第24話 3枚目:使徒作成

 ステータスを開示して、そのデータをナヴィティリアさんが読み込む。そしてそこから、どういう風なスキル構成にしていくかを相談した。


『方法としては、全てを1から決めるマニュアル、私及び少々の乱数に委ねるオート、大まかな方向性から私が組み立ててお勧めするセミオートの3種の方法があります』

「コツコツッ(セミオートでお願いします)」


 いや、ナヴィティリアさんを信用してない訳じゃ無い。むしろ全幅の信頼を置いている。信用ならないのは、少々の乱数お前だ。

 という訳でナヴィティリアさんに希望の方向性を伝える。数を稼ぎたい、という事でスピード重視、器用関係を上げてクリティカル狙い、毛並みはさらふわ系、防御貫通や即死を含む状態異常を積んで、無属性魔法で攻撃を物魔両方に通るように。

 うん? 途中で戦闘能力関係ない希望が混ざってた? どれのことだか分かんないな。


『なるほど。それでは……希望とそれに合う適正から検索、そこに少々の私の遊び心を加えまして』

「コツ(遊び心)」

『遊び心は大事ですよ? という訳で、出来上がりましたステータスがこちらとなります』



[Name:

Talent:シャドウラビットLv46(Next:5)

    累計Lv [116]

Skill:【速度強化】Lv30

   【器用強化】Lv30

   【クリティカル強化】Lv80

   【強襲】Lv50

   【忍び足】Lv20

   【隠れ身】Lv20

   【気配遮断】Lv20

   【即死付与】Lv30

   【麻痺付与】Lv30

   【睡眠付与】Lv30

   【短剣】Lv80

   【徒手空拳】Lv20

   【無属性魔法】Lv40

   【】

   【】

   【】

   【】

   【】

   【】

   【】

Inactive:(無し)]



 計算が合わないように見えるかも知れないが、【徒手空拳】は【格闘】をレベル100まで上げたら進化できるスキルなので、実質120となる。しかしそれにしても、スキル枠が見事に余った。

 まぁ下手にスキルを増やしてもレベルが下がるし、そもそもクリティカル特化なソロ高速戦闘型の子だ。生産や補助はすっぱり捨てている。だから、必要スキル自体が少ない。


「コツコツ……(ところで種族名がこれってまさか)」

『はい。漆黒の毛並みであり、その毛皮で音も光も吸収する為、暗殺や隠密行動が非常に得意な特殊進化モンスターです』

「コツッ(まぁ首狩り兎にもなりますよねー)」


 さらっと混ぜたさらふわの毛並みという条件もばっちり叶えてくれるとかナヴィティリアさん最高だわ。ありがとうボックス様。

 ちなみにどの辺が遊び心かというと、【短剣】と【クリティカル強化】だった。……武器は装備できないのでは? と確認を取ると、何と、牙は剣スキルが発動可能な部位らしい。そして兎の牙は短いので【短剣】が該当するのだそうだ。遊び心最高だな!


『【人化】も【共通言語】も無しとはずいぶん振り切りましたね』

「コツ、コツコツ(逆に聞きますけど、この子に他の使徒や召喚者と協力するメリットってあります?)」

『なるほど。確かにありませんね。

 別に召喚者同士で争ってはならないという決まりもありませんし』

「コツコツ……(そこは初耳ですが予想通りです)」


 ……さらっとナヴィティリアさんが零した情報に、乾いた笑いを返す。うん。フレンドリーファイア禁止って、書いて無かったんだよなぁ……。だからもしや、と思って、ソロ特化にした訳だ。

 協力が不要、という意味も、まぁなくはないが……「襲われても大丈夫」なように。……NPC使徒は、基本的には召喚者プレイヤーと一緒だ。つまり、死に戻りが出来る。襲われて倒されて、それで終わり……という訳では無い。

 が。倒されて復活するには、ポイントを消費する。当然、粘着されて連続で何度も倒され続ければポイントは尽きるし、そうなれば復活は実質不可能だ。例外? プレイヤーが自力で稼いだ場合。


『それでは、使徒に名前を与えてください。

 役目が終わった後、野に放たれた場合は固有名詞として残ります』


 ちなみに「野に放たれる」というのは、これもポイント報酬の中ほどにある『使徒の器をこの世に固定する(恒常存在化)』というものの事だ。つまり、イベントが終わってもNPCとして残る、という事だ。

 なお、モンスターの場合はネームドモンスター扱いになる。モンスターには違いないのでテイムも可能だ。これも公式の注意書きに乗っていたので迷う事は無い。


「コッ、コツ。コツ、コツッ(ルシル、ルナシールと。月を封じる、転じて新月という意味で)」

『ルナシールですね。分かりました。

 それでは、新たな使徒の誕生を宣言します』


 そう声で答えると、ナヴィティリアさんの宣言があった。ぱぁぁぁっという感じで光が差し……てるんだと思う多分!

 そして光が収まった。たしか使徒NPCは『スターティア』の広場に現れて独自で行動する筈だ。で、稼いだポイントは自動でプレイヤーに振り込まれるというシステムだった。筈。

 うーん。一応聞いてみるか。


「コツ(ところでナヴィティリアさん)」

『何でしょうか、ルミル様』

「コツ。……コツコツ?(ええとその。……ポイントの使用権ってルシルに渡せたりします?)」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る