第37話 5枚目:レベリング準備

 議題:死者から生者への進化ルートとは

 提案者:第三候補

 参加者:第一、第二、第四、第五候補

 結論:いや普通に子供で良いんじゃないの、母親が用意できるわけでも無し


「ヴー(だよねー)」


 予想通りの結論に、お礼を言って掲示板を閉じる。そうだよなぁ。生まれるとこからやり直すには母親が要るよなぁ。

 まさか胎児の状態で出現するわけにもいかないだろう。それこそ人造人間みたいなポットが必要とかならともかく。

 それにしたって、管理を行い成長させる「誰か」が必要なのだから、普通はポットに入るまでは必要でも、そこで一気に成長するはずだ。


「ゥヴ……(お陰で引っ掛かりが言葉に出来たよ)」


 ふ、と息を吐き、天を仰ぐ。


「ア゛ア゛ァ!! ア゛ア゛ー!!(ドラゴンだから親いなくても生まれられるじゃん!! 卵形態があるじゃん!!)」


 そうだよ卵だよ! 人じゃなくてドラゴンなんだからそりゃそうだ!! 残された卵が人知れず孵るとか、最強物ファンタジーあるあるじゃないか!!

 ということは、まず間違いなくあの寝てる間は勝手に周りのアイテムを吸収する仕様も卵形態の時に成長するほぼ唯一の方法だろあれ、あっぶな、周りの財宝アイテムを吸収しつくす前に気付いてよかった!


「アンデッドの声!?」

「探せ、まだほかにも居たのかも知れん!」


 あっヤベ。




 さてそうなると話は変わってくる。具体的には先が長いと思っていた【死体】のレベルが、時間制限の表示へと変わるという事だ。不思議なもので、リミットが決まるとそこまでは途端に短く感じてしまう。

 実際、今までの流れからして【死体】よりスキルレベルの高いマイナススキルである次のスキルを上げ切るのに必要な量の経験値、それに相当する財宝アイテムを集めるとなると大分ギリギリだ。


「ヴゥ……(ただでさえギリギリだって言うのに)」


 ……ギリギリなのだが、その上にもう1つ悪い事情は積み重なる。実は年末のカウントダウン前後1時間づつ、合計2時間がログイン可能時間に追加されていたのだ。

 当然少しでも時間が欲しい私は参加する。お泊りでこそないが、それでも移動時間を含めてログインが5回分になるのは大きい。まぁそれに、強制ソロな引き籠りでも、年末から年始へのカウントダウンへ何か演出があるのかなと、ちょっと期待した。

 で、実際そのカウントダウンの瞬間に何が起こったかというと……。


「ヴゥウ、ゥウ……(あの仮称ドラゴニアンの儀式か何か何だろうけど、余計な事を)」


 ぶわぁっ、と、遺跡(?)の方から光の帯が広がって、一発昇天。しかもそこからしばらくキラキラとした光は滞空して、リスポンキル状態になったのだ。……一部死亡回数依存のスキルレベルがすごい勢いで上がった。

 そしてそれが収まって改めて探索してみると……うん。たぶん、エリアの状態がリセットされた、んだと思う。かじった筈のドラゴンの骨とか、掘った筈の穴とかが元に戻ってたから。

 つまり、だ。一生懸命集めた財宝の山も、元通りになっている訳で。


「ゥヴ……(しかも見回りも範囲が広がってるし)」


 という訳で、大幅に移動した場所で再度一からやり直し、となってしまった。もう一度やり直しになったら間に合うかどうか全く自信が無いので、ログイン1回分を全て移動に費やした場所で財宝の山を作っている。

 うっかり死んでリスポーンしたらそれこそ時間のロスが大変な事になるが、そこは慎重に行動することでカバー。幸いというか何というか、モンスターの姿は無いので安心して作業できる。

 あとは……今更ながらこの洞窟だか崖の底だかには岩がむき出しの場所と土が積もっている場所があって、その土は掘り返しさえすれば食べれるし寝てる間の吸収も出来る、れっきとしたリソースだというのが分かったくらいだろうか。


「ゥウ……(掘り出すとこっちはこっちで骨とか装備とか出てくるし)」


 だからまず土を掘り返し、周囲からもかき集めて丘のような土台を作る事にした。ただ出てくる骨や装備の関係でも【○○の因子】系のスキルは経験値が入るみたいなので、ドラゴンの骨も引っ張って持ってきた方が良さそうだ。

 もちろん一番高いのは【竜の因子】。【竜の血脈】というスキルもあるんだしここは譲れない。何よりドラゴン好きだし。いいじゃんドラゴン。初期種族の系譜で進化したいのもある。

 問題は、【死体】のレベルの下がり方が思ったより早いことだ。……【骨体】や【霊体】の時にこれぐらいの勢いで下がってたら素直に喜べたのになぁ。

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