれば、まぁ言い方は悪いが人魚族のところに用は無い。私の海中活動訓練がてら、海水や砂といった海中環境を再現するのに必要な物を【ミニチュア化】で回収するぐらいだ。

 なので作りかけていた箱庭、過去のイベントステージの再現を完成させて奉納し、ボックス様からまたいくつか「異空の箱庭」を貰ったところで、次の種族の場所へ向かう事にした。

 という訳で一応人魚族の王様や知り合いになった人魚族の人達に挨拶して、快適快速エルル急行で空の旅。行き先はエルルにお任せだ。イベント? あぁうん、まだ3日ぐらい残ってるけど、急いでやらないとって事はやったし。それ以外のことはイベント終わっても出来るし。


『お嬢も何となく察してると思うけど、妖精族にしろ人魚族にしろ、竜族と友好的な相手だった訳だ』

『まぁそれはそうだろうね?』

『で、今から行くとこも当然友好的な種族で、今度は割と戦闘力が無いって意味でヤバイ種族だな。落ち着いたから大丈夫だとは思うけど』

『何で来なかったのって怒られない?』

『その辺は啓示で上手い事説明が入ってる、筈なんだけどな。人魚族がヤバかったのは本当だし』


 まぁね。水場が全部アウトになったらヤバいし、実際危ない所だった。その辺は流石に伝わってるか。


『ただ、発生が抑制されたからって言っても、既に発生してる試練もどきが消える訳じゃ無い。という訳で今から向かうのは戦力的にはやや不安な歌鳥族だ』

『かちょーぞく?』

『歌う鳥と書いて歌鳥族』

『なるほど』


 生まれついての吟遊詩人かな?

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