第32話 4枚目:周辺情報
現在地の分類が分かった所で具体的な場所は分からない。つまりやる事は変わらないという事だ。
と言っても、【暗視】がレベル10を越えてからはちょっと楽しくなってきた。具体的には、太古の竜の墓場(仮)の中を、うろちょろと歩き回れるようになったのだ。
まぁうっかり躓いたりするとバラバラ白骨死体になるし、お腹が減って魔力結晶を食べると【偏食:宝石】が加速したりするし、環境が変わったに該当するのかじりじり体力が削れていく感覚があるが。
「コツコツ!(自由に動けるのってたーのしー!)」
……なんて低いスタートラインだとか言うな。マイナススキルがごっそりついた魔物プレイヤーはこんなもんだ。たぶん「第一候補」と「第二候補」は私より酷い。……それ以外は聞かないで欲しい。
ともかく。太古の竜の墓場(仮)を歩き回ると、色々と発見があった。具体的には、文字通り宝の山だったのだ。
「コツコツ(たぶん骨そのものも素材としては相当良いんだろうけど)」
まず生前ドラゴン達が貯め込んだのか、死んでも離したくないと持ち込んだのか、宝石や金貨らしきものが足の踏み場もないほど転がっている。そして魔力が濃いのか淀んでいるのか、色とりどりの水晶のような強い魔力を感じる結晶があちこちに生えている。
で、盗掘者なのか挑戦者なのか、時々ドラゴン以外の白骨死体も転がっている。ほとんどの場合骨すら粉々なので、何かにやられて落ちたとかかもしれない。その装備品がまたごろごろ。
あとは、どうにも貴重そうな植物や苔がそこここに生えている事だ。今の私が食べておいしいと思うって、うん、相当だと思う。
「コツツ……(ただその分到着と脱出の難易度がなぁ)」
土や石、植物、骨を食べて偏食スキルのレベルを下げつつ、身体を動かして環境を変え【環境耐性低下・極】のレベルを下げる。マイナススキルの克服の方が明らかに種族レベルの上げ方としては効率がいい。
そして現状、魔力についてのダメージ元には事欠かないから、【魔力耐性】及び【属性耐性】も可能な限り上げてしまいたい。控えに回しても効果があるとはいえ、鍛えられるときに可能な限り鍛えておくべきだろう。
もちろん大人ドラゴンの骨という最強素材がある間に【物理耐性弱化】も解消しておきたいし、あわよくばそのまま鍛えたい。耐性の有無って本当大事だから。いざという時特に。
「コツコツ(やる事が良い感じで増えてきた)」
……まぁ、実際やってるのはバラバラ白骨死体になりつつうろうろしては、こけたり体当たりしたり、自滅ギリギリを狙ってダメージを受けるという、作業じみたスキル上げなんだけど。
多少動けるようになるだけで、随分と気分が違うもんだ。欲を言えばせめてもうちょっと視界が広がらないかな。【暗視】はまだまだメイン枠で頑張ってもらおう。
それに確か【暗視】って進化した筈だ。レベル50だったか100だったかは忘れたけど。
「コツコツ!(まぁ地味でも何でも頑張ろうか!)」
先に素晴らしい未来が待っているのは分かってるんだ。目指せ、メールに添付されたまま放置中のスキル書使用!
そしてスルーしたイベントに引っ掛かる事も無く過ごしていた、の、だが。
「…………」
リスポーン地点であるひときわ大きな竜の骨の中を起点として、活動領域を広げていくと、段々と現在位置の詳細が分かってきた。……同時に、その様子の奇妙さというか、違和感も分かってきた訳なんだけど。
まず、ドラゴンの骨がたくさんある。これはまぁ分かっていた。だから竜の墓場だと思ったんだけど。けど……墓場にしてはちょっと、うん。骨のバリエーションがあり過ぎじゃないかな、という気がしてきた。
具体的には、リスポーン地点から離れれば離れる程、戦闘による傷の残ったドラゴンの骨が増えてきた。
「……コツ……(これとか明らかに首を落とされてるし)」
で。戦闘による傷の残った骨、というのが、ドラゴンに限らず、むしろドラゴンの骨よりヒトっぽい骨の方が多い、という事だ。もちろん、リスポーン地点を離れれば離れる程増えている気がする。
明らかに上半身と下半身がぶった切られる形で散ってる骨とか、胴体部分が粉になってる骨とかあるんだよね。これ、どう考えてもこう、ざくーってやられたり、踏みつぶされたりしてる。
そして別の方向に進むと……段々と、うん。人工物の気配がしてくるようになった。土の地面が石畳になり、石畳の両側に建物らしい石積みが出てきて、よく見たら家具っぽいものの残骸が見つかるようになってきたのだ。
「コツ……(どういうことなの)」
竜の墓場、という呼称も仮ではあったけど……これはむしろ、墓場というか……戦場跡地、のような?
しかも、ただの戦場跡地じゃなくて……結構大きい都市での、派手な市街戦のような?
あと、付け加えるなら……元建物の廃墟や、砕けてしまった家具の大きさからして……普通に、ドラゴンも使えそうな感じ、なんだけど。
「コツ。コツコツ?(やだぁ。もしかして滅びた竜の都だったりとか?)」
ちょっと初期地点にしては色々詰め込み過ぎじゃないですかねぇ!?
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