第30話 3枚目:イベントリザルト

 そしてそれ以降追加の臨時メンテナンスやお知らせは無く、イベントは最終日を迎えた。……後から確認した所、使徒NPCは確かに、プレイヤーがログアウトすると休む、という記述があった。あったが……こうも、書かれていた。


『ただし、器が世界に固定された(恒常存在化した)NPC使徒は、プレイヤーがログインしていなくても活動する事が可能ですが、ログインしていても活動しない時があります』


 つまり、挙動は完全に普通のNPCという事だ。ルシル達が、私がログアウトしている間に身請け金(意訳)を稼ぎ切った謎が判明した。いやまぁ、それはそれで、私がログインしているゲーム内12時間の間に恒常存在化のポイントを稼ぎ切ったという事でもある。すげーわ。

 しかし……道理で明らかに活動時間が長い筈だよ。実質倍以上の時間があるとか、能力8割どころか4割でも使徒NPCの方が有利だったんじゃないのか、これ。

 さて一部人間種族プレイヤーの悲哀(使徒NPC未作成組)はともかく、イベントが終了したという事はつまり、リザルトが来るという事。おまちかねの報酬タイムである。


「コツコツ、コツツツ(と言ってもうちの子に会える訳でもなければ、ほとんどのアイテムは使いようが無い訳だけど)」


 もちろんナヴィティリアさんはいない。10日程の間は毎日のように会えていたけど、本来ならこの通り独り切りだ。それはもうしょうがない。早くレベルを上げて、せめてアンデッドから脱しないと。

 バラバラ白骨死体から戻りつつ届いたメールと、それにくっついている報酬を確認する。余ったポイントはお金に変換され、実績報酬は項目ごとに分けられていた。まぁどれも今ここでは取り出せない。

 そして最後に、どうやらこれはシークレットで集計されていたらしい。こんなメールが届いていた。


「コツ(各項目のランキング報酬か)」


 ……大体予想していたが、試練攻略数ランキングの総合とNPC使徒部門で私の上に居るのが「第一候補」と「第二候補」のプレイヤー名なのだろう。そして、NPC使徒作成数ランキングで1位なのが「第一候補」だ。何せ6人いるとスレッドで言っていたから。

 後で公式HPからその名前を確認することにして、メールにくっついている報酬を確認する。……攻略数ランキングの方は何というか、普通だった。しいて言うなら珍しそうなのはNPC使徒部門の「携帯式祭壇(空白)」だろうか。

 では作成数ランキングの方はというと、獲得経験値上昇ポーションが50本と大盤振る舞いだ。……まぁ、元々は回数制限無制限だったところ、魔物プレイヤーの使徒の増え方を見て慌てて修正を入れたというのが真相だろうしなぁ。


「コツコツ(3体獲得の横並びでポーション10本だからそんなもんか)」


 他にも獲得ポイント数ランキングとか試練クリア速度ランキングとか総合モンスター討伐数ランキングとかが出ていたが、それも凡そ「第一候補」と「第二候補」の次に甘んじる形だったので割愛。

 逆に、総回復量ランキングとか総支援効果量ランキングでは「第五候補」がトップに躍り出ていて、NPC使徒成長ランキングでは「第四候補」が桁一つ上の成績となっていた。

 私はランキングに入っているものの大半が2位か3位だった。1位が無い代わりに4位5位もない感じだ。人間種族プレイヤー? あぁ、まぁ……頑張ってはいたよ。魔物プレイヤーの使徒NPCが関与していない部分では。


「コツコツ(まーでも魔物はそんなに優しくないんだけどー)」


 この結果を見て、多少なりと魔物プレイヤーが戻ってきてくれれば。あるいは、魔物プレイヤーを見直す動きがあればいいんだけども……まぁ、そうはならないだろうな、と。

 それはそれとしてうちの子だが、こちらは心配していない。イベント中に手に入れた装備やアイテムは持ったまま、本来の生息地に移動するだけだ。そこからどうするかは彼らの自由である。

 ……まぁ、全員2回進化しているユニークモンスターだから、そうそうやられる事も無いだろう。たぶん。自衛は出来るようにしたし。


「コツ。……コツコツ(報酬はこんな感じと。……結局今すぐ役に立つアイテムや報酬が1つも無いのはまぁ予想通りだったけど)」


 結局の所、イベント前と同じ、地味な作業じみたレベル上げ生活は変わらないようだ。次のイベントがいつでどんな内容かは分からないが、たぶん次も間に合わないだろう。

 今回のイベントのような実質魔物プレイヤー優遇のイベントはそうそう出てこないだろうし、来たとしても、バランス的にまだまだ先の話の筈だ。少なくとも、次は人間種族プレイヤー優遇でなければバランスが取れない。


「コッ、コツツ(ま、最初の闘技大会が人間種族プレイヤー優遇と言えば優遇だし)」


 そんなゲーム的な意味でのバランスを考えても仕方ないし、それを考えるのは私じゃない。どれだけゲーム内に実在する神の権限が強いのかは知らないし、任せている範囲がどれだけかも知らないが、それこそ、知った事か。

 目指せ、ボックス様のメジャー化、だ!

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