第35話 5枚目:周辺探索
まぁ新規開拓の冒険だ。仕方ない。諦めて探索しよう。
5分ぐらい考えて出した結論がこれだった。だって仕方ない。時間は有限なのだ。とりあえず、しばらく遺跡(?)には近寄らない方向で。
……え、異種族間交流はどうしたって?
「ゥウ……(ゾンビから生きた竜にならないと討伐待ったなしだし)」
問答無用で狩られるのはノーセンキューだ。それでなくても特殊なデスペナルティが発動するかどうか恐怖だっていうのに。リスクは避ける主義なのだ。危機回避は基本。
そういう訳でうろうろと暗い中を歩き回っている……のだが、どうやらこちらは僅かに毛色が違うらしい。具体的には体感の体力の削れ方が大きい。多分、環境の違いが大きくなっているんだろう。
とりあえず【精密動作】を一旦控えに回し、【超回復】をメインに持って来る。そして、ちょいちょい休憩を挟んで【瞑想】を発動させるようにした。……体力の収支は、ギリギリ合っている筈だ。
「ウー……(スキルのレベリングとしては良い感じなのがまた)」
とりあえず、【環境耐性低下・大】をさっさと無くしてしまおう。今ならそう難しい事でも無い筈だ。そしてこれが耐性上昇になれば、ようやく真っ当な自由が増える。
カリカリと金貨らしきものをかじり、ガジガジと魔力結晶に噛み付き、あぐあぐと竜の骨に挑戦しながら移動する。【大食】のお陰で、満腹度の上限は上がっても消費ペースも上がってるから、食べながらでないと移動できないのだ。
……まぁ、だから金属でも土でも食べれるように、わざと食べて回ってたんだが。その成果は【可食・○○】というスキルを参照。
「……ウゥ(草や骨は普通に食べれる判定なのかスキルが入らなかったな)」
草は時々毒物があったから、出来れば狙って食べて耐性系か可食系のスキルを手に入れたいところだ。だって絶対役に立つじゃないか、特に限界状況の多い魔物プレイヤーなら。
しかし、洞窟にしても本当に広いな。……この暗さと足元の岩の感覚で洞窟だと判断してたけど、もしかしたら深い谷とかの可能性もあるか? 上見上げても何も見えないけど、単に目が悪くて見えないだけの可能性が?
「……ゥー(うわぁ普通に有り得る)」
となると、本当にどこだ此処は。分かりかけた現在位置の情報が振出しに戻った感じだ。そのくせ厄介ごとの気配はマシマシという。頭が痛い。
とかやっている間に【偏食・宝石】のペナルティで積み重なったデバフが効いてきたのか、気を付けていても足取りがふらふらし始めた。仕方ないので周囲を見回し、大きなドラゴンの骨の中にお邪魔する。
んー、セーフエリアじゃない。今の所近くまで来た感じは無いからとりあえずはいいけど。
「……ゥウ(真面目にログアウトをどうしようか)」
セーフエリアではない場所でログアウトすると、しばらくの間空っぽの身体がその場に残る。そして、ログインしてもすぐに動けない。危険極まりないなんてものではないのだ。
だから可能な限り、セーフエリアを作り出す効果のアイテムであるテントは持ち歩くべし。というのが初心者向けの情報として大々的に書かれてある程だ。……まぁ、そんなものは手に入れられないのが魔物プレイヤーな訳で。
となると……確か【偽装】とかその辺りのスキルで、発見率を下げた状態ならマシ、みたいな、緊急回避の方法として挙げられてた筈だから……。
「ウー……?(その辺の金貨とか武器とか魔力結晶に埋もれてみるとか?)」
……まぁ、普通に無防備にログアウトするよりはマシだろうか。体のだるさという形で出ていたデバフの積み重なりもある程度治ってきたので、起き上がって移動する。
そして、その辺に落ちている物、時々生えている植物を引っこ抜いたりもして、さっきお邪魔した骨の中へと運び込む作業を開始した。どうやらこの行動も何かに引っ掛かっているようで、【格納】スキルがじわっと上がるらしいのだ。
さてそれはともかく、ドーナツ状に金貨や剣や魔力結晶や弓やらを積み上げ、根っこごと引っこ抜いた草を埋めなおし、財宝のババロアのようなものを作り上げる。うーん、これだけで一財産と考えると豪華な隠れ蓑だな。
「ウゥ……(さてこれで見つからなければいいけど)」
そしていよいよ差し迫ったログイン限界を前に、財宝のババロアの真ん中へと潜り込む。あ、結構いい気分もとい良い感じかもしれない。少なくとも周りからは単なる財宝の山にしか見えないだろう。
それが、ドラゴンの骨の中にあるのは若干違和感かも知れないが、うん。時間が稼げれば良しという事で。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます