第31話 3枚目:現在地情報

 どうやら『フリーオール・アドバンチュア・オンライン』では、最初の1回を除くと大体1ヶ月に1度のペースでイベントが行われるようだ。そのお知らせが来たのは10月の終わり頃、開催時期は11月の頭として、新しいイベントが行われるらしい。

 流石にそろそろ部屋にいてもログインする時の寒さが大変になってきたので、空調が欠かせない時期だ。……真冬になった時の事は、怖くて考えられない。

 さてそんな訳で次のイベントが始まった訳だが。


「コツ(関係ないなこれは)」


 詳細が発表されるなり、そう思ってすっぱり諦める事にした。


 何故なら──今回のイベントは、生産イベントだったからだ。


 詳しい事を言うと、何だかこの世界における時期的なアレソレが『スターティア』にやって来るらしく、『スターティア』周辺で特別なアイテムが手に入るようになるようだ。若干時期はズレるが、ハロウィンにかけているらしい。

 で、そのアイテムを集めて生産を行い、それで祭りを行うのだそうだ。上質なアイテムを作ったら王様から褒章が出るとか、その作ったアイテム自体が有能だとか、限定レシピが貰えるのだとか。

 つまり。『スターティア』にまだ辿り着けない現状、一切、全く、関係ないのだ。


「コツコツ(今回は見学だけの特別措置とかが無いみたいだし)」


 一応公式HPに乗っている情報は全部目を通したが、うん、見事に引っ掛からない。実質魔物プレイヤーお断り仕様だ。……なお、全域に特殊アイテムが出現しても、生産活動できないからやっぱり意味は無い。

 さてそんな訳で、ようやく種族レベルが上がってレギュラー入りした【暗視】を鍛えるべく暗闇の中に目を凝らす。ぼんやりと、そう、なんとなーくぼんやりと、見えるようになって……


「コツ!(きた気がする!)」


 ……先は長い。




 イベントをスルーしつつ【暗視】の訓練をメインにしていると、スキル枠に入れただけあってガンガンレベルが上がっていった。お陰で何とか色の違いぐらいなら分かるようになってきた。やったぜ。

 で、他の感知系スキルと合わせて、ぼんやりとだが見えてきた現在地、というか初期地点。まず、洞窟だ。そして魔力をたっぷり宿した色とりどりの結晶のようなものがあちこちに顔を出していて、一番多いのは白くてつるりとした物体だ。

 ……まぁ、うん。予想はしてた。


「コツコツコツ(どー見ても竜の墓場です本当にありがとうございました)」


 石だと思っていたのが古びた鱗で、魔力の塊だと思っていたのが天然の魔力結晶で、ダメージが少ない場所が肋骨の内側だったこの衝撃。墓場、墓場か。そっかーだからアンデッドスタートだったんだねー。

 ……じゃ、無いんだよなぁ……!


「コツツ!(竜の墓場とか秘境の最たるものじゃないですかヤダー!)」


 道理で白骨の身でも食べて吸収してしかも結構満腹度が上がると思ったよ! 同族の骨とか最高のご飯だろうさ! あと環境変化もそりゃ無い筈だよ保存性抜群の場所だもんな!

 とりあえず自分の現在位置が秘境だという事だけは分かった。ははは。『スターティア』に行くだけで世界を半分は旅しなきゃいけないんじゃないのかこれ。先が長すぎるわ!!

 とりあえず魔物プレイヤー専用掲示板に種族バレを承知で書き込む。イエーイ私ん家超秘境ー!


「コツコツ(まぁどうせ候補者の場所は似たようなもんだろうけど)」


 居場所が分かって良かったね!(白目)とか客間を用意するのが大変そう(すっとぼけ)とか心温まる(?)レスが続いたのを、遠い目で眺める。全力でおもてなししてあげるんだけどなぁ来てさえくれたら(素材的な意味で)。

 ……けど、私が知る限り一度も空気の動く感じや新しいドラゴン()がやって来た気配が無いんだよな。不思議な事に。


「コツツツ……(最悪の想定は出来るけど)」


 想定は大体の場合下回るか斜めの方向にずれる物だ。

 それを踏まえた上で……


 たぶんここ、ずうっと前に放棄された、古い墓場なんじゃないの?

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