第34話 5枚目:初遭遇
晴れて(?)肉の身体を手に入れた私だが、もちろん一筋縄ではいかなかった。何が大変って、自分の体が重い。そりゃもー重い。骨の身体の方が便利だったんじゃないかぐらいは思う。
さてそれはそれとして、行動半径がぐっと狭まりつつもそろそろ年末の声が聞こえてくる時期だ。もちろん期末テストは乗り切った。成績が落ちてゲームが出来なくなったら本末転倒だ。
で、大体月1でイベントを開催している運営が、年末に何もしないとは考え辛い。と思っていたところに、予想的中でイベントのお知らせが来た。
「ウゥ……(異種族交流イベントねぇ)」
それは年末から年始にかけて、3週間という長めの期間で行われるイベントだ。どうやらゲーム内の暦でも年末年始に相当する節目の時期のようで、世界にバラバラになっている各種族の動きが活性化するらしい。
で、各種族の動きが活性化すると、それを狙って、或いは中てられて、魔物の活動も活発になるのだそうだ。なので、
まぁつまり、異種族との遭遇率と魔物の出現率上昇、及びそれに関するサブクエストの発生率上昇、という事らしい。
「ウゥー(どっちにしろゾンビだから交流とか無理なんですが)」
そもそもこの厄い気配しかないこの場所にどの種族が来るんだっつー話ではあるが。ま、今回もイベントには関係ないとして、レベル上げに勤しむことになりそうだ。
年始には親戚の家へ行くというミッションがあるが、それは何とか冬休みに入ってからのフルログインで取り返したいところだ。……もっとも、【死体】のスキルレベルが高すぎてちょっとめげそうになっているが。
けど、幽霊が骨になって、そしてようやく肉の身体を手に入れたんだ。生きた体までは多分あと一歩。そうすれば【人化】も【生命力・極】も解禁される筈……!!
「ゥー! ウー!(イベントに参加できない程度で負けるか! やってやるぞー!)」
……まぁ、正直。
以前のダンジョン実装イベみたいな、魔物プレイヤー優遇イベントが、もうちょっとあってもいいんじゃない? とは、思った。
とか考えたのはフラグだったんだろうか。
「逃がすな! 追え!」
「くそ、どこ行った!?」
「小さい上に意外と素早い……っ!」
「この聖なる地になんてことだ!」
「不浄なアンデッドめ……!!」
酷いと思わない? これ、全部私に言われてる事なんだけど。
いや、最近は全然力の入らない肉の身体にも慣れて、主に遺跡(仮)をうろちょろしてたんだ。形の残ってるものの方が少ないんだけど、やっぱり文明的な物に囲まれてると落ち着くというか。骨よりマシというか。
そんな訳で一年が終わるまであと何日、というタイミングでもまた散歩をしていた訳だけど、そこでこう、物音が聞こえたわけだよね。何だ何だと顔を出したら、ドラゴンが直立して服を着た感じの人? 達が居てさ。
「ゥ(わぁヒトd)」
「アンデッド!?」
「!?」
初遭遇にテンション上がってうっかりやらかすって、うん。ウッドモンキーのプレイヤーから学ばなかったのかと……。
そこからひたすら追い回されて、追い回されて、命からがらドラゴンの骨しかない場所まで逃げて来た訳だ。いや、捕まっても最悪で死に戻りするだけなんだけどさ。
どうにかリスポーン地点……とは、うん。全然違う場所で一息ついて、【暗視】があってもまだ薄暗い周囲を見回した。
「……ウゥ(さてどうやって戻ろうか)」
いや、戻る必要があるかって言ったらまぁ無い。無いが……もしログアウトしてからあのヒト? 達に見つかったら、空の身体はあっさりとその命を刈り取られる。そこ、アンデッドだから命は無いとか言わない。
なので、出来ればあの一際大きいドラゴンの骨の内部……正確にはそこにあるセーフエリアに戻りたい。……たぶん、それにも意味があるんだろうなーとか薄々考えつつ、だが。
幸い(?)この体は鼓動とか呼吸とか、絶対に立てざるを得ない音は存在しない。匂いや気配……は、逆に見つかりやすい、かも知れないが。
「ウー……。ウー……?(ちょっと待てよ。もしかしてここ反対側か?)」
そんな感じで、出来るだけこそこそと動き始めて……ふと、自分が辿ったルートを思い出して、状況の悪さを追加することになった。
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