第21話 2枚目:不平等の推測
結局「第一候補」の提案を私が補足する形で、その情報を検証班へと流す事でその話は終わりとなった。それ以降も掲示板を流し見てはいたが、魔物プレイヤーとヒト族プレイヤーとの間の誤解、あるいは溝が埋まったような話題はない。
当事者であるウッドモンキーのプレイヤーは、人里へ向かうのを延期したようだ。せめて逃げるだけは逃げれるようになってからにしたい、との事。まぁそれはそうだろう。
「コツコツコツ(まさか素材ドロップでレベルが下がるとかふざけんな)」
おそらくはフリアド初めてのPK。そこで初めて判明した、特殊なデスペナルティ。
それは、魔物プレイヤーが人間種族プレイヤーに倒された時、「自分由来の素材をドロップ」し、「ドロップに応じた種族レベルが下がり」「種族レベル分だけランダムでスキルレベルが下がる」というものだった。
何が厄介って、これがプレイヤー同士の間でのみ起こる現象「とは限らない」という事だ。それこそ、『スターティア』での初イベントで優勝を飾った現地勇者とかがいい例だろう。
「コツコツ。ココッツ?(魔物プレイヤーの不利っぷりが尋常じゃないな。やっぱり魔物側には何かあるのか?)」
考える。考える。リスクがあるなら、それにふさわしいリターンがある筈だ。というか、無ければゲームとしても「理が通る」という仮説からしてもおかしい。
未だ開封できていないメールのアイコンに視線を向ける。ずらりと並んだスキルの名前に目を滑らせ、首を傾げた。
「コツッ、コツコッツ(爆弾は確かに爆弾だったけど、これはそのまま訓練所とかのスタートダッシュの難易度で釣り合いが取れてると思うんだよなぁ)」
軽くジャンプして地面にぶつかるだけでバラバラになる全身を、よいせーっとかき集めて元の形に組み立てる。そんな事をしていると【部位破壊耐性】とかいうスキルが入った。当然メイン入りはまだまだ先だ。
自分の身体が砕け散る感覚があるというのもぞっとしない話だが、それがその感覚のまま動かせるというのも不思議な感じだ。自分でも時々何をやってるんだろうと思う。
まぁそれはさておき、人間種族プレイヤーと魔物プレイヤーの格差だ。どういう事だ?
「……コッ。コツコツ、コツ?(まさか。「第一候補」の仮説も大当たりだった、とか?)」
「第一候補」は、魔王を目指すにあたってこう答えた。「神」こそが必要だ、と。
それは魔物の暴走の原因が神の不在にあり、その為に狂暴性が増し、神を有する種族に対する敵愾心が限度なく膨れ上がっている、という仮説に基づいた動機だった。
では。この仮説が「正しい」として、現状を説明することは?
「………………コツ(おいどうすんだ話の筋が通っちゃったぞ)」
神というのは、世界を見守り、命を助け、時折試練を与える存在。まぁつまりゲームで言うところの運営だ。ゲームとしての運営が全プレイヤーの平等を心掛けるべきなのは言わずもがなである。
で。これが各種族に祀られている世界観の中の神の場合、平等を期さなければならない対象が「自分を信仰する者」という範囲に狭まる。多神教なら信者の奪い合いでもある訳だから、現在の所戦争こそ起こってないものの、外交は必要だろう。
……そして、その前提の元。既存の神を信仰せず、信徒を害し、あまつさえ新たな神を祀ろうとする種族が、いたら?
「コココココッ!(そんなん容赦する訳ないじゃないですかヤダー!)」
ガンッ、と頭を地面にたたきつけると、外れた頭が反動でぽーんっと飛んでいった。うおあ、回転がかかって、目が、目が回る、あっ地面が見え痛ぁ!
カン、コン、と我ながら軽い音を立てて頭蓋骨(竜型)が転がる。視界もぐるぐる回ってその中に何度か自分の身体(竜型)も見えるが、だいぶ慣れたとはいえ違和感だなぁ。
感覚を駆使して身体の方を動かす。首のない骨の竜がやって来るのを視界に収めた状態は、操り人形を動かしている感覚に近い。……の割に、地面や重力の感覚があるから、最初は大混乱したものだ。
「コッツ、コツコツ……コツッ(まぁ今すぐどうこうは無理だし、掲示板に書き込むだけにしておこうか……候補者専用の方の)」
何とか身体(骨の竜)を近くまで動かし、頭蓋骨(竜型)を掴んでどうにかはめ込む。ぐりぐり、と首を動かしてみて違和感を確認。時々関節の所に小石とかが挟まってるからな。
そして独り言を呟き、ジャンプして地面でダイヴ。全身の骨をバラバラに散らした白骨死体状態で、掲示板への書き込みをするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます