第65話 7枚目:解決と情報交換

「あ、この降って湧いた系お嬢やっと起きたか!!」

「キュゥー!!(うんおはよぉあああー!!)」


 籠の中でもそもそと身動きしながらしばらく待っていると、上空に影が差した。見上げるとそこには巨大なドラゴンの姿。一度輪を描いたドラゴンは下降して、地上5mぐらい? の辺りで光を伴って人の姿へと変わった。

 まぁもちろんそれはエルルな訳で、空中で【人化】するという超スタイリッシュな着地を決めてくれた出来るイケメン士官軍ドラゴンは籠から私を持ち上げ……顔をこねくり回しにかかって、先程の会話となる。

 そのまま愚痴を吐き出すテンションでその後に何があったかを説明してくれた。スタンピートの原因は予想通りティフォン様で、傷は例の捧げもので綺麗に治ったとのこと。その2日後に目を覚まし、更に2日程エルルと話しつつ、今日何処かへ移動していったらしい。


「始祖相手にお嬢達の事や例の啓示の事を説明すんのすっげー大変だったんだからなー?」

「キュプキキュ(それは何というかお疲れ様でしたっていうか寝落ちしてごめんっていうかそろそろ離して)」

「ちょっとは俺の苦労を察してくれませんかねぇ!?」


 なお、その辺に際して妖精族の女王様との謁見もあったとの事。当然そこでも説明をしなければならない。うーん胃痛。

 で、そこまでを私の顔をこねくり回しながら愚痴っぽく説明したエルルだが、ようやく気が済んだのか、その場に腰を下ろした。すちゃ、とブラシを取り出してブラッシングを開始する。もちろん私の。

 エルル。君のストレス解消法って私の顔をこねくり回すのとブラッシングする事なのかい。別にいいけど。


「でー、始祖から現在の竜族の居る場所とか、俺の状態とか、やった方が良い事とか、お嬢の食べる物とか勉強の方向とか、その辺も全部聞いた訳だ」

「キュ(ほうほう)」

「反応が薄いな。まぁ、お嬢の様子見る限りその辺はもう聞いてたか。という訳で、どうする?」

「キュ? キュゥ?(うん? 自分の分しか聞いてないけど?)」

「まじかー……」


 どうやら【竜眼】と【竜鱗】によって何かしら私には変化が起こっているらしく、エルルは納得顔だ。そして当然、その納得には誤解があるので即訂正しておく。

 なーんで誰もかれも俺に説明丸投げするのかねぇ。なんて言いつつもエルルは説明してくれた。


「現在の竜族は、2つ隣の大陸に固まってるらしい。だから行くには俺でも結構時間がかかるだろうな。まぁ行けなくは無いけど。これがまず候補1」

「キュ(うんうん)」

「で、俺の状態だけど、どうも俺って言うか俺の時代? の竜都が、空間の狭間みたいなとこにそのまま封印されてるらしい。で、俺だけがお嬢に引っ張り出されたんだと。だから、その封印を解くってのが候補2」

「キュ(ふむふむ)」

「やった方が良いのは、まー種族巡りだな。例の啓示の事もあるし。確かそろそろ事前に防げる時間の限界だったよな? まぁこれも旅って事で、候補3」

「キュ(なるほど)」

「んでお嬢の食べる物と勉強の方向だけど……若干の危険はしょうがないとして、人の街に行ってみるのが多分一番。大神殿だっけ? そこに行くだけでもだいぶ違うんだろ。それに、一番本が残ってるのは人の街だし。候補4」

「キュ(うんうん)」

「で、この4つの内どれにするっていうか、どれから動く? って話だ」


 こうやって真面目に説明役をしてくれるから丸投げられるんじゃないかなぁ。とか思いつつ、考える。んー、正直一番気になるのはエルルの時代の封印なんだよな。

 けど、緊急度的に一番高いのは種族巡りだ。下手すれば滅ぶ種族が出るとか冗談じゃない。出来れば並行して成長の方も進めたいけど、これはあくまで私だけの事だし。

 ……でもなー。大神殿だけはなー。行っておきたいんだよなー。特にインベントリ。他にも機能はあるけどとにかくインベントリ。


「……キュ、キュッ(人の街にちょっとだけ寄って、種族巡りかな)」

「ちょっと寄るだけ?」

「キュ。キュー(うん。大神殿だけ)」

「……そこまで推すって事は、お嬢達にとってほんと大事な場所なんだな」

「キュキュ(だってインベントリが使えないのは不便過ぎる)」


 そう答えると、ぴたっとエルルの手が止まった。うん? どした?


「は? え、ってことはマジ? お嬢今インベントリ使えねーの!?」

「キュ(そうなんだよね)」

「そりゃだめだわ。外せないな。始祖に会ってもダメだったのか」

「キュゥ(そっちはティフォン様の奥さんと合わせて成長制限だったよ)」

「待て成長制限ってどういう事だ!?」


 ……どうやらエルルからしても、現状の私は大分アレらしい。

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