第36話 5枚目:謎の仕様

 そして次のログイン。おや、周囲に財宝が無いぞ?


「ゥー……(まぁそう上手くはいかないか)」


 ログを確認してみると、やっぱり見つかって捕獲されて、浄化系の何かで死んでいた。まぁそうなるよね。

 という訳で、現在はリスポーン地点であるひときわ大きなドラゴンの骨の中だ。これで諦めてくれればいいけど、当分は遺跡(?)と逆方向を探索することにしよう。

 と思ったところで、ログに残った、見つかるまでのアナウンスに目がいった。そのまま首を傾げる。


「ウゥ……。ウー……?(しかし何だこれ。『糧を吸収しました』?)」


 はて、とステータスを開いてみると……うわ、何だこれ。ずらずらと、明らかに習得した覚えのないスキルが並んでいた。使った覚えのない【威嚇】や【錬金】のレベルも上がっている。マイナススキルは……【死体】が、多分だけど10は下がってるんじゃないだろうか?

 何だこれ……と色々と確認してみるが、よく分からない。ヒントとなるのは先ほど見たログに残っていた『糧を吸収しました』という文章だが、そもそも糧ってなんだ。


「ゥ、ヴゥ……。ゥウ……?(いや、待った。もしかしてこれのせいか?)」


 頭を抱えたくなる状態で、それでもデスペナルティとしてスキルの経験値獲得量がほぼ0になっている間は動けない為、スキルの一覧を眺めていると、ふと目が留まった。

 それは最近獲得したスキルで、その条件が良く分かっていない【吸収蓄積】と、魔力結晶をかじったら習得した【魔力吸収】だ。この2つのスキルレベルが、他と一線を画す程一気に上がっていたのだ。

 スキルソート機能は無いので慎重に数字を見ていくと、次点で上がっているのが【消化強化】、【悪食】、【大食】の3つ。どれも本来なら食事をするときに効いてくるスキルだ。


「ウ……、ウヴ……(でも、ログアウト中に食事なんてできる訳が無いしなぁ)」


 どういう事だろう。

 けどまぁデスペナルティも開けたようだし、まずは前回のログアウトの状況を再現するべきだろう。つまり、セーフエリアの外で、財宝に埋もれてログアウトだ。

 それで再度ログインして、周囲の状況を確認しよう。今度こそは、安全な状況で。




 という訳で、12時間を財宝収集に全振りしてからログアウト。そしてログイン。もちろん場所はひときわ大きなドラゴンの骨から始まって遺跡(?)から離れる方向の、そこそこ大きなドラゴンの骨の中。

 さて結果は、というと。


「……ウ(えっ何この砂の山は)」


 とりあえず顔を上げて、体の上からざらっと滑り落ちていったものに目が点になった。財宝はどこ行った?

 疑問はそのままステータスを確認。やはりというか何というか、ぐっと各種スキルレベルが上がっているし、持っていなかったはずのスキルがそれなりの高レベルで入っている。

 周囲を見る。財宝のあった場所を、砂をかき分けてみても何もない。……うん。状況的に、この砂が財宝だったもの、なのだろう。


「ウゥ……?(えぇぇどういう事?)」


 砂を触ってみても、特段何ともない。ただの砂だ。色は、白? だろうか。何せ【暗視】頼りなもので。

 スキルを入れ替えて【鑑定】を使ってみても、大した情報は出てこない。……「ただの砂」って、そりゃ見れば分かる。ただの砂じゃなかったから頭を抱えている訳で。

 けど、まぁ……うん。


「ヴゥ……(多分この仕様も後々必要なんだろうなぁ)」


 そんな気がする。

 さて現象を整理すると、まず、財宝が砂に変わった。そしてスキルがガン上げされていた。私はログアウトして寝ていた。この3点だ。

 という事は……寝ている間に、財宝の力を吸収した、とか……だろう、か?


「……ゥ、ウゥ……(あり得るし捗るんだけど、何でこんな仕様があるかが問題だ)」


 レベルが楽に上がる方法を見つけて嬉しい反面、こんなに楽なら何か裏があるのでは? と思ってしまう。ふ、魔物プレイヤーとしての不遇に慣れ切ってしまった……。

 は、ともかくだ。あり得るとするなら……次の進化だろうか? しかし、【死体】の次は【幼体】なんじゃないのか? 流石に掲示板にも進化情報は載ってないし。

 …………なーんか不安になって来たな。


「ヴゥ……(固有名詞持ち掲示板で聞いてみよう)」


 微妙な引っ掛かりが解消できなかったので、一応相談してみる事にした。

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