第19話 1枚目:初進化

 イベントが終わり、夏休みの終わりまでの日数が一桁になった頃。


「キッキュー……。ピキキュ(やっとここまで来れた……。【成長強化】が無かったらこれ間に合ってないな)」


 ほとんど単調作業のレベル上げを地道に続けて、ようやく前回のログインで【霊体】がレベル1になったのだ。つまり、この【非実体】と【浮遊】ともお別れである。

 長かった。と思いつつじたばたと身体を動かすと、開きっぱなしにしていたスキルリストの中で、【霊体】の表記が1から0に変わり……


[スキル【霊体】のレベルが上がりました

スキル【霊体】がスキル【骨体】へ変化します

進化の条件を満たしました

進化が自動実行されます

スキル【非実体】がスキル【半実体】へ変化します

スキル【浮遊】がロックされます]


 そんなログが流れるとともに、視界が完全にブラックアウトした。元々朧気だった身体の感覚も完全に失せる。重力の感覚もなくなって、自分というものが消えていくような感覚にぞっとした一瞬後。


「……コッ!?(はっ!?)」


 悪夢を見て跳び起きるように、あるいはスイッチが入るように、全ての感覚が元に戻っていた。……だけじゃない。さっきまでよりずっと重力がしっかり感じられるし、身体が床に伏せているのが分かる。

 おっこれは、と思って周囲を見回そうと首を振ってみると。


パキッ、カラカラカラ


 ……何の音かというと、私の首が外れて転がった音だ。どうやらようやく得た体は、頭が取れた程度では問題が無いらしい。

 いや、というかそれ以前の話のようだ。転がった頭が上下逆で自分の身体の方を向いている。そしてその、保安灯のようなむしろ見え辛い視界の中で見えたのは


「コツッ、コッコツッ(【骨体】ってつまり、スケルトンの事かーい)」




[Name:ルミル

Talent:ノーエレメント・ドラゴン・パピー・スケルトンLv1(next:5)

    累計Lv [94]

Skill:*【魔力耐性弱化】Lv8

   *【属性耐性貧弱】Lv7

   *【物理耐性脆弱】Lv10

   *【貧弱魂質】Lv2

   *【意志薄弱】Lv9

   *【影響力低下・小】Lv17

   *【環境耐性低下・極】Lv20

   *【骨体】Lv60

   [【浮遊】Lv15]Locked!

   【半実体】Lv5

   *【偏食・宝石】Lv30

   【大食】Lv10

   *【虚弱体質】Lv15

   【竜の血脈】Lv10

   [【生命力・極】Lv5]Locked!

   [【人化】Lv5]Locked!

   【成長強化】Lv7

   【体力回復強化】Lv8

   【魔力回復強化】Lv5

Inactive:【鑑定】Lv5

     【採取】Lv5

     【格納】Lv0

     【錬金】Lv0

     【絆】Lv0

     【共通言語】Lv5

     【魔物言語】Lv5

     【心眼】Lv5

     【魔力感知】Lv5

     【魂体操作】Lv0

     【魔力制御】Lv5

     【暗視】Lv5

     【霊視】Lv5

     【瞑想】Lv5

     【威嚇】Lv5

     【隠れ身】Lv5

     【忍び足】Lv5

     【精密動作】Lv5]



 スキル枠が19個となり2つ空きが出来たので、自然回復を強化するスキルを入れておいた。リジェネって大事だよね。(切実)

 そして種族が変わっている。進化の自動実行がされて固有スキルは増えたが、スキル枠は累計レベルで計算するようだ。……システム的に明記されるマイナススキルだけで10個あり、それが全てアクティブになってる上、種族固有スキルもある。初期枠に戻っていたら無理があった所だ。

 でまぁ、それはともかく、目の前の問題は……。


「コツ、コツコツ(改めてみるとこれ、偏食スキルと【大食】のコンボはダメだろ)」


 このスッカスカの身体でどうやってものを食べて消化するのはさっぱり不明なのだが、それでも食べる事が可能になった……つまり、食べなければならなくなった、という事だ。

 ヘルプを確認すると【半実体】は物理属性・満腹度減少半減、魔力属性1.5倍、満腹度回復半減というスキルだ。【非実体】をやや物理寄りにした感じだろう。

 そして【骨体】だが、これは【霊体】の耐性弱化はそのままに物理耐性虚弱と「被」部位破壊攻撃成功率の倍加を加える代わりに、ステータスの低下及び自然回復速度低下の割合がマシになる、というものだ。回復手段ダメージ化は変化が無い。


「コッ、コツコッツ(で、また地味な自傷ダメージ蓄積の日々が始まる訳だ)」


 声もいつのまにか骨を打ち合わせる音に変わってるし。

 さーて、飢え死にというタイムリミットの中でどれだけ効率を上げられるかのチャレンジだな。

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