第38話 6枚目:3回目進化

 岩の地面に当たるまで掘り返した土が2mぐらい。周囲からかき集めて詰んだ土が3mぐらい。その上にドラゴンの骨を乗せて、武器と金貨で隙間を埋める。普通に上に乗れるようになったらまたドラゴンの骨を乗せて、金貨と魔力結晶で隙間を埋める。

 ドラゴンの骨を運ぶのが重労働だった。お陰で【運搬】とか【怪力】とかのスキルが生えたけど。……そうか。【怪力】って後天的なスキルだったんだ。てっきり先天的なスキルだと思ってた。

 スキルの数がすごい事になってしまったのでいちいち見てられないが、とりあえず【死体】のレベルが一桁になったので、せっせと自分で作った財宝の山をよじ登る。


「ヴゥ……(しかし我ながら頑張ったな)」


 その頂上に辿り着いて一息つく。……この動作だけでいつの間にか生えていた【登攀】が上がって、それにつられて【死体】もレベルが下がっている。危ない、もうちょっと高さが有ったら途中で進化が始まってたかもしれない。

 もちろん残り少ないスキル上げで積んだアイテムを吸収するのも勿体ないので、ガサゴソと自分で作った山の中に潜り始めた。これでも【穴掘り】とかのレベルが上がるし、身体を動かしている扱いになるのか【死体】のレベルも下がるのだ。

 そうして、金貨や魔力結晶をかき分けてその中にしばらく潜っていると、ようやく【死体】のレベルが0になったらしい。



[スキル【死体】のレベルが上がりました

スキル【死体】がスキル【卵体】へ変化します

進化の条件を満たしました

進化が自動実行されます

スキル【半実体】がスキル【幽体離脱】に変化します

スキル【浮遊】のロックが解除されます]



 予想大的中……っ!!

 いつもながら慣れない感覚の後にあったのは、身体の感覚が無く、ぼんやりと暖かさを感じるだけの状態だ。なぁにこれぇ。……まぁ、言うまでもなく卵の状態なんだろうけど。

 そして当然声も出せないので、メニューを開いてステータスを確認することも出来ない。あ、いや。そっちは無言でも開けたっけ?


「……(あ、いけた)」


 たぶん、見た目にはごそごそ卵が揺れたように見えるんじゃないかな……。

 それはそれとしてステータスをチェック。うん。種族が「ノーエレメント・ドラゴン・パピー・エッグ」になっている。卵かぁ……。予想通りで良かったというべきかこんな予想当たってほしくなかったというべきか。

 で。問題の【卵体】のレベルは驚きの、240。……ちょっと待てや。


「…………(仕様に気付いて無かったらどうなってたことやら)」


 【死体】の倍からある訳だがどうなってるんですかねぇ?




 ステータスを改めて確認すると、種族レベルが331まで上がって進化したらしい。端数があったのは、まぁしょうがない。……ちょっと勿体ない気はするが。そして累計種族レベルが561となり、スキル枠が29になった。……400台以降は100レベルで1増えてる事になる。

 レベルキャップがどこか分からないが、この調子でレベルが上がるとすると【卵体】を越えたら累計種族レベルが4桁の大台に乗りそうだ。……何だろう。キリの良い所のキャップに引っ掛かって経験値が大変な事になるような気がする。

 で、その【卵体】のレベルの下がり具合……あるいは成長具合は、というと。


「……(何となく分かってたけど、やっぱり足りなかったか……)」


 周囲はどうやら【霊視】や【心眼】で認識しているらしく、グリッド線とぼんやりした色でしか見えない。が、それでも、あれだけ積み上げた筈の財宝アイテムが全部砂になっているのは分かった。

 240もあった【卵体】のレベルは数日経過の現在87まで下がっている。それに合わせて【○○の因子】各種含む推定吸収したアイテム由来のスキルレベルもいい加減な勢いで上がっているから、前の種族レベルを超える日も近そうだ。

 さてそれはそれとして、問題はここからどうするかだ。現状【卵体】はレベル87。周辺に吸収できそうなアイテムはもう無い。どうにかして動く必要がある訳だが、文字通り卵なので手足はもちろん自力で動くのはとても難しいっていうか不可能だ。


「…………(で、あのロック解除アナウンスになるとか誰が思うよ)」


 今までの進化アナウンスでは、スキルの変化はともかく、ロックの解除はアナウンスが無かった。なのに今回に限って、強調するようにアナウンスが流れた。つまり、詰まない為には必須のスキル、という意味だ。

 なので、スキルを意識しつつ集中。今は砂に埋まっている状態だから、こう、ぐぐぐっと。卵なんだから丸い、丸いんだから砂は表面を滑り落ちていく筈だ。だから大丈夫。

 集中して、動きをイメージすることしばらく。


「……(あ、いけたか)」


 ごそ、と周囲の砂が動いた感じがした。そのまま集中を継続すると、ざらざら、と砂が上から下へと滑り落ちて……もとい、卵姿の自分が浮かび上がっていくのが分かった。

 そう。【浮遊】だ。【霊体】時代に自動でくっついていたスキルだが、実体が手に入った時にロックされてしまったスキルだ。ロッククライミング中に使えればどれほど良かったことか。

 けどまぁ、これで僅かなりと移動して、ドラゴンの骨なり転がってる財宝なりを吸収して【卵体】のレベルを上げろ、という事なのだろう。そう言えばもう一つ使えそうなスキルが変化して現れていたが……うーん……。


「…………(【魂体操作】はレベルが上がってないからなぁ)」


 ま、このタイミングで出てきたという事は、いずれ必要になるという事なんだろうが。

 なお使い道が全く思い浮かばないという点はスルーだ。いいね?

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